「どこで竜巻が発生するか」、「竜巻の事実と謎〜学生ガイド」より (http://www.spiralwishingwells.com/guide/tornados.html) 竜巻は世界のあちこちで発生していますが、このような自然の破壊力は、米国のロッキー山脈の東で、春から夏にかけて、最も頻繁に見られます。年平均で、800から1000の竜巻が、死者80名、負傷者1500人超という被害をもたらしていることが、全国各地で報告されています。 ◆なぜ米国は世界のほかの部分よりも多くの竜巻が発生するのでしょうか それは多くの、強い、寿命の長い嵐を生育する(breed、生れ育つ)この国、特に竜巻通り(tornado alley)として知られるようになった地域の、独特な地勢によるものです。 ◆どこに竜巻通りはあるのでしょうか ◆竜巻通りでそれほど多くの竜巻が発生するのどういうことなのでしょうか |
前の文献と、渦巻き型募金箱の専門会社が提供しているこの教材とで、四つの事実を指摘している。
事実1:農業地帯と竜巻発生地帯は一致する。 | |
事実2:地勢(地理)が竜巻の原因になる。 | |
事実3:農業地帯は竜巻を生育する(産み育てる)場所である。 | |
事実4:竜巻のスケールが大きいのは、生育場所のスケールが大きい所である。 |
日本では以上の事実を、ほとんどだれも指摘していない。それは竜巻研究が「空」の科学である気象学の範囲にとどまり、かつ事実ではなく理論だけを研究しているからであろう。米国でもこの文献の表題「竜巻の事実と謎」が示しているように、理論的な研究は不十分であり、今後の研究が期待される。
◇竜巻は陸海空を含めた地球学(地学)の研究課題
最初に説明した竜巻発生地帯の特徴を、陸海空の三つについて漏れなく理解すべきである。
空の学術 気象学 |
温帯は竜巻が発生しやすい。寒帯・熱帯は竜巻が発生しにくい。 湿度がほどほどあると竜巻が発生しやすい。乾燥していると竜巻が発生しにくい。 極地・寒帯に近いと竜巻が発生しやすい。 |
陸の学術 陸地学 |
低地は気温が高く、竜巻が発生しやすい。高地は竜巻が発生しにくい。 高地は気温が低く、寒気団の提供元になり得る。 砂漠は竜巻が発生しにくい。森林や河川が多い地域は、温度が変わりにくくて竜巻が発生しにくい。 |
海の学術 海洋学 |
暖流に近いと陸地が暖まりやすく、竜巻が発生しやすい。 寒流に近いと陸地が暖まりにくく、竜巻が発生しにくい。 |
なお、これらの学術には、ミクロ論・事例論としての地理論・歴史論などと、マクロ論・一般則としての地質学などの科学とが含まれる。また、用地問題や環境問題などの人間対自然の要素も含まれる。
◇米国の竜巻発生地帯のスケールの大きさ
下左の図は米国におけるこれまでの竜巻発生地点を赤点で表したものである。下右の図はほぼ同じ縮尺の東アジアの人工衛星写真である。
竜巻発生地(1980年〜2010年) (c)2010 SPC |
同じ縮尺の東アジア。 (c)2012 GoogleEarth |
竜巻発生地点が密な地帯は、米国の中部から東部の全体である。この面積は日本列島、朝鮮半島、中国東半分、日本海、東シナ海の面積にほぼ匹敵する。
左上の地図の米国の東部に赤点の少ない部分がある。アパラチア山脈である。そういう部分を除いた低地が連続する中心部分が竜巻通りである。
竜巻通り(薄黄色) ©2010 Copyright Weather & Climate |
竜巻通りはミシシッピ谷(Mississippi River Valley)の右岸部分である。見渡す限りの平原なので谷にはとても見えないが、確かに本流が一つしかない谷なのである。竜巻通りの東西南北の範囲は、日本の北海道、本州、四国が収まる大きさである。竜巻通りの北端であるミネソタ州ミネアポリス市のミシシッピ川の標高は264mしかない。ミシシッピ川の上流から河口までの傾斜も極めて少ない。