■「津波の予見不可能」園側、弁論準備で主張 日和幼稚園訴訟(河北新報、2012.1.18)
東日本大震災の津波で亡くなった日和幼稚園(宮城県石巻市)の園児4人の遺族が、園側に計約2億6700万円の損害賠償を求めた訴訟の弁論準備が17日、仙台地裁であり、園側は「過去に例がないほどの大規模な津波で、被害を予見できなかった」などと主張した。 |
この話題は次のように考えれば、和解にできる可能性がある。 | |
珍しく訴訟になったのは、それまで園側は今回の責任と今後のための反省を区別しなかったからであろう。地震発生時には家族が迎えに来るまで、園児を園で待たせるという規定だったのに、園児を送迎バスで送り、しかも規定にない乗せ方やコースを発案したのが問題だった。遺族側はそれに対する回答を示して欲しかったのだろう。そうすればほかの教育機関のように和解できたと思われる。相手の聞きたいことを説明する会話能力の問題であろう。 | |
訴訟になっても、被害を予見できなかったことは、法的な論点にはならないだろう。法の配下の園の規定が論点になる。 | |
なお規則は厳守すべきだが、マニュアルよりは現場の判断が優先してよい。規定にない乗せ方やコースを発案すること自体は問題ではない。しかし、会話能力はそれ以前の問題である。園側が遺族の空気を読むように、教育委員会が「通訳」できないものだろうか。 |
■東日本大震災:校長「怠慢」と初謝罪−宮城・石巻の大川小説明会(毎日新聞 2012.1.23)
◆避難場所明示せず判断遅れ 訓練手順「校庭集合」止まり |
この話題は訴訟にはなっていないので、学校側には遺族側と会話する能力は、そこそこあったと言える。しかし、論争が長引いているのは、分析や反省が遺族の期待するレベルまで達していないからだろう。 | |
日和幼稚園のケースと違って、学校側は当初から反省を表明していた。遺族の期待に近づいていたのだ。 | |
遺族側が論争を続けているのは、反省の結果が口頭であったり、個人ごとの私見の段階にとどまっているからだろうと推測する。規則の改定、マニュアルの改定、訓練の徹底などの、品質管理での「歯止め」という段階に到達していないと、学校のノウハウとして継承される保証はない。「していれば…」で終わってはいけない。そこが遺族側には歯がゆいのである。 | |
釜石市鵜住居地区の小中学校では、事前の避難訓練の徹底という歯止めが功を奏して、児童、生徒、職員のすべてが死なずに済んだ。ただし職員は大川小学校と五十歩百歩の不適切な判断をしたが、生徒の判断によって適切な避難を完遂できたのであった。大川小の論争が満足のいく収まり方をしたとしても、鵜住居地区で起きたような職員の判断ミスまで反省しないと、再発防止策としては完璧ではない。 |
■クジラ漂着頻発の原因は海底のヒビ割れで発生する磁気異常(週プレNEWS 、2012.1.23)
昨年末から、関東・東海地方の海岸にクジラが漂着する事件が続発している。
海洋環境学者の辻維周氏(私立滋慶学園講師)は、東京湾最奥部の青海埠頭付近にまで大型のナガスクジラが来た例は、過去にないことだと驚く。 |
結論から言えば、大地震の予兆ではなく、クジラの季節的な回遊の習慣による事象と思われる。 | |
続発しているというのは言葉のアヤであって、別の研究者によれば例年並みである。 | |
「大人のクジラ」というのは間違いで、「大型(20m)のナガスクジラの子供(12m)」である。 | |
東日本大震災の直前には小型クジラが浅瀬に上がったことが報道された。私の仮説は、地震の低周波音を大型クジラの声と誤解して浅瀬に逃げたというものである。大型のヒゲクジラはオキアミなどを食べるおとなしいクジラである。しかし、時には体格を武器にして小型クジラを攻撃することがある。この事例は、小型クジラが沿岸にいた時に地震によって起きたと推測される。大地震の直前だったのは、たまたまだったと思われる。 | |
最近の事例はすべて大型クジラの子供であるのは、大型クジラの回遊の季節と関係すると思われる。(補足:2012年12月現在、大地震が発生していないので、大地震の予兆でなかったことは証明された。) | |
大型クジラは低周波音を出し、小型クジラは高周波音を出す傾向がある。 | |
地震は地殻のでたらめな動きである。地殻は楽器でも送信機でもないので、さまざまな周波数の音や電波を発する。そのでたらめな動きという性質の結果として、音波や電波には低周波成分の比率が大きい。 | |
クジラの親子は音で交信しながら同行するのだが、地震の出す音波にじゃまされて、子供がはぐれたというのが私の仮説である(証明はされていない)。 | |
クジラはよく日本沿岸で行動するし、地震も日本で年中起きている。頻繁に起きている小地震の大部分は大地震の予兆ではない。したがって、クジラの異常行動は大地震の予兆としては使えなさそうだ。 |
■政府緊急災害対策本部:首都直下地震想定し、図上訓練(毎日新聞、2012.1.12)
首都直下地震を想定し、政府が設置する緊急災害対策本部の業務を検証する図上訓練が12日、東京都立川市の立川広域防災基地で行われた。東日本大震災の教訓から、官邸など都心の施設が使えなくなり、被害情報もすぐには集まらない状況への対応に重点を置き、一部は訓練内容を知らせない「ブラインド方式」で実施した。 |
図上訓練というのは間違いである。正しくは指揮所(本部)演習である。指揮所演習は本物の指揮所を用いて情報だけで作業する演習である。本番でも情報だけで作業する。図上演習という用語を間違って使うと、正しく使っている自衛隊などと情報交換がしにくい。 | |
図上演習は正しくは、現場で実物を扱うタイプの本番業務に対して、紙やコンピュータなどの情報だけで模擬する演習のことである。全国の対策本部が誤解している。記事の最後の物資調達・輸送の部分だけは、図上訓練と表現しているのは多分正しい。 | |
図上演習という用語の間違いは、地方自治体の間で防災規則や防災マニュアルを書き写していることによって起きた。 | |
ブラインド方式という用語は不適切である。「予告なし訓練」が適切である。これも書き写しによって広まっているのではないか。 | |
東京直下地震は、学術用語ではなく、政策上の用語である。安政江戸地震(マグニチュードM6.9、1855)、明治東京地震(M7、1894)、関東大震災余震(M7.3、1923)などの数十年間隔の大地震のことである。巨大地震ほどではないが、政治・経済などの中枢が影響を受けることと、発生間隔が狭いことから、きめ細かい対策が必要とされる。 | |
関東大震災は、元禄大地震(M8.1、1703)、関東大震災(M7.9、1923)などの約2百年間隔の巨大地震である。首都部分が影響を受けるだけでなく、約6mの津波(海面上昇)があり、神奈川県や千葉県の沿岸部まで被害の範囲が広がる。関東大震災は、震源が海洋の場合、直下型の場合、その両方の場合が想定される。直下型地震は関東大地震の一種だというニュアンスが、このニュースからは伝わらない。 |
なお、防災演習などで負傷者役が演じるのをロールプレイングと呼ぶのも間違いである。教育におけるロールプレイングは、その役割を演じることが受講者の成績向上になることを目標にしている場合である。そういう目標のない負傷者役は、演習協力者と呼ぶ。
■首都圏に直下型地震、4年以内に70% 東大地震研(朝日新聞 2012.1.24.0.14)
東日本大震災の影響で地震活動が活発化していることを受け、東京大地震研究所は23日、首都圏でマグニチュード7級の直下型地震が4年以内に70%の確率で起きる可能性があるとの計算結果を、ホームページで公表した。過去の地震の発生状況から統計的に計算した。家具の倒壊防止や緊急の連絡手段の確認などの備えを促している。 |
このニュースは誤報であり、ニュース性はない。1月12日の立川での訓練のニュース程度で十分であった。 | |
言葉の書き間違いや優先度の曲解をしている。 | |
東大地震研の情報は直下型地震とは全く関係ない。次のように反論が掲載された。 |
本研究は「東北地方太平洋沖地震によって誘発された小さい地震から推測されるM7程度の地震」の発生確率を求めたものですが,政府の想定している首都直下地震は,超巨大地震によって首都圏の地震活動が高まったことによるM7程度の誘発地震は含まれていません.首都圏の地震活動が高まらなかったとしてもいずれ起きるはずの首都直下地震について試算することは,本研究ではできません. |
本研究は東日本大震災の首都圏における余震の研究である。 | |
M9(超巨大)〜M8(巨大)〜M7(大)と下がるほど発生間隔が狭いのは当たり前。 | |
本研究も東京直下地震も、同じM7が対象なのでマスコミが混同したのだろうか。 | |
この無用のニュースによって、立川での訓練ニュースの時には起きなかった反応が起きた。「直下型だから」恐いと反応した大衆がいる。この反応は関東大震災と混同しており、はるかに恐い関東大震災のことを忘れる恐れがある。 |
なお、東大地震研のウエブページの公表資料は「倒壊」を次のように記載している。
◆家具類の転倒や落下防止をしておきましょう.これは自己責任です. |
先ほどのニュースは、「家具の転倒」と「家屋の倒壊」を混同して「家具の倒壊」とミスした。 | |
テレビでは都内ロケのショットも使われた。老朽家屋の住人は「倒壊防止策はやらない」と発言し、明治大学の学者は「家具の転倒防止が大切」と述べていた。マスコミは潜在的に、家屋の倒壊よりも家具の転倒を重視して゛記事にしているものと推測される。 | |
この東大地震研の文章の最後の段落は、不適切な文章である。地震死をまぬがれる方法は、第一に海岸低地から離れること、第二に「家屋」の倒壊防止である。 |
■首都直下M7級 4年以内に70% 東大地震研試算(産経新聞、2012.1.24.7.55)
首都直下型などマグニチュード(M)7級の地震が南関東で4年以内に発生する確率は70%に高まった可能性があるとの試算を、東京大地震研究所がまとめたことが23日、分かった。〜平田教授は「大震災でひずみが解放され安全になったと考える人もいるが、地震の危険度は依然高く、防災対策をしっかりやるべきだ」と指摘している。 |
産経新聞のこの記事は、首都直下型「など」の語句を用いて、誤報にならないように踏みとどまっている。この程度までが、煽情目的でないニュースの範囲である。産経新聞は「分かった」と表現している。朝日新聞には東大地震研が「公表した」と見せかける意図が感じられる。 |
■活断層というのは研究者用語
活断層(active fault)とは、「極めて近き時代まで地殻運動を繰り返した断層であり、今後もなお活動するべき可能性のある断層である。ここでいう『極めて近き時代』とは新生代第四紀を指す」である。この用語は研究者には意味があるが、研究者の間でも異論がある。一般人には「xx原子力発電所の敷地に断層がある」で十分である。ずれた形跡があるなら活断層などといわずに「3万年前にずれた形跡のある断層」などと形容句を付ける方が親切である。
活(active)の意味には、「活きている」から「意欲的である(が活動していない)」まで幅がある。断層の場合には何万年も活動していないものまで含むので、その場合は火山でなら活火山ではなくて休火山に相当する。
南海トラフは断層といわれるが、東日本大震災の震源となった日本海溝のプレート境界は断層とはいわれない。活断層という用語は、日本海溝の「プレート境界」という言葉よりも、強力であるかのような誤解を与える。
活断層という用語が一般人向けに使われたのは、一つは阪神・淡路大震災である。陸地の断層が震源であったのを、研究者は活断層と述べた。一般人にとっては「(陸地の)断層」で十分である。阪神・淡路大震災の物的・人的被害が大きかったのを説明するのに、「活断層だから」という表現を研究者は用いた。しかし、活断層の地震には大きいのも小さいのもある。正しくは、震度が大きかったのに対して、「弱い建造物が多かった」である。倒壊した木造家屋、印象的な三菱銀行支店、及び高架道路は、無事だった建造物に取り囲まれていた。断層の問題ではなく、建築学の問題なのである。東日本大震災では建造物倒壊による死者の数は、阪神・淡路大震災よりも桁違いに少なかった。
2011年に鹿児島県の新燃岳が噴火した。噴火活動をしてしまったのだから、わざわざ「活火山新燃岳が噴火した」とは報道しない。火山においても、死火山、休火山、活火山の区別は難しい。