2011. 4. 9 能力等級制度の中止

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(1)過去に3回紹介した公務員の能力等級制度が、労働組合の反対によって中止された。
(2)順序としては国家公務員法から職階制規定が「見せ消ち」で削除され、次に能力等級制度が中止され、最後に職階法が廃止された。職階法より前に能力等級制度が消えた。
(3)能力等級制度の目的は、成績の乏しいキャリアの昇進させ過ぎないことと、成績の優秀なノンキャリアの昇進が遅れ過ぎないことと、人件費の削減であった。
(4)能力等級制度には、次のような論理的な問題点があった。

組織が定める能力と職員個人の成績を混同するという論理的な欠陥があった。

人事計画(ルール制定)を軽視して、人事管理イコール人事評価とした。

給与ルールと人事ルールを一体にしようとした。


(5)能力等級制度(極端にいえば成果主義制度)の典型は、大相撲である。年齢に関わらず客観的な勝敗で昇進や給与が決まる。大卒でも関取になれずに廃業することがある。
(6)労働組合が反対したのは、極端な昇進し過ぎや昇進遅れの対策のために、ごく平均的な職員が大相撲のように降給するのでは、住宅ローンが組めないということである。
(7)人事制度の迷走を防いでいるのは会計専門家である。終戦直後に進駐軍から職階制を導入した主役は大蔵省であった。階層主義者と新興左翼との対立を抑えて、現代的かつ中立的な落とし所へ誘いたかったのであろう。
(8)職階法が事実上うまく運用されたのは、給与制度が年功・成績・成果をミックスするようにしたからである。会計課の功績だ。
(9)能力等級制度を試行したのは、財務省配下の造幣局であった。以上のいずれも会計の専門家である。現場で伝票を計算するので現場勘がある。
(10)2011年3月末で筑波大学附属病院の雇用が終わったが、人事制度について次の提言をした。

人事制度は現行のままとし、人事制度を全職員にしっかり教育する。

全職員の職級滞留年数を年度ごとに統計報告して、昇進の速い遅いを把握する。

管理職ポストがなくても部下がいなくても、ある等級を普通の成績で何年か過ごした人を昇格させるようにマニュアルを作る。

病院にはノンキャリア制度が確立していないが、看護師や事務職にノンキャリアを事実上認めて、低学歴の人の雇用機会を維持し、号俸昇給で収入を安定させる。

医療事務資格などの事務系の狭い資格や外注を抑制する。内部で必要な教育をして、柔軟な異動を可能にする。そうでなければノンキャリアを活用する。技能職に比べて、医療事務資格などはデスクワークなので、あまり信頼性がない。外注すると個人差が甚だしいので、基礎学力の高い正規職員に教育する方がよい。

目標管理は生産管理として扱う。人事制度、給与制度、生産管理を一体化しない。

人事屋には職級明細書の改定や人事統計報告を担当させて、現場勘を持たせる。


(11)2:8の経験則に基づく統計的人事制度

2割 S 優 エリート(高級官僚、経営者)をめざす

3割 A 秀 管理職コース(中間管理職)

3割 B 良 係長コース

2割 C 可 主任コース


(12)例えば2級職員はSなら4年で通過、Aなら5年で通過、Bなら6年で通過する。CならB評価に変わらない職員はそのまま定年まで過ごす。Aを中心にすると、Sは8割の期間で昇級するので「8割昇格」と言われてきた。逆にAに比べてBは約2割長い期間を要して昇級する。
(13)筑波大学附属病院では、B評価なのに6年過ぎても昇級できない職員が散見された。滞留年数(年功)を評価していなかったのである。そこで滞留年数を評価して、確実に昇級させる細則(マニュアル)を明確にすることを提言した。そうすると成績が悪くてもエリートコースに乗るのではないか、という心配が生まれる。しかし、上級になるほど仕事は厳しくなるので、ぎりぎりで昇級した職員はC評価になるからエリートコースには乗らない。
(14)いずれにしても高卒、短大卒、大卒を区別する公務員式雇用を継続したい。現場業務だけなら優秀な職員を確保する方が、すべて大卒にしてはずれをつかむより互いに幸せである。看護師には管理職になることを望まない職員が少なからずいる。それが主任コースである。

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