治療経過

初めての入院で抗がん剤を3クールして退院。そして維持療法として6クールの抗がん剤治療を通院しながらしていきました。そこから落ち着いていたのですが2年後に再発。骨髄移植をします。
ここでは再発してからの治療経過を書いていきたいと思っています。身近に同じ病気の方がいて少しでも参考になれば幸いです。病院によって治療方法は多少の違いはあるかもしれませんがここでは私が経験した治療のことを書いていこうと思います。

                   AIDA療法(アイーダ)

初めての退院後、入院の時に使用していた抗がん剤より副作用などは弱い抗がん剤を地固め&維持療法としておこなってきました。その後にベサノイドカプセル(3ヶ月毎に5日間だけ服用)ロイケリン酸を毎日、朝昼晩と服用(採血の結果により白血球などの抵抗力が落ちた時などには服用回数を制限して調整)それにメソトレキセイトを週に2日間だけ服用。(これもロイケリンと同じで、抵抗力などの採血の数値を見て飲む回数を調整していました。)これらを2年間、服用し続けていました。ですが抵抗力の変動も激しかったのでなかなかベサノイドカプセルもうまく3ヵ月ごと決まった周期で飲むことはできませんでした。(途中、真菌性肺炎になってしまい入院することもあったので予定がだいぶずれることもありました。)
入院などもありましたが2年間、マルクの結果は常に陰性で経過は良好でした。


※マルク(骨の中にある骨髄液を調べる検査。この血液を遺伝子レベルで調べることによって白血病になった時に数値にでる悪い菌を調べる。主に一般的な採血とは違うので胸骨や腰の骨みたいな厚い骨に注射を刺して採血する)

2年近くが経つころ少しずつ採血の結果が悪くなってきました。悪いといってもいつものように白血球や血小板が多少低下する程度で身体のだるさなどの自覚症状もなかったので気にはしてはいなかったのですが、採血を定期的にするたびに少しずつ血小板が低下していくので急遽マルクを行いました。結果は血液全体の30%がすでに悪い菌に侵されており再発と判断されました。


その時点 

          WT1mRNA定量−骨髄  98000 コピー/ugRN

          PML/RARa定量−M    94000 (約全体の3割にあたる数値)

AIDA療法による抗がん剤投与(再発し、入院してすぐにIVHを入れて開始)

※IVH(基本は右肩あたりから入れるチューブ。糸で縫い、常に身体につけておく。点滴を多用する場合はだいたいこのIVHを入れます。)

イダマイシン+ベサノイドを使いまずは再寛解にもっていく。この療法が再発患者に有効かと言われると必ずしも有効ではないが効けばもうけものという感じかもしれない。

結果  WT−1       62    
     PML/RARa   <50(+)

予定では効いたとしても2000まで下がれば成功だと言われていたが幸運だったのか予想外にこの療法は私の身体には効いて、いっきに再寛解へもっていくことができた。ここで次に用意していた治療を予想外の結果にやるかやらないかという話し合いになった。
この時点で移植をする方向へもっていくか、移植をするしないにしろもう一度悪玉菌を叩いておく方がよいのか主治医と話合った。

次の治療として入院時から話が出ていた亜砒素(砒素治療)

現在ではもう承認されていると思うが私がこの砒素を使用した時に承認前で未承認薬と言われていた。症例はそこまで多くはないが再発した患者には最適だと考えられていると聞いた。副作用も少なく国外では使われている。
砒素と聞くと混入事件があったので毒ではないかと思うのが普通だと思う。でも毒と良薬は紙一重である。毒も使いようによっては良薬となるのだ。

                  砒素治療はなんでするのか?

白血病の原因となる細胞がいる泉があるとする。そしてその泉から海に流れる川がある。今までのAIDA療法で使っていた抗がん剤では泉も川も全て広範囲にわたって綺麗にしようという治療法だ。広範囲なため全体に効果が散乱していまうのだ。これにより一旦は綺麗になったかのように見えても悪玉を出し続ける泉の源泉は隠れたまま見つけることができない。ここでその泉にたいしてポンポイントで攻撃できたらどんなにいいだろうかとは思いませんか?もし沸いてくる水を止める時に自分だったらどうするのか、私だったら水が漏れないために物を置いて水を積止めます。まさしくこの砒素がその考えなのです。
悪玉の沸く源泉への攻撃力を強くしたい。それなら川を積止めて範囲を縮めてしまおうというのがこの砒素です。まさしくダムですね。
砒素でダムを作り泉だけに範囲を絞りそこを抗がん剤で源泉まで叩こうという治療。

副作用についてはまだそこまで症例も少ないので完全にはわかっていないらしい。だが抗がん剤ほどの副作用はないと言われている。日本でも病院でこの砒素を独自につくっているところもある。
日本での副作用の症例はあると思うのだが私が聞いたのは6例だ。海外での症例も聞いた。人それぞれ違うと思うが起こりやすいと言われている副作用は発心、吐き気、肝障害、心臓障害などであると言われている。心臓障害は間違えば心筋梗塞などにつながる可能性もゼロではないので常に携帯心電図を付けて、定期的に心電図をすることになる。

               亜砒素+ベサノイドでの治療をする

結果
多少の吐き気はあったもののベサノイドからきたものであって砒素からきたものとは考えられない。始めのうちは強い頭痛に悩まされた。肝障害も表立って苦しめてくることはなかったがむくみという副作用が常に出てきた。一日で三キロ増えたり減ったりなどの体重変動が二十日間ほど続いた。
そこは利尿剤などで対応。二十日間砒素を投与し、最後の方になり心電図に多少の異常が見られたが問題になるほどではなく様子を見ていたら砒素の投与が終わったら自然と正常値に戻っていた。
結果としては食欲もあり、そこまで目立った副作用はなかったヒ素が終わり三週間後のマルクの検査結果ではその効果が出ていた。

           WT1mRNA定量−骨髄    標準値

           PML/RARa           <50 キメラ遺伝子検出されず(−)

という結果になった。これで再完全寛解になる。移植の前の状態としてはかなりいい状態までもっていくことができた。今回は砒素が大成功である。本当に毒と良薬は紙一重!今では砒素も承認されているはずなので使われているのではないかと思います。この砒素がポピュラーな治療法になるのかあまり使われないのかは分かりません。でも医療がさらに進歩してよく効く薬が使えるようになることを患者は願うばかりです。