2002/10/07
朝チュン万歳!(←何)
甘々だけで許してくださいませな〜。
まだまだ小生、エロ神召還の修行中の身にござる〜。
降りて来い来い、エロの神様!
あ、でも次回作の連載では、ちょっとだけ……モゴモゴ。
いや、ちょっとですよ?ちょっとだけ。
少なくとも朝チュンにはなりませぬ。
さあ、現嫁VS元嫁(似の女)の戦いの終幕や如何に?
次回で完結の予定です。
キリよく10話ですね、ストックが無くなったので頑張って執筆します!
しばし待たれよっ。(←イロベ調)
公園の入り口に止めてあったウィンダムで二人はマンションへと戻り、それから朝まで飽くことも無しに求め合った。
力尽きて二人眠りに着いたのは、朝日もとっくに昇りきった7時頃。
休日だったことが幸いして、高耶も直江も十分に睡眠を貪ることができた。
思う存分体を休めた後、結局二人が目を覚ましたのは12時頃。
流石に空腹を覚えて直江が起きだし、体を辛そうにする高耶を助けてシャワーを二人で浴びた後、冷蔵庫にあった物で簡単に朝食兼昼食を済ませる。
そうして午後のリビングで、これから夕飯の買出しに行こうか等と相談していると、カウンターに置いてあった直江の携帯に着信が入った。
嫌な予感と共に電話に出ると、案の定相手は照弘で、緊急で会社の方に来てほしいとの用件だった。
「高耶さん……」
「しょうがないだろ、仕事なんだからな」
せっかくの休日に出勤することになってしまい、申し訳なさそうに直江がうな垂れた。
高耶は直江の着替えを手伝ってやりながら、気にすることないさと軽く笑う。
玄関まで直江を見送って行くと、振り向いた直江が、
「6時頃には必ず帰りますから、家で待っててくださいね。今日は外食にしましょう」
そう言うと高耶の唇をかすめ取った。高耶が目を見開いていると、
「“行ってきますのキス”ですよ。新婚さんみたいでいいでしょう?憧れだったんです」
あなたとこうするのが……。
直江が嬉しそうに微笑む。高耶は返すように苦笑して、直江の胸をポスンと拳で叩いた。
「おまえの“妻”にはやってもらわなかったのかよ」
「まさか、船がそんなことするわけないでしょう。第一あの頃の私がやったって様になりませんよ」
そう言われて、出会った当初の愛嬌もクソもない無愛想な直江を脳裏に思い浮かべた。
確かにあの仏頂面で“行ってらっしゃいのキス”をせがむ光景というのはあんまりにも異様だ。想像した途端思わず吹き出してしまった。
直江はその様子に少し眉を寄せると、皮肉るように言った。
「あなたこそ、自分の奥にしてもらったんじゃないですか?」
思わぬ切り替えしに高耶がギョッと目を瞠る。まさか自分の生前の妻のことに話が振られるとは思っていなかったので反応が遅れたが、立ち直るとすぐさま意地悪そうな微笑を唇にのせた。
「そうだったかもな。何しろそっちと違って、三の丸の夫婦は仲が良いと評判だったから」
ニヤニヤと高耶が笑う。見え見えだが、己の主君の意地の悪さに思わず直江は溜息を漏らした。
だいたい当時戦国の風習から言って、そんな習慣が存在するわけ無いではないか。
「馬鹿なこと言ってないでさっさと行けよ。ホラ」
高耶が無理矢理玄関の外へ押し出す。
「……なるべく早く帰りますからね」
「分かった。待ってるから」
名残惜しそうに言う直江の背中を押して、高耶はヒラヒラと手のひらを振った。
そうして廊下に直江の影が消えると、ようやく一つ息を吐いた。
「よし、邪魔者はいなくなったな……」
呟いた途端、虎の両眼に静かな炎が燃えた。
視線の先は、隣部屋……。
高耶は黒いドアの前に立ち尽くしていた。
「502 Kanako Arihara」と記された表札を一睨みして、その横の白いボタンに指を伸ばす。
ピンポーン、という間の抜けたような音が鳴ると、室内のドアフォンからその部屋の住人の声が聞こえてきた。
『はい。どちらさまでしょう』
凛とした、女性らしい高い声だ。
高耶はカメラレンズ越しに挑発的な視線で在原を睨みつけながら、よどみない声で言った。
「隣室に住む橘義明の知人の、仰木高耶と言う者です。橘のことで、在原さんにお尋ねしたいことがあって来ました」
こちらからは在原の姿を見ることはできないが、気配で息を飲んだのが分かった。
『……少々お待ちください』
室内から靴をつっかける音が漏れ聞こえる。ガチャリという音と共に扉が開くと、姿を現したその人に、高耶は作り物めいた笑顔を投げかけた。
「こんにちは、仰木高耶です」
「こんにちは、仰木さん。確か、以前にも橘さんと一緒にお会いしたことがありましたよね?」
ええ、と高耶がうなずいた。一ヶ月前の、初めて会った時のことだ。高耶は明確に記憶しているが、在原の方でも、同じように記憶に残っていたようだ。
それはそうだろう。とにもかくにも、仰木高耶は目立つ人間だった。
「急に押しかけて申し訳ありません。ですが、在原さんにどうしてもお尋ねしたいことがあるんです」
「……橘さんのことで?」
「ええ」
高耶が真剣な表情でコクリと首を頷かす。在原に向けられる暗褐色の双玉は、現代人の女性に向けるものとはとても思えないほどに強い光が宿されていた。普通の人間なら、眼が合った瞬間に蛇に睨まれた蛙よろしく竦みあがってしまうだろう。
高耶の本気の瞳だ。野生の猛虎にも勝る、一対の黒玉。
「……中にお入りください」
声量は落ちたが、取り乱さず応対した香奈子は、なかなかの度量の持ち主だった。
その姿はまさに、戦乱の世に生きた女性に似通ずるものがあると言って差し支えない。直江が香奈子と船を重ね合わせたのも、無理からぬことだったのかもしれない。
靴を脱いで室内に上がると、奥のリビングへと通された。室内を飾るインテリアは女性らしく瀟洒で、直江の部屋と間取りは同じだが、雰囲気はまるで違う。
真っ赤なソファへと腰を下ろすと、「お茶を淹れてきますね」と言って香奈子はキッチンへ行ってしまった。
たいして面識の無い男性を、独身住まいの部屋に招きいれるのはあまり褒められたことではないが、そこは高耶の真剣な表情から推し量ってくれたのだろう。第一、高耶はそんなことをする人間には見えない。
暫らくして香奈子がティーカップとポットを運んできた。机に乗せると、琥珀色の液体を白い器に注がせる。
それを礼を言いながら手で受け取り、高耶は一口だけ口をつけた。そして自分を見つめる視線に気付き、スッと、香奈子に目線をあげる。
3秒ほど無言で見つめあった後、先に口を開いた香奈子は、こう高耶に言ったのだった。
「仰木さんって、ひょっとして橘さんの恋人?」
「……えっ?」
あまりに思いがけない突然の問いかけに、高耶は思わず言葉を失った。
動揺も露に香奈子を凝視すると、香奈子は形の良い唇をつって綺麗に微笑んだ。
「そうなんですね?」
「どうして……」
両眼を不審の色に染めて香奈子の瞳を覗き見る。だがその視線にも彼女は怯むことが無かった。
「前に橘さんが、恋人がいるとおっしゃっていたものだから、仰木さんがそうなのかなって思ったの」
その言葉に、今度こそ高耶は眼を見張った。直江が在原に、自分という恋人がいることを話しているとは聞いていなかった。寝耳に水の話だ。
「最初にチラッて見かけたときに、何だかお二人が連れ添って歩いている姿が、凄く空気に溶け込んで自然な感じがしたの。それ以来どういう関係なのかしらって、憶測していたんだけど、ひょっとしたら恋人っていうのは仰木さんのことじゃないかしらって、今急にそう思ったの」
香奈子がニコリと微笑む。その表情には、自分の思い人の恋人に向けるような、不穏な感情や醜い嫉妬などは欠片ほども見当たらなかった。
どういうことだろう、これは。
「在原さんは、橘のことが好きなんじゃないんですか」
当惑したような高耶の問いに、香奈子は「いいえ」と首を横に振った。
しかし高耶には俄かには信じられない。なぜなら、好きでもない男にああも度々差し入れなどをするものとは考えられないからだ。一昔前ならともかく、近所づきあいの希薄となった昨今の現代日本の首都において、その行為はあまりにも不自然ではないだろうか。
その疑念に満ちた高耶の心中を察したのか、香奈子が「ああ」と納得したように一つ声を上げた。
「もしかして、私のことで誤解して橘さんと喧嘩してしまったのかしら。そうだったらごめんなさいね。全然気づかなくって。……でも、本当に私、橘さんのことはなんとも思っていないんです」
そう言って一つ句切り、次に発された言葉に、高耶は再び驚くこととなった。
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