第一章
 眠らない月
国領の重体、夫人の死に憔悴する高耶。仙台に到着した千秋は綾子と共に結界点の調伏に乗り出し、木端神をその地に施す。
第二章
 鬼子母神
最上に囚われた直江は、伊達小次郎の助けによって脱走を遂げ、小次郎の母・お東の方を調伏し、高耶たちの元へと向かう。
第三章
 嵐の街
結界点に現れた義康の調伏を試みた千秋と綾子は、高坂の攻撃により阻まれる。一方瞑、想法を行い記憶を呼び起こそうとする高耶を目にした直江は、思わず駆け寄り、景虎の記憶が戻ることを阻止してしまう……。
第四章
 流れる星
仰木高耶を捨てずに景虎の記憶を取り戻すことを譲に約束する高耶。翌日上杉一同は伊達邸に赴き、最上妥当のため伊達との協力が決定する。
第五章
 夜叉覚醒
金輪の法打破のため、伊達の手により瑞鳳殿にて大威徳明王法と降三世明王法の連壇法を行う傍ら、夜叉衆たちは二手に別れ結界点の地鎮に乗り出す。
第六章
 火焔の杜
譲の力が覚醒し、大威徳明王と降三世明王が召喚され、義康のダキニ天法に対抗する。そしてダキニ天法によって催眠状態に陥らされた仙台の民衆が、瑞鳳殿を襲おうとする。
第七章
 烈火焦天
高坂の手によって義康が殺害され、金輪の法は打破される。夜叉衆もすべての地鎮を終え、最上義光打倒のため青葉城に向かうことに。
第八章
 ほたるの葬列
伊達成実の案内により青葉城を攻め込む夜叉衆四人。大将最上義光は高耶の手により調伏され、戦闘は上杉・伊達方の勝利に終わる。
第九章
 竜駆ける銀河
昏睡から覚めた国領の元を訪れる高耶。伊達は今回の戦闘を機に、武田と同盟を結び闇戦国参戦の決意をする。
終章 駅のホームで再び母親とまみえた高耶は、一度は無言のうち振り切るも、最後の最後に佐和子に手を伸ばし、誰にも見せることのなかった涙を、止めることなく流し続ける。その姿を直江は、ただじっと、背後から見守っていた…。
集英社コバルト文庫
著者…桑原水菜先生
絵 …東城和実先生
1991年9月10日第一刷発行
定価420円
260p カラー有り
表紙…高耶さん
帯コピー…『コバルトの超新星!』

納多直刃…当時6歳
     幼稚園年長組
─こはくのりゅうせいぐん─
+++++ 感想 +++++
仙台編後編の4巻です。この巻はやはり、ラストのシーンが好きですね。
新幹線のデッキで母親を何度も呼びながら、涙を流し続ける高耶さん。そしてその姿を何も言わずに見守る直江……。
3巻で言ったとおり母親の気持ちは私は全然分からないけれど、子供である高耶さんが、許せないとかどうとか、そんなことじゃなくて、自分はただ、そばにいてほしかったのだと。そう思う気持ちはとてもよく分かって、高耶さんが本当に可哀相でたまらなくなります。
そして『直江はその場所を守ろうとするかのように、泣き出した高耶のそばについている。誰もいないデッキ。今までこらえ続けてきた涙を、他人には決して見せたことのなかった涙を……。流しつづけて止めようとはしなかった。もう止めはしなかった。すべてはきっと── 今、この瞬間から始まるに違いなかった』……この一文!ここの文章が凄く印象的です。
最初に読んだ時は「この瞬間から始まる」という意味が分からなかったものですが、つまりこれは、誰にも見せることのなかった涙を、直江に初めて見せた。そのことによって高耶さんは直江に真実、心を開き、そしてその瞬間から、閉ざされていた扉は開き、後に紡がれていく二人の愛憎劇への道を辿っていくのだと……そういうことだったんですね。
深いなぁ……ミラージュって、本当に深いなぁ……。だって、「すべてはこの瞬間から始まった」んですよ?つまり、今の39巻地点に在るあの二人のスタートも、ここからだったんですね。ここから。
もちろん、四百年前の初換生時の邂逅があの二人の物語の本当の始まりではあるのですが、仰木高耶として生まれ変わった景虎様が、直江信綱と新たに育み始めた想い……その始まりの地点なんですよ。
もちろん、それはだれよりも大切な人に向けられる想いであって。たとえ記憶が無くても、400年の歴史が無くても、景虎様は直江と出逢い、そして再び愛するようになると、そういうことなんですね……。
何故ならそれは、仰木高耶≠熈上杉景虎≠焉A同じ魂を持った、同じ心の持ち主だから。
理屈じゃなく、直江にどうしようもなく惹かれてしまうことが、あたりまえのことなんです。
……そこらへんのことは『いとしのきみへ』に納多が魂こめて書き表してありますので、宜しかったら読んでやってください。いま読み返してみても、またちょっと泣けるもんがあります……(涙)。
↑そこのタイトルにリンクはってありますので、どうぞ。

そして今回やっと、下のチェックポイントにカウントが入りました!嬉しいな〜♪
実はこの「泣いた数」と「キスした数」と「愛していると言った数」のカウント、私が中学時代に計算していたものなんです。数学のノートの欄外に表を作って(笑)。まだまだ前半のあたりじゃこんなもんですが、だんだん凄い数字になっていくんですよ〜♪特に直江と高耶さんの回数の対比を見ると面白いんです、これが。
……と言っても、その数学ノートはどこかに紛失してしまったので、また1から数えなおしてます。しかもキスの数なんかはかなりあやふやなものがあるので、まあ、大体の目安として見てくださいね。

4巻の内容に入っていきましょうか。まず疑問に思ったのは、p83で高坂が千秋と綾子に向けて言う台詞、「よく聞け、上杉の夜叉衆。おまえたちを倒すのは、この私以外にはない。おまえたちの息の根をとめるのはこの私でなければならない……!」……これって、どういう意味だと思います?単純に最上義康と夜叉衆を倒すことを契約したからこう言ってるんでしょうか。それともあの、高坂が1200年以上もの時を換生し続けてきた目的に沿う発言なのか……。とても気になります。
夜叉衆ということは高耶さんと直江も入るんですよね。高坂が弥勒の時空縫合によって見た未来の姿を変えるために、切り札である高耶さんと直江を利用し、その目的を達成したら自らの手で滅ぼさなければならないと、そういうことなのでしょうか?
それじゃあ、最終巻では高坂が敵にまわることに……?深読みのしすぎかもしれませんが、額面通りの台詞とも思えないのです。
高坂は今回で、高耶さんに凄まじく敵視されてしまいましたね。でもねぇ高耶さん、この高坂こそが後に、あなたの魂の伴侶となる人の最大の窮地を救う、命の恩人となるのだから、そんなに邪険にしてちゃダメだよ。
本当に、あの時直江を時空縫合の未来から現世に戻してくれて、本当に良かった……。なんだかんだと言いつつ、高坂はどうしていつも直江を助けてくれるんでしょうね。どうして直江が切り札なのかも、明かしてくれないままでしたし……。
でも、高坂がいちいち直江の過去をほじくり返して挑発するのは、直江を現実に立ち向かわせたかったからなのかもしれません。苦しみから逃げ出すことのないよう。
そうして直江に強くなってほしかったと。未来を変えるほどの力がこの男にはあると、そう見込んでのことだったのではないでしょうか。……事実、直江は本当に強くなった。そこらへんの怨将など太刀打ちできないぐらい。あの織田信長さえもがその狂気に圧倒されるぐらい。
ファイナルステージ後半からの高坂と直江のやりとりを読んで、高坂は直江の良き友人であってほしいと思いました。だって、高坂は本当に直江のことをよく分かってくれてると思うんです。直江の理解者って、実はとても少なくて。孤独だと思う。真実分かってくれてるのは夜叉衆ぐらいでしょう。
37巻で高坂が自分を助けてくれたことを、きっと直江は感謝しているはずですし、どうか、最後まで高坂には直江のことを助けてやってほしいんです。たとえ策略のために長年近くにいたのだとしても……それだけじゃないと、私は思っているので。

そろそろギャグな感想に突入したいもんです。あ、そういえばp102の高坂に向けた直江の台詞、「憎しみあいなど……一度たりともした覚えはない。少なくとも、私があの人を憎んだことは一度もない!」……嘘をつくなああああ!!!!(笑)あんたぁ邂逅編であれほど「この者いつか殺す……!」とか言ってたじゃぁあーりませんか!あれで憎んでなかったと言うんですかい!しかも少なくとも景虎様は確実にあなたのこと大っっっ嫌いだったぜ!?(爆)
……いや、憎むのが悪いって言ってるんじゃないのよ?だってあんな滅茶苦茶酷いこと言われ続けてたら憎まない方がおかしいしね(苦笑)。
でもその憎しみや劣等感や屈辱を乗り越えて、なお心の底に残る愛だからこそあなたが景虎様を思う心は強いんでしょうに。景虎様を憎むことはすなわち愛することにも繋がるのだから、そんなことをいくら売り言葉に買い言葉だって否定しないでほしいな。

あと今回初めて直江が高耶さんを抱きしめました!カウントですっ。この『抱きしめた数』は今回の初めての試みなので、私もとっても楽しみなところ。でもただ抱きしめるだけではカウントされませんよ。そこになんらかの感情の介在がないと……つまり愛≠ノ満ち溢れた抱擁でなければならないのですっ!(←力説)《力》で吹っ飛ばされた時に庇うように抱いたとかいうのはダメですよ!と言っても、今回の抱擁に愛の介在があったかどうかは……まぁ、ちょっと疑問ですけど。あと、抱きしめられたのを抱きしめ返すのもカウントに入ります。
高耶さんの方から初めて直江を抱きしめるシーンは、皆さんもちろんご存知ですよね?
そう、あの巻のあの感動のシーンです。その時が来るのが楽しみですね〜!
(はっ、ところでこれってお姫さまだっこもカウントに入るんかな〜?)

う〜ん、あとは高耶さんのことを直江と相談している時の譲の台詞、「直江さんがついてれば、きっと大丈夫だよ」……わかってるじゃないか!おまえちゃんとわかってるんじゃないか!わかってるなら(以下略)。直江がその後、「自分が譲と高耶の親友同士の仲を引き裂くとでも言うのだろうか」と思い、それだけは、絶対しないと心に誓ってますが、実際はその5年後にその決意を翻すことになるんですよね……。成田譲を……殺す、と。直江はその決意を達成することになるのでしょうか……。少なくとも、弥勒がこの後生き残ることは無いのだろうし……。そうでなければ地球は滅亡するでしょうしね……(泣)。

ああっ、でもやっぱり4巻の魅力はあの青葉城のシーンですよね!なにしろ夜叉衆が最初で最後に四人で同じところに集結し、戦いあったという名場面っ。もの凄くかっこよかった!
絶対、最終巻では夜叉衆五人で力を合わせて戦って欲しいんです!お決まりパターンだってなんだっていい!最後は夜叉衆がいい。赤鯨衆より反織田同盟より那智の者より現代人より、夜叉衆たちで戦ってほしい!そしてこの四百年の戦いに、なんらかの答えを導き出してほしいんです!五人がもう一度一つになってほしいんです……!
もちろん、私は綾子ねーさんが無事だと信じてますからね!だって、あんな終わりは絶対無いもの!(泣)認められないもの!生きててね、晴家ちゃん……。

ということで今回もやたら熱く語りました。実は各巻感想と言うよりは全巻通しての感想になってたりするんですが、思うままのことを書いていきたいと思います。
次は奈良ですね!あの大好きなシーンのある巻!楽しみです☆
仰木高耶(上杉景虎)
直江信綱(橘義明)
門脇綾子(柿崎晴家)
千秋修平(安田長秀)
高坂弾正
成田譲
森蘭丸
伊達政宗
片倉小十郎景綱
伊達成実
伊達小次郎
最上義光
最上義康
義姫
国領慶之助
永末佐和子
主要登場人物  ♦…初登場
  あらすじ

高坂の慈光寺爆破によって、国領は重体の身。夫人の静子は息を引き取った。己の《力》が使えないばかりに……。高耶は憔悴し、景虎の《力》を取り戻すためならば、自分が仰木高耶であることさえも捨てる覚悟を決め、瞑想法に臨む。
最上に囚われの身であった直江は、伊達小次郎の助けによって山形を脱出し、高耶、千秋、綾子らと共に仙台に集結する。夜叉衆は伊達と手を結び、最上義康の手によって仙台の地に施された呪法「金輪の法」打破のため、瑞鳳殿にて連壇法を執り行う。義康のダキニ天法との激しい攻防の末、義康を撃破し、青葉城に陣を張る最上義光を夜叉衆が調伏したことにより、戦いは上杉・伊達方の勝利に終わった。
数日後、仙台を立つ高耶は再び母親とまみえることに。己の偽らざる心を表に現し、止め処なく涙を流す高耶と、その姿を背後から見守る直江の間には、新たなる絆が築かれようとしていた……。
第四巻 琥珀の流星群
♦名台詞集♦
第4巻チェックポイント♪

・呪法関係は直江と色部さんが詳しい
・毘沙門刀の召喚は、『オン・ベイシラマンダヤ・ソワカ(繰り返し)南無刀八毘沙門天!悪鬼征伐!我に降魔の剣を授けよ!』
・p82で初めて高耶さんが直江をおまえと呼ぶ
・4巻の経過はおよそ5日間

・泣いた回数
高耶さん…1回 計1
直江  …0回 計0回
・相手を抱きしめた回数
高耶さん…0回 計0回 
直江  …1回 計1
・自分からキスした回数
高耶さん…0回 計0回
直江  …0回 計0回
・愛してると相手に言った回数
高耶さん…0回 計0回
直江  …0回 計0回

「そこまでやつをいとおしいと思うか」(高坂)p104
↑「美奈子が憎かったか?」「おまえがその腕に本当に抱きたかったのは…」に続く高坂の台詞。この台詞が初めてでしょう。直江が確かに景虎様を愛していることを明確に言葉に発したのは。

「今日はおまえがいるんだなって思って」(高耶さん)p112
↑この頃からやっと直江をおまえ≠ニ呼んでくれるようになりましたv景虎様はいつでも、己の背後で見守ってくれている直江を、愛しく思ってたんですよね。

「おまえが死ぬのは、……だめだからな」「オレは、おまえじゃないと嫌だからな。肉体換えるから平気だなんて、そんなの、絶対許さないからな。オレが許さないからな」(高耶さん)p156
↑そうなんだよ!橘義明なんだよ!高耶さんは橘義明が大好きなんですよねっ。自分を守り続けてくれた身体だから。一緒に駆け抜けてきた身体だから。……20巻でもそう語ってましたよね。

「それは命令ですか」「命令じゃ……ない」(直江、高耶さん)p250
↑4巻最大の名台詞です。この瞬間ですね。高耶さんが、本当に本格的に、直江信綱という存在に心を開きはじめたのは……。