全てを失い、途方に暮れてお吉はもう人生をやり直す余力はなかった。 ある雨のそぼふる日お吉はひとり稲生沢川の淵のほとりで黙って 水かさの増した川を眺めていたが、その後姿が見えなくなった。 身を投げたのである 明治23年3月27日51歳の時であった。程なくして村人が水中に溺死体を 発見して大騒ぎとなった。現在ではそこはお吉ヶ淵と呼ばれ、引き取り手のなかった お吉の遺体は下田の宝福寺に葬られた。