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ヘルパー養成研修 重度身体障害者の理解―当事者の立場からー

実際の体験談を交えた話

【経 歴】

1955年(昭和30年)滋賀県近江八幡市に生まれる
1964年(昭和39年)静岡県三島市立北小学校に入学
1966年(昭和41年)伊豆療護園に入園 県立静岡養護学校東部分校に転校
1975年(昭和50年)県立中央養護学校高等部を卒業
1977年(昭和52年)中伊豆リハビリテーションセンターに入所
1978年(昭和53年)法政大学法学部法律学科に入学
1979年(昭和54年)中伊豆リハビリテーションセンターを退所 気まぐれ通信を発行
1982年(昭和57年)教職課程(社会科)の教育実習 福祉マップを作る会の地図完成
1983年(昭和58年)法政大学卒業 中学校教諭1級 高等学校教諭2級(社会科)を取得
1984年(昭和59年)行政書士の国家試験に合格  

2003年(平成15年)静岡県三島自立生活センター「アシストMIL」主催「ピア・カウンセリング短期講座」を修了
2004年(平成16年)NPO法人シー・ディー・シー理事長に就任
2004年(平成16年)沼津周辺地区ユニバーサル・デザイン推進懇話会メンバー
2005年(平成17年)しずおか福祉オンブズマン東部地区メンバー
2006年(平成18年)
「介護サービス情報の公表制度に係る調査員研修」を修了

(話というのは,手話が追いつける位がいい)

【日常生活】

脳性まひ 高齢の両親と同居 電動車椅子で外出 居宅介護、ことに移動支援を利用している。

週に2回ディサービスを利用 NPO法人の仕事や,行政や別の団体の会合などに参加している。

NPOというのは営利を目的としない団体のことで,わたしたちは沼津・三島方面で居宅介護事業所を運営している。

 ・沼津養護学校や,東部養護学校の生徒,卒業生とかかわりを持っている。

日常生活は,着替え・食事・排泄・入浴・移動に介助が必要。

・歳と共に手が挙がらなくなってきている。そのため、日常動作が難しくなって介助者の手が必要となってきている。

・首と口は,器用で,絵を描いたり,キーボードを叩いたり,はみがき,洗面,長時間同じ姿勢は、身体の硬縮を招く。

目線   座っているので,低い。普通の人が物を置く高さが,上に物を上げられたと感じる。テレビのリモコンなど。

 

【脳性マヒについて】

脳性マヒについて,わかりにくいと思うので,両手両足に全力で力を五秒間入れてみて欲しい。これが全身にいつもある。

1: 脳性マヒはどのような障害か?

A:  出産前後に脳に受けた損傷の結果として手足や口などの運動に障害を持つ特徴がある。主な原因として、1.難産による酸素欠乏、2.酸素欠乏を引金とする脳血管障害、3.母体との血液型不適合による異常免疫反応等が挙げられる。

出産前後に発生するため遺伝と思われがちだが、あくまでも出産に伴う物理的原因によるもので,まして伝染病ではない。

 

2: どんな症状が現れるか?

A: いろんなタイプがあるが,大別すると,1.痙直型と2.アテトーゼ型の症状がある。痙直型はさらに片マヒと両マヒに分かれ、例えば足にマヒが現れた場合、歩行が難しくなる。アテトーゼ型ではある動作をしようとすると他の部位にも力が入り、全身が動いてしまい一見踊っているような動きになる場合がある。

 

3: 言語障害を伴う場合もあるか?

A: 手足以外の症状として口の運動の障害がある。言葉は人間に与えられた大切な能力で、舌・唇・声帯などの微妙な動きによって自分の意見を相手に伝える。それがアテトーゼ型の場合に難しい。一生懸命に声を出そうとすると声帯が一気に大きく開いてまるで怒っているように聞こえる場合があるが、話し出すと差し支えなく会話ができるようになる。一方、まったく口が閉じずに、開放されていて、発音できない場合もある。療育のケアが必要とされるものに多い。

【「蛭子は」についてー日本人の障害者に対する意識】

「流しびな」の風景は「ひなまつり」に見かける。あの光景を見ていると,どうしても,古代の「蛭子」の話を連想する。

・「蛭子」は川に流された。そして、海に流れて、「恵比寿」になる。ちょっと,国語辞典を引けば,出てくる話。この蛭子は,「蛭」に似た子と考えられる。不随意運動の絶えない脳性まひ児をあらわすのに,まこと適切な表現。ちなみに、「蛭子」で辞書を引いてみると,「――古事記では伊弉諾・伊弉冉が日本の国土を生み成す際、国土とは認定し得ぬ失敗児、日本書紀では統治者の資格を欠く不具児としてそれぞれ位置づけられる――」、とある。これはまったく、障害児に当てはまる。さらに,「中世以降、恵比須(えびす)として尊崇された――」。

  ・また,「恵比寿」について,「――古くは豊漁の神として漁民に信仰され、また農神としても信仰された。狩衣(かりぎぬ)・風折り烏帽子(えぼし)姿で右手に釣り竿、左手に鯛(たい)を抱えた神像に描かれる――」とある。

   不具児を流しておいて、その半面、崇拝する。不要なものを捨てておいて、その恐れから崇拝する、これは日本人の潜在的な精神に存在するものではなかろうか。姥捨て山しかり,菅原道真しかり――。川に流されるひな人形を見て、「蛭子」のような子も一緒に暮らせなかったのかと考えてしまう。  

 

【重度身体障害者の生活】

重度障害者は,養護学校高等部を卒業すると,生活の受け皿があまりにも少ない。

          施設 本来,就労へのステップとして作られた福祉施設も,そこに入れれば,そこで一生暮らす事もある。

          在宅 親の世話になり,親の高齢化,そして親子共々,介助の必要が生じ,親の死と共に大変なことになる。

          自立生活 家事援助・身体介護・日常生活支援・ディサービス・ショートステイ・移動介護(身体有・無)

 

【重度身体障害者の社会参加の現状】

ふつうに、仕事を持ち、ほかの人と出会い、付き合い、結婚し、子供をつくり育て、家族を持つことはごく希である。

          電動車椅子 昭和55年から乗っている。これにより外へ出ることは可能となり、社会的参加の手段となる。

       時速6キロまで出る。近所の買い物や,電車を使って,街まで出掛けるのに使用。歩行者扱い。

          パソコン 1997年から使用。インターネット,Eメールを駆使して,様々な情報を集めるのに役立つ。

       麻痺した手の代わりに文書の作成する。いろいろなイベントの参加の動機付けとなっている。

わたしは,「ひっくりかめさんのホームページ」,「CDCのホームページ」を立ち上げている。

          社会に出るための仲間 元気であっても,家から出ない人はいる。社会に居場所がなければ出て行く意欲も出ない。    

それで,社会的居場所を作り出し,そこへ出て行く意欲を持たなくてはならない。

そのきっかけは重要で,すでに社会に慣れていて,出ている者しか,家にいる障害者を外に出すことは難しい。

     親や施設の職員は、安全のため、一人での外出に制約を課す。コンビニさえ入ったことのない者も少なくない。

 

【福祉制度】

(身体障害者手帳で,利用できる制度)

鉄道・バス運賃の割引 ・身体障害者手帳を所持していると、鉄道、バスを利用する時、運賃が割引かれる。

  鉄道は、介護者と共に乗ると通常運賃が半額になる。一人の時は101キロ以上で、通常運賃の半額となる。

有料道路の料金割引 ・障害者本人が運転する場合や、重度障害者が乗車し、介護する方が運転する場合に、50%が割引。

航空運賃の割引 ・身体障害者手帳を所持する12才以上の者で国内の定期航空路線を利用する場合に運賃が割引かれる。

タクシー料金の割引 ・身体障害者手帳を所持する者がタクシーに乗車した場合、メーター料金の10%が割引される。

小型タクシーの基本料金分のチケットを年間24枚交付している(函南町)。 

重度心身障害児(者)医療費助成  ・各種社会保険で診療を受けた場合の自己負担及び入院時の食事代を市町が助成する。

映画館,公園,美術館などの入場料の割引。NHK放送受信料の減免。補装具の交付(修理)。日常生活用具の給付・貸与。

 

【社会的変化】

ひと昔前、20年前は、一人で列車に乗ると、「2週間前には連絡してくれ」とか、車椅子に荷札を付けられたりした。

 一人で外に出て行くほうが、「自分勝手」と思われていた。そうした者を「お荷物」と考えられていた時代があった。

あるリハセンターでのこと。静岡の歩ける入所生が親に迎えにきてもらう。東京の入所生は車椅子でも自分一人で帰った。

今でも静岡は、保守的なのか、過保護なのか、反骨精神が弱いのか、「周りに迷惑をかけてはいけない」という考え。

けれども、高齢化社会が進むにつれて、障害者問題は、障害者だけのものではなくなってきた。みんなが障害者予備軍。

  目は衰え、耳は聞こえなくなる、足腰が弱くなる、情報認識ができなくなってくる、リハビリの必要性の認識。

  2007年には、戦後生まれの「団塊の世代」が退職し、2012年には、65才となり介護保険をバンバン使うようになる。

障害者が外に出ることによって、発生する安心感。街中に、車椅子やシニアのための電動車をよく見かけるようになった。

  以前は、障害を負うと、絶望してしまうふつうの人もいた。障害児・者には,「この子を残して――」という悲壮感。

  ところが、このごろ障害を負っても、車椅子で生活しているの見て、何とか生活できるものだと思うようになった。

  誰もが暮らしやすい社会にとのユニバーサル・デザインの推進に役立つ。高齢者や、妊婦、子供などに優しい社会に。

   ・シャンプーとリンスを見分けるためにギザギザが付いている。アルコール飲料のカンにはツブツブが付いている。

 

【マンパワーの必要性】

重度障害者にとって外出は非日常 家の中で時間をすごそうと思えば,いくらでも時間は経過していく。それも幸せー。

健常者には当たり前の事、映画に行く,お茶しに行く,買い物に行く,カラオケに行く,ボーリングに行く,温泉に行く。

そこでこのギャップを埋めるには他人の力が必要。世界は家の中だけではない。井の中のかわずは空の高さを知っていた。

介護する側と,介護される側の共同作業の必要性。人間関係の大切さ。「袖すりあうも多少の縁,つまずく石も縁の端。」

一人一人違うので,相手に聴いて行くことは大切。この情報収集の過程は,のちのちに,ヘルパーの大きな財産となる。

ユニバーサル・デザインもすべての人に,ではなく,眼の前にいるその人ために考えることから始まり,大きな力となる。

 ・あまり物事,大きい事をいっぺんにするより,小さい事を確実に,あきらめずに続ければ,いつか,きっと成功する。

 

【不便なことが、本当に「障害」なのか】

高齢になり、危ないと思い、家の中の段差をなくして、スロープにすることは必ずしも,良いことばかりではない。

  段をなくしたことで,使っていた筋肉はなくなってしまう。段があるという認識がなく,スロープで転んでしまう。

40才後半を過ぎると、眼がかすみ、そのうち耳も遠くなる。老眼鏡や補聴器をつけると、障害者なのか。そうではない。

周りの状況をよく判断して,様々な道具や、システムをうまく利用して,自分で行動するようにしなければならない。

 

【実際のヘルプの現場において】

移動・食事・排泄が主な問題

          移動 車の乗り降りにエネルギーを使う。車椅子のまま乗せてしまうケースもある。

     低床バスは、スロープが付いているが、一人では使えない。列車は各駅にエレベーターやスロープが付いた。

     電動車椅子にヘルパーが付く場合,足を踏まれないように後ろから歩いてきてくれると助かる。

          食事 不随意運動、筋肉緊張があるので,右からか,左からか介助する場合,障害者によっては,こだわりがある。

          排泄 重度障害者は,がまんしてしまう傾向がある。それぞれ自分のペースや介助されたい方法がある。

          映画 映画館の方で車椅子のために入りやすい入り口を開けてくれる。

     しかし,一番前になるので,何段か上の座席に移らなくてはならない。車椅子専用の席の付いた所もある。

          ポーリング ガターをバンパーでふさいで,ボールはスライダーで転がす。会場によっては備え付けの椅子が邪魔。

          美術館 車椅子の位置からは,ギャラリーの照明が作品にあたり,観えない。作品から相当離れないといけない。

          温泉 衣類の脱衣から,入浴,着衣とけっこう大変。風呂場のつるつるはこわい。車椅子ごと入るのが良いかも。

          買い物 ふつう電動車椅子で行くと,上にある物、奥にある物が取れないので,ヘルパーがいっしょだと助かる。

ヘルパーの側に,こうした自分で外に出て行こうとする者の積極的な行動に「どんとこい」という気持ちがあって欲しい。

          ヘルパーが介助を不安に思うと,介助される側に不安が伝わり,またヘルパーに反映されるという悪循環を生む。

          ほほえみは,伝染する。ほほえみは、相手に安心感を与える。今見ている相手の顔は,自分の今の顔かもしれない。

 

【人生のめざすもの】

今は両親の元で生活しているが、いずれこの状態は親の死によって、崩壊する。つねに何かしらのケアを必要としている。

  その崩壊前に、地域で生きるケアを確立しなければならない。そのためには、自分を魅力的な人格にしておきたい。

  自分の主張を持ちつつ、周りの人々のためにも役立てたい。知識や、専門性、身体障害ゆえの独自性を生かしたい。

  ずっとふつうの人には経験できないことを経験しているので、自分の目線で話すとき、大きな力になるかもしれない。

ただ生きるのではなく、しぶとく、熱意を持ち続け、熱心に、健康に、有意義に、そして社会に貢献できるものにしたい。


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