Triangle:Chapter 3
大地讃頌

それは4時間目終了直後の14HRの教室でのこと。

例によって"腹減って死にそ〜!!"状態だった天はとっとと隣のクラスに向かおうとしていたのだが...。
「は〜い!! すぐ終わるのでちょっとそのまま聞いて下さい!!」
突然教室中に響き渡った声に14HRの生徒たちは一瞬口を閉じた。
声の主は教壇の前に立った静であった。
(なんだよ、まったく...)
天はぶつぶつ言いながら自分の席の椅子に勢いよくもたれかかった。
「え〜、予餞会の伴奏者についてですが...。」
(予餞会?そういえばそんなもんもあったなぁ)
「始業式の日にお願いしたように立原さんの代わりの人を推薦や立候補で募集していたのですが候補があがっていません。」
ちなみに、"立原さん"とは例の骨折した元・伴奏者である。
「で、明日から本格的な練習が始まってしまうため、もうこちらから推薦したいと思います。」
(まったくなんでもいいからとっとと終わりにしろよ...)
空腹のあまり機嫌が悪くなっていた天がひとりぶちぶち言っていたその時。

「宮島タカシくんにお願いしたいと思いますがいいでしょうか?」

(...え?)
静の言葉に一瞬耳を疑った天は静やクラスのみんなが自分に注目していることに気づいた。
「...って、天、ピアノ弾けるのか!?」
「あ、そういえば、わたし、南中出身の子に聞いたことあるかも〜!!」
「え〜!! それなら、ぜひ天くんにやってほしい〜!!」
14HRは一気に騒がしい状態になり、気がつけば静の意見にみんな賛成していた。
「それでは、宮島くんに伴奏をお願いする、ということで。」
「ちょ、ちょっと待て!!」
茫然自失としていた天は静の言葉ではっと我に返った。
「オレは伴奏なんか絶対にやらないぞ!!」
「それじゃあ、君が誰かほかの人推薦してくれる?」
思わず「うっ!!」となった天に静はいたずらっぽく笑った。
「もう時間もないんだし、ただ"やりたくない"だけじゃみんな納得しないよ。」
その言葉に天はさらに「ううっ...」となった。
しかし、推薦したくても天はこのクラスに自分以外にピアノが弾ける人がいるかどうかも知らないのだ。
(ちなみに、静は自分がピアノを弾けることをみんなに言っていません(笑)←同じ中学出身の人は知っていますが)
「それじゃあ決定だね♪」
黙ったままの天に静はにっこり笑いかけた。
「...わかった。」
天はくやしそうにそう言った。
それで"話し合い"は終了し、教室内はお弁当を広げたり学食を向かう生徒たちで騒がしくなった。
そして、天は教壇から降りた静に思わず駆け寄った。
「古屋、おまえ、なんでオレがピアノ弾けるの知ってたんだよ?」
すると、静はくすっと笑った。
「ちょっと"情報提供者"がね♪」


「で、それっておまえだろう、雪野!?」
北校舎の屋上。
怒りで熱くなっていた天を要とふたりでなんとか連れてきて、その訳を聞いていた雪野の顔はだんだん困った表情になっていった。
そして、天の質問に雪野は思わず視線をそらしてしまった。
「やっぱり〜!!!」
「だ、だって、訊かれたから...」
箸をふりまわして叫ぶ天に雪野は思わず頭をかかえた。
「でも、引き受けたのは天の責任だろ。」
ふたりの横でお弁当を食べていた要の言葉に天の動きが止まった。
「まさか今さら『いや』なんて言わないよな?」
にっこり笑う要が先ほどの静の笑顔をだぶって見えた天は何も言えずにがばっとお弁当箱の中身をかっこみ出した。
(...やっぱり、要くんとしーちゃんって似てるかも...)
ふたりの横で雪野は苦笑いしながらこっそりそんなことを考えていた。


一方、その頃、北校舎三階の生徒会室では...。
「絶対に無理!!」
生徒会長の西森航が憮然とした表情をしていた。
「どうしても?」
航の向かいには合唱部副部長の片野(かたの)美樹が困った表情で立っていた。
「大体、"伴奏者がケガで弾けなくなった"って言っても合唱部にはほかに弾けるやつ、いくらでもいるだろ!? なんで俺がやらなきゃいけないんだよ!!」
「わかった、わかった。」
美樹はだんだんと声が大きくなっていく航と"まあまあ"と両手で制した。
「まったく..."あの人"に『なに考えてんだ!?』って言っとけよ。」
「まぁ、西森の場合は『もしできたら』って言ってたから"だめもと"だったと思うけど...」
美樹の言葉に航は首を傾げた。
「...ってだれかほかにも...?」

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またもや静大活躍?(笑)
ちなみに、"片野美樹"さんは「Triangle」にもちょこっと出ています♪
(あの頃は"ヒラ部員"(!?)でしたが二学期に副部長になりました)
そして、意味深(!?)につづきます... ̄m ̄ ふふ
[綾部海 2004.11.22]

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