「で、そろそろ本題に入りたいんだけど...」 雪野は「来た!!」と思い表情をかたくした。 (それを見た光希は、そんな緊張しないで、と笑った。) 「端から見るとあなたと宮島要がひじょ〜に親しく感じられるんだけど、そこのところはっきりさせて欲しいっていうリクエストがあってね。」 「リクエスト...」 「まぁ、私にしてみれば、要が誰と仲良くしようがつきあおうがどうでもいいんだけどねぇ。」 いわば要の親衛隊(!?)である"要派"の会長の言葉とは思えない光希の発言に雪野はあっけにとられてしまった。 「なんかあいつのことアイドル視してる子たちがいるみたいでね。まったく要がアイドルだなんて笑っちゃうよね、ほんとに。」 「あの〜...」 雪野はどんどん飛び出す光希の爆弾発言にさらに驚きながらも、授業中に発言するときのようにおそるおそる手をあげた。 「手塚さんって要派の会長さんなんじゃないんですか?」 「一応、そうなんだけどね。でも、そもそも要派と天派は私たち3年生が半分冗談で作ったものなの。」 4月。要たちが北高に入学して間もない頃。 3年の教室のベランダにいた光希や同じ南中出身の女子数名は校門から昇降口へと向かう要と天の姿を見つけた。 中学の頃と変わらず"べったり"なふたりに思わず笑ってしまった光希はちょっといたずらをすることにした。 「要ー!! 天ー!!」 2階のベランダで大きく手を振る光希は登校ラッシュの生徒たちの注目の的であった。 そして、生徒たちの視線は徐々に下がり...。 視線など気にせずに光希に軽く手を振り返す要と、逆にみんなに見られて真っ赤になっている天へと移っていった。 「ばかやろー!! なにこんなところで大声出してんだよ!!」 光希に負けないくらい大声で叫んだ天は要を引っ張って昇降口へと逃げていった。 その姿を見た光希と友人たちの感想。 「かわいい〜♪」 それ以来、光希たちは校内で要と天を見かけるたびに声をかけることにした。 そして、いつのまにか人数は増えていき...。 「最初は"要と天をからかう会"だったはずなんだけど、いつのまにかファンクラブ化しちゃっておまけに分裂しちゃったのよねぇ...。」 光希は大きくため息をついた。 話を聞いていた雪野は、自分に攻撃をしかけてくる(!!)あの集団(!?)が最初はそういうものだったと知り驚いていた。 「で、最初に声かけたのが私だったから私が会長。私もこういうのきらいじゃないし、やっぱ大人数になるといろいろ問題も起きてくるからそれをなんとかする人が必要になってくるしね。ちなみに、天派の会長も私です(笑)」 「そうだったんですか!?」 「まぁ、私にとってはあのふたりは子分みたいなもんだから。」 そう言って笑う光希に、雪野は「この3人にいったいどんな過去が...?」と思いつつも、「聞かないほうがいいのかも...」という考えもわいてきたのでことばを飲み込んだ。 「あ、また脱線しちゃった!!」 光希はぽんっと手をたたくと雪野を見た。 「つまり、私はね、あなたが要のことを好きか嫌いかということを確認しておきたいの。」 「"好きかきらいか"?」 「で、別に『好きだったらこうしろ』とか『嫌いだったらああしろ』とか言う気はないの。あなたはいままで通りでいていいわ。」 光希はにっこりと笑うと立ち上がった。目線が雪野より少し高くなった。 「でも、あなたの気持ちがはっきりすることでまわりの行動が変わってくると思うの。まぁ...ひょっとしたら、いままで以上に"直接的な行動"に出る子もいるかもしれないけど...。」 「え...!?」 "直接的な行動"というとあのにらまれたり、イヤミを言われたり、わざとらしくぶつかられたりという...。 あれがさらにエスカレートすることを考えたら雪野は真っ青になった。 「で、でも、もしそうなったら私に言ってくれればなんとかするから!! ね!!」 一気に暗くなった雪野に光希はあわてて付け加えた。 「それで、どう? あなたは要のこと、好き?嫌い?」 光希の目はさきほどまでのちょっとふざけた感じが消え真剣なものとなっていた。 「......中間ってないんですか?"好きでも嫌いでもない"とか...」 「中間はなし。」 光希はにっこりと笑い、雪野の逃げ場をふさいだ。 好きか嫌いか。 本当は「そんなのどっちでもみんなに関係ないじゃない!!」という気持ちが雪野にはあった。 しかし、光希の問いかけは"自分が通らなければいけない道"のように感じ、答えなければこれから先に進めないように思った。 好きか嫌いか。 ここで自分にうそをついてもどうしようもない。 それに、要以外の人のことは今は関係ないのだ。 「わたし、要くんのこと、好きです。」 ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ 雪野の"告白"に光希はどう出る!? "光希編"(勝手に命名)次回最終回!! でも本編はまだまだ続く...いつになったら終わるんだろう?(禁句^^;) [綾部海 2003.11.6] |