Triangle


前田雪野、宮島要は共に県立北高校1年。
出会いは4月にさかのぼる...。


「要ー!!」
「どうした、天?」
入学式とHRが終わって騒がしい13HRの教室。
自分の席で同じ西中出身の里美と話しながら雪野は隣の席の要の行動をなんとなくながめていた。
廊下側の窓からよそのクラスらしき少年に呼ばれた要はうれしそうに少年に駆け寄っていった。
「あれ、別のクラスの子だよね?」
「は?」
里美は突然の話題の変化にとまどいつつも雪野の視線の先を追った。
「そうじゃない? あんなかわいい子いたらすぐ気づくよ。」
その"彼"は背はあまり高くなかったが(長身の要の隣にいるからよけいにそう見える)、大きく少しつり上がっている猫のような目が印象的だった。
たしかに里美の言うとおり"美少年"である。
「天〜!! おまえ、高校入っても要にべったりかよ〜。」
女子ふたりがそのままながめていると、ほかの男子も要たちのところにやってきた。
どうやら同じ中学出身のようだ。
「"テン"?」
雪野は耳に入ってきた"彼"の呼び名に首をかしげる。
「名字? 名前?」
「さあ」
そんな会話を続けながらもふたりの視線はそのにぎやかな集団に向いていた。
と、突然、ふたりの視線を感じたのかふりむいた要と雪野はばっちり目があってしまった!!
要は一瞬「?」という表情をしたがすぐににっこりと笑いかける。
雪野も笑い返したがどこかひきつっていた。
「見てたのばれたかな?」
「ばれたかも...」
などと話していると要がふたりのところにやってきた。
「どうも、前田さん、倉元さん」
「どうも、にぎやかだね。友達?」
要と里美の会話を聞きながら雪野は要の記憶力のよさに驚いていた。
雪野はさっきのHRで要と共にクラス委員に指名されているから覚えているかもしれないが、里美はクラスの自己紹介で名乗っただけなのだ。
ふと廊下に目をやると美少年がこちらを見ていた。
なんだかにらんでいるようだった...。
「ううん、従弟。」
「ねぇ、紹介してくれる!?」
里美はとにかく美少年が好きなのだ。
「いいよ。 お〜い、天!!」
要は廊下にいる"彼"に「おいでおいで」と手招きした。
"天"は一瞬よその教室に入るのを躊躇していたが要にひっぱられて雪野と里美にところにやってきた。
「なんだよ〜!!」
美少年、不機嫌(汗)
しかし、要はそんな様子に慣れているのか無視して進行。
「"これ"が俺の従弟の宮島タカシ。タカシは"天国"の"天"って書くんだ。」
「あぁ、それで...」
呼び名の疑問が解消した。
「で、こちらがうちのクラスの前田さんと倉元さん。天、あいさつは?」
「どうも...」
いかにも不承不承という感じで頭を下げる天。
「よろしく...」
なんとなく天に悪いことしたような気分の雪野。
一方、里美はそんな様子もおかまいなし。
「天くんはどこの中学?」
「南中。」
"なんなんだこの女は"というオーラを発しつつも質問に答える天。(←答えないと要がこわいから)
「宮島くんは?」
「おれも南中。前田さん、ふたりとも宮島でややこしいから"要"と"天"でいいよ。」
にっこりと笑う要。
ひそかにこのやりとりを聞いていたまわりの女子は「きゃ〜!!」と盛り上がった。

そして一ヵ月後。
長身で整った顔立ち、頭もよく人当たりもいい要。
きれいな顔には似合わぬ口の悪さに"我が道を行く"傍若無人にも関わらずなぜか憎めない天。
"宮島コンビ"はあっというまに学校中の注目の的となり、女子の中には"要派""天派"も出てくるほどであった。
クラスの副委員長として要とコンビを組む雪野は"要派"の女子から時折"痛い視線"やそれ以上の攻撃を受けることもあった。
しかし、当の雪野は"中立派"というかこの"活動"にあまり興味がなかった。
が...。

ある日の昼休み。
雪野は里美と4階の廊下を歩いていた。
「なんで1年の教室っていちばん上なのかね〜。学食とか行くのめんどくさいじゃん」
ほぼ毎日繰り返される里美のグチに「そうだねぇ」とあいづちを打ちながら雪野は窓の外に目をやった。
中庭をはさんで向かいの校舎の屋上に要と天がいた。
向かいの校舎は3階建てなのでふたりは雪野とほぼ同じ目線にいてその様子もよく見えた。
女子の前ではどちらかと言えば無愛想な天がとても楽しそうに笑っている。
そして、そんな天を見ている要が一瞬...とても優しい表情になった。
「!」
それはいつも見せるちょっとシニカルな笑いとは違いとてもあたたかくやわらかいものだった。
その表情に雪野は見とれて立ち止まってしまった。
「? どうしたの、雪野?」
里美も不思議そうに立ち止まった。
「あ、なんでも...」
「あ〜天くんだ〜♪」
雪野はそのまま立ち去ろうとしたのだが、雪野の視線の先に天(と要)がいるのを発見した里美は窓から大きく手を振った。
天は例によっていやそうな顔をしていたが要は笑って手を振り返していた。
しかし、その表情はさっきのものとはちがい、いつも見せる顔だった。

(あんな顔もするんだ...)
それ以来、雪野はいつのまにか要を目で追うようになっていった。

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さあどうなる!?(自分で言うな?)
[綾部海 2003.10.11]

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Photo by Earth Square