BEFORE DAWN
2

先生の住んでいるマンションはコンビニから歩いて5分くらいだった。
「先生が俺んちのこんな近所に住んでるなんて知らなかったかも」
「実は先生は知ってました♪」
まゆ先生は「フフフ」と笑った。
「え!? なんで!?」
「学校帰りとかにこの辺歩いてるの何度も見かけたから」
「俺、全然気づかなかった...」
なんかショックかも。
「先生、車だったから」
たしかに通りすがりの車本体は見てもドライバーにまで目をやったりしないしなぁ。
...あれ? なんかひとつひっかかったことがある。
「先生、今日仕事は?何時まででした?」
「今日は9時まで。 なんで?」
「いや、別に...」
N町からここまでは車で20分くらい。
おそらく先生は仕事帰りだろう。
普通、N町からこのマンションに帰るならさっきのコンビニの前通るはずだよな。
晴れている日ならともかくこんな雨の日になんでわざわざ車を置いて歩いてコンビニへ行ったのかな?
ってなんでこんなこと考えてるんだ!?
やっぱ今日変かも、俺。

「どうかしたの?」
ロビーでエレベーターを待ちながら黙って考え込んでいる俺にまゆ先生が心配そうにたずねた。
「具合でも悪い?」
「いいえ、大丈夫ですよ。」
俺は笑ってごまかした。
あんなどうでもいいこと考えてたなんて言えないな(汗)

まゆ先生の部屋は6階だった。
エレベータを降りてちょっと歩くと先生はカバンの中をごそごそし始めた。 カギを探しているらしい。
「今日は家族の人は出かけてるんですか?」
「ううん。先生、ひとり暮らしだから。」
「え?」
さすがにそれはまずいのでは...。
「あ、あの、やっぱ彼氏とか来たら悪いし、やっぱ俺か...」
「なに変なこと心配してるの? 遠慮しなくていいって言ったでしょ。」
"帰ります"と言おうとした俺の言葉を遮って先生は笑って言った。
「それにそんなの来ないから」
「先生、恋人いないの?」
「今はね」
ふ〜ん、"今"はね。
やっとカギが見つかったらしく、ドアが開いた。
「さあどうぞ」

玄関に入ると目の前には廊下がありドアが3つほど。
てっきりワンルームだと思ったのに、ずいぶんいいところに住んでるんだなぁ。
「さて、まずお風呂と着替えかな」
まゆ先生は雨でだいぶぬれている俺の姿をじっと見た。
「え、いいですよ、このまんまで」
「よくないでしょ!! そんなかっこじゃほんとに風邪ひいちゃうわよ!!。 あと、そんなずぶぬれで家の中うろちょろされたら大変だもの」
そう言うと先生はいちばん手前のドアに飛び込んでいった。
たしかに靴下はずぶぬれだしズボンの裾もだいぶひどいかも...。
とりあえず、部屋に上がる前に靴下を脱ぎ裾をまくった。
これでちょっとはいいかも。
「お風呂、あと15分くらいで入れるから」
先生はタオルを手に戻ってきた。
「はい、頭もよく拭いてね」
まゆ先生はタオルを俺の頭にかぶせるとごしごし拭き始めた。
「あ、自分でやれますから!!」
なんだかてれくさくなって俺は先生の手から逃げ出した。
先生は一瞬驚いたようだけどすぐに楽しそうに笑い始めた。

そして、約1時間後。
風呂でしっかり温まった俺は先生が用意してくれたスウェット姿でリビングのソファに座っていた。
なんだか頭がぼ〜っとしてるかも。
のぼせるほど長く入ってないけどなぁ...?
「ウーロン茶でいいかな?」
「あ、すみません」
俺の目の前のガラステーブルにまゆ先生がグラスを置いた。
よく冷えたウーロン茶は乾いた身体にすうっと吸い込まれていくようだった。
「制服、朝までには乾いていると思うから。それ、ちょうどよくてよかった」
先生はスウェット姿の俺をまじまじと見ていた。
でも、これってたぶん先生のじゃないよな...。
どう考えても155cmのまゆ先生の服が178cmの俺に合うわけないし。
...って俺さっきから何考えてるんだ!?
別にだれの服でもいいじゃないか。
やっぱ今日の俺変だなぁ...。

あれ?
目の前が真っ暗...。

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すっごい中途半端なところで終わってすみませんm(__)m
[綾部海 2003.10.11]

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Photo by natural