「沙也、帰りになんか食べてかない?」 「あ、ごめん、用事あるんだ。」 わたしはあわただしく着替えを済ませてバレー部の部室を出ると、下駄箱とは反対方向に向かった。 目的地は南校舎の社会科準備室。 もう冬休みに入ってる上に外も真っ暗になるような時間だったので、校舎内にはほとんど人影がなかった。 わたしはばたばたと階段を駆け上がった。 社会科準備室は灯りは点いていなかったけれど、入口の鍵がまだ開いていた。 なんとなくこっそり準備室の中に入ると、杉本先生の机の上にはタバコの箱が置いてあった。 「先生、まだ帰ってないよね…」 ほんとはこのまま杉本先生が戻ってくるのを待っていたいけれど… 誰かに見られるとまずいし、加奈たちをあんまり待たせるのも悪いし…。 そこで、わたしは肩にかけていたスポーツバッグの中からおそるおそる赤い紙袋を取り出した。 「…つぶれてないよね…?」 わたしはちらっと紙袋の中をのぞいたが、その"中身"はさらに白い箱や赤いリボンに包まれているのでどうなっているかわからない。 「…つぶれてませんように…」 なんだか祈るような気持ちで杉本先生の机の上に紙袋を置くと、わたしはさらにバッグの中をごそごそあさった。 「…あった!!」 わたしはスポーツバッグからメモ帳を取り出すと、先生の机にあったペンを借りた。 『杉本先生へ』 メモ用紙にそれだけ書くと、紙袋の中の包みの上にそれを置き、ペンを元のところに戻した。 「よし、行こうかな。」 そして、わたしは入ってきた時とおなじようにこっそりと準備室を出ると、階段をばたばたと駆け下りた。 |