アンバランス −東方司令部・訪問 2−
そこは、東方司令部、司令室。
そう、此処には、司令部を預かっていると云っても、おかしくはない人物・・・
地位は、"大佐"で又、"焔"の二つ名を持っている国家錬金術師でもある、ロイ・マスタングがいる。
今、その彼は、机上に山のように積まれ、今にも崩れ落ちそうになっている状態の書類と飽きずに睨めっこをしていた。
と、そこへファインダーを抱えた"中尉"である、リザ・ホークアイがノックと共に入って来る。
「失礼します、大佐。・・・エドワードくん達がお見えです」
そう敬礼し、出入り口である扉を塞がぬように、すっと静かに自分は左に移動する。
「――・・・あぁ。入って貰ってくれ」
ロイは、一山から崩さぬように、そっと書類を1枚、手に取り、顔を上げて返事をした。
「失礼しま〜す」
勿論、最初に顔を覗かせたのは、エドワード(中身は)。
いつものエドワードがやっている調子で入って来る。
「あっ、失礼します」
その次は、弟のアルフォンス。
何か、いつもより少し落ち着かないような様子だ。
しかし、まぁ、そこまでは、いつもの変わらぬ光景であり、不思議ではなかった・・・
その二人に、ロイは一息つき、口を開こうとしたが。
「・・・しっ、失礼します」
と、アルフォンスの後に続くように、恐る恐る入ってきたのは、エドワードよりは少し高めだが、それでも、"小柄"という言葉が似合いそうな少女、(中身はエドワード)であった。
その部外者でもあろう、少女の登場にロイは、眉を顰める。
「鋼の・・・」
"これは、一体どういうことなんだ?"
問いただそうとしたロイだったが、エドワードの方は動じもせず普段通りに、少女のを紹介しようとする。
「ん?――あぁ、こいつな・・・」
「あっ。兄さん・・・ううん、。お疲れ様。此処からは、ボクがお話します。大佐、中尉」
それに、気付くと柔らかな口調で、そう言ってアルフォンスは、ロイにホークアイと視線を合わせる。
二人は、一瞬、自分の兄であるエドワードを、見知らぬ少女の名前""と呼んだ、アルフォンスを訝しげに見つめた。
しかし、ロイは、直ぐにこの三人の間に"何かあった"という考えが脳裏に浮ぶ。
「―――・・・言ってみなさい」
そう一言、告げると、自分の研究手帳を取り出し、メモを取る用意をする。
ホークアイには、地図の用意をするように頼み、三人を近くのソファに座らせる。
その様子を見ていたアルフォンスは、改めて、ロイに感謝をする。
"何かあったのか"
"話せ"
では、なく。
ただ一言"言ってみなさい"
・・・その中にロイの優しさを感じたからだった。
それは"私で良かったら力になろう"そう言ってるようでもあったからだ。
「実は・・・―――――
・・・ということになってしまって・・・」
淡々と話をしていくアルフォンス。
段々と弱々しくなってくる、その声が、妙に頭の芯まで響き、傷みまであるような、そんな錯覚に襲われてしまうとエドワード。
「・・・そうか」
"わかった。―――・・・中尉"
と、傍らで地図を抱えて待機していたホークアイを呼ぶ。
そして、地図を開き、ある場所を指差す。
「此処から、南東にノースルという街がある。そこの街には、私の知人がいてね。残念ながら、錬金術には詳しくないが、力になってくれるように頼んでおこう」
「「あっ、ありがとうございます!!」」
アルフォンスとエドワードの姿であるの声が、上手い具合に綺麗に重なった。
「・・・正直、おかしな気分だな」
「それは、オレも同じだよ」
喜ぶ二人を一瞥し、天を仰ぐロイと、腰に手を当てて『やれやれ』とでもいうように息を吐くの姿のエドワード。
「それと、もう一つ」
「「「?」」」
視線を、三人に戻し、いつになく真剣な面持ちでロイは、あることについても伝える。
「その街には、此処最近だが、技術に優れている錬金術師が滞在している噂がある。もし、その噂が真実ならば、一度訪ねてみるのもいいだろう」
ロイの親身な言動と優しさに、アルフォンスとは感謝すると同時に喜ぶ。
「「はい!ありがとうございます!!」」
「あっ・・・いや」
普段から、大人しく思いやりのあるアルフォンスは、ともかくとして今、エドワードの姿になってしまっているに満面の笑顔で礼を言われ、ロイは少々戸惑ってしまった。
「まぁ、色々とサンキュな。大佐」
フッと軽く笑い、ロイを見上げるエドワード。
「――・・・あぁ。鋼の・・・」
"君も大変だな"そう続けようとしのだが。
「同情なんか、かけるなよ。オレは、今、あいつの姿になっちまってるけど・・・そんな嫌ではないんだぜ?―――・・・それよりさ、あいつが、が前より大事に想えてくるんだ」
そう言ったエドワードの表情はいつもより、優しい・・・そんな感じをロイは受ける。
「――そうか」
「・・・あぁ」
自分の発言に、恥ずかしくなったようで、少し照れた顔をワザと背けた。
その傍らでは、アルフォンスに、、ホークアイの三人は、これからのルート確認をおこなっていた。
それを静かに見つめるロイとエドワード。
「エドっ!!」
「兄さん!!」
満面の笑顔のに、優しい眼差しのアルフォンスから、呼ばれるエドワード。
「・・・モテモテだな、鋼の」
「―――・・・うらやましいか?」
ロイの言葉に、エドワードは、ニヤリと、意地悪な笑みを見せる。
「・・・まぁな」
苦笑い混じりで、ロイはそう答えてみせた。
そうして、東方司令部を後にするべく、ロイとホークアイに三人は、心から感謝をし、礼を述べて退室しようかと踵を返した、その時。
いつもの軽いノリでロイが、あることを口にした。
「で良かったかな?元の姿に戻ったら、私と食事でもどうかな?」
そのロイが言い終わった瞬間。
ガチャッ。
とホークアイが、銃口を向け
「大佐・・・お戯れもその辺にして下さい」
パァン!!
の姿のエドワードは、格好だけだが、睨みながら両の手を思い切り合わせた。
「・・・」
「えっ?・・・こう?」
パァン!との方も両手を合わせる。
「―――・・・すまなかった」
その三人の圧力に、負けたロイは、直ぐに降参のポーズをとってみせた。
それは、これから新たに始まる旅立ちの前日の出来事・・・。
メッセージ:此処まで読んで下さってありがとうございました。
これからも連載夢も、頑張っていくのでどうぞ、宜しくお願い致します。
2005.1.19.ゆうき