アンバランス −NO.4 東方司令部・訪問 1−
それから、暗い夜が明け、まだ太陽が東から少し出てくる時間帯。
エドワードと、、そして弟のアルフォンスは、早々に、泊まっていたホテルを後にし、現在地から少し離れているイーストシティの東方司令部へと足を運んだ。
その途中、の姿のエドワードは、必死に欠伸を噛み殺していたが、エドワードの姿のは我慢出来ずに、何回も大欠伸をしていた。
『もう少し、ゆっくり行こうか』
アルフォンスはこう訊ねたが、エドワードとは声を揃えて
『大丈夫!』
と答えた。
そんな2人を見ていて、アルフォンスは、とエドワードは結構、似てるのかもしれない・・・
そう思わずにはいられなかったのも、また事実で。
そうなのだ、何故、司令部に行くことになったかと云うと
『東方司令部のロイ・マスタング大佐や、ホークアイ中尉らにこれまでのことを説明すれば、何か助言を聞ける・少なからず協力をしてくれるかもしれない』
と、アルフォンスが提案したからである。
その意見に、エドワード(中身は)は賛成したが、(中身はエドワード)は、渋ッ面をして、口を噤んでしまうのだった。
その沈黙は、"オレは嫌だ" 反対を意味しているように思われた。
しかし、アルフォンスの懸命な説得を受け、仕方なしに東方司令部行きに同意したのであった。
同意した、きっかけはアルフォンスのこの一言。
『のこと、どう想ってるの?・・・大切なんでしょ?』
突然のことに暫らく、呆然としてしまうエドワード。
勿論、返事は"YES"だ。
その答えを聞いて、アルフォンスは安心する。
そうして、太陽が完全に見える位置に移った頃。3人は、東方司令部に到着した。
「うわぁ。此処が、噂の東方司令部かぁ〜」
軍旗が下がり、立派な建物を目の前に、は口を半開きにして驚いてしまう。
「あぁ、そうだ」
まだ、表情が硬いまま、エドワードは嫌そうに呟く。
"何だかんだ云って、とボクには、どんな時であろうと返事をちゃんと返してくれるんだよね、兄さんって"
と思い、アルフォンスから自然に笑みがこぼれる。
「―――っと、、兄さん。入る前に注意してほしいことがあるんだけど・・・」
「・・・分かってるって、アル。オレは黙っていればいいんだろ?」
「私は、エドになるって・・・ことだよね?」
一応、確認をと思い、アルフォンスは口を開くが、エドワードとは言いたいことを分かっていたらしく、そう答えた。
「うん」
一回、軽く頷くアルフォンス。
「んじゃっ、行きますかっ」
こう言って、先陣を切ったのは、他でもないの姿のエドワード。
「あっ、ちょっと!ダメだよ、兄さん!!が先じゃないと怪しまれるじゃないか!?」
「・・・あっ」
自分の姿がになっていることを、一時的に忘れてしまっていたらしく、エドワードはアルフォンスの呼び声に、ハッとし立ち止まる。
「じゃあ、・・・」
"頼むよ"そう意味も込めて、エドワードは数歩後のを振り返った。
「「?」」
は、その場で両目を閉じて、じっとしていた。
そして、深呼吸を行なう。
の行動に不思議を感じて、アルフォンスとエドワードは声が重なる。
暫らくして、目を静かに開く・・・それから、気合いを入れるかのように、両頬を軽くではあるが、叩く。
「・・・分かってる。それじゃあ、行くよっ」
「あっ、うんっ」
「あぁ・・・」
凛としたいつもの金色の瞳が、まるで本物の兄のような、そんな感じを受けてしまったアルフォンス。
エドワードの方は、自分をもう1人見ているような感覚になる。
その数十分後。3人は司令室へと続く、廊下を歩いていた。
「―――それにしても、。今さっきは、凄かったね」
回りに人がいないことを確認すると、アルフォンスは、自分の前を堂々と歩いているに、囁くようにそう言った。
「・・・そうかな?」
「うんっ。何か本当の兄さんみたいだったよっ」
何処か嬉しそうな雰囲気のアルフォンス。
此処に入って、真っ先に顔を合わせたのは、くわえタバコが印象的なジャン・ハボック少尉。
少し、心配と不安を抱きながら、の行動を見守っていたのだが、そんな不安や心配を他所に、いつものエドワードが話している口調で、ハボック少尉と軽く雑談をしている。
それから、他の勤務している者達に
『相変わらず、小さいな〜』と言われ、『だぁれが、ミジンコドチビかっ!!』
と怒鳴る様は、誰が見ても本物の、いつものエドワードと変わりなく。
これには、エドワード本人も驚いてしまう。
「ありがとっ、アル」
あまり、ボリュームを上げず静かに、笑顔をつくってアルフォンスを振り返る。
一方の、エドワードは俯き黙っている。
ただ黙っているというのも辛いのであって。
は、エドワードから、不機嫌上昇中のオーラが見えるような気がした。
「えっ、えっと・・・エド」
そんな様子のエドワードが、気になりは立ち止まると声をかけた。
「・・・何だ?」
少し、間をおいてエドワードが顔を上げる。
「がっ、我慢してるでしょ?ごめんね、エド」
戸惑いながら、一瞬合った視線を反らし、今度はが力なく俯いてしまった。
「―――・・・我慢してることは確かだな」
「兄さんっ!」
エドワードのはっきりした物言いに、アルフォンスは咎めるように声を出す。
「うっ・・・ごめん」
エドワードとしても、が悪くないのは解っている。
謝る理由なんかはないのにも関わらず。からは、自然と謝罪の言葉が出てきてしまう。
「でも、そんなこと・・・お前が謝ることじゃない」
一息ついてそう言うと、俯いてしまっているの(正しくは自分のだが)頭をポンポンッと優しく叩きながら、エドワードは、言葉を繋げる。
「・・・本当はさ、すごく嬉しかったんだぜ?だって、お前が―――・・・」
ゆっくりと、が顔を上げると、柔らかな視線とぶつかる。
そして、微笑む。
まるで、自分達が反対になっていることを忘れてくれるような優しい微笑みで。
「お前が、そこまでオレになりきれるのは、オレを見ていてくれたからだろ?」
「エド・・・」
あやおく、涙が溢れそうになりながら、は口を開く。
「オレと言う人間を、よく見てくれていたからだ」
そう言って、エドワードは静かにとの距離をおくように、その場から少し離れる。
「・・・兄さん、」
アルフォンスが、静かに声をかける。
「あぁ、わかってるよ」
と言った、エドワードからは、いつの間にか先ほどのオーラは抜けているようだった。
「うん、ごめんっ。ありがとう、エド」
も笑顔で答える。
「―――・・・じゃあ、行こう!!」
いつもの元気を取り戻したは、足を進めていく。
そのすぐ後を、アルフォンスとエドワードは付いて行くようなかたちで歩く。
行く先は――――・・・東方司令部・司令室。
メッセージ:此処まで読んで下さってありがとうございました。
これからも連載夢も、頑張っていくのでどうぞ、宜しくお願い致します。
2004.11.21.ゆうき