アンバランス  NO,3.5 もう1つの課題



 一通り、テスト錬成と組み手を行なった、とアルフォンス。

錬成については、みっちりエドワードから話を聞かされ、エドワードの身体ではあるが、中身がのため、動きがいつものように切れがないことを感じたアルフォンスは気を遣い、フォローや、加減をする。

それを、傍らで静かに見つめているエドワード。

当の本人は、やりたくて仕方がないのだが、今の身体は・・・のものだ。

無理にでも、組み手などを行なえば、本人にも、そしてこの身体にも傷が付いてしまうだろう。

此処は、自分の心を押し留めて・・・堪えなければならない。

そう、エドワードは思い、胸から込み上げてくるモノを重い息に代えて外へ吐き出した。

「ふーっ。疲れた〜」

額から、流れる汗を拭ってが声を出した。

ホテルを出る前に、エドワードに三つ編みに縛って貰った髪が、もう解けそうになっている。

実は、は不器用なため、金色のサラサラながれる髪に、悪戦苦闘してしまっていたのだった。

その様子を見かねて、エドワードがすっと後ろに回って、綺麗な三つ編みに纏めてくれたのであった。

傍から見れば、少女が、少年の髪を上手に結んで貰っているように見えるが・・・

本人達は今、反対になっているため、正確にはがエドワードに髪を結って貰っている、と云った方が正しいのかもしれない。

今度、エドに三つ編みの仕方、ちゃんと教えて貰わないとなぁ・・・と、は心の中で思った。

「お疲れ様。・・・組み手も大丈夫のようだね」

"はい"と言って、アルフォンスは予め、用意しておいたタオルをに手渡す。

「あっ、ありがとう」

そっと、アルフォンスの手からタオルを受け取り、額の汗を拭き取った。

「―――ったく。そんくらいで疲れるようじゃダメだな」

そんな、二人のやり取りが気に入らなかったのか、単に組み手などで、身体を動かせられなかったからなのか。

それとも、両方なのかは定かではないが、エドワードは何かに苛立ちながら息を吐いた。

「そっ、そんなこと言ったって・・・身体はエドのものだから良いけど、私が言っているのは・・・」
「そうだよ、兄さん。は、身体が疲れてるんじゃない・・・心が、精神が疲れたんだよ」

アルフォンスは、を気落ちさせないように、フォローをするように、エドワードにそう言った。

出来るのならば、どちら共、両方に付くことが望ましい、だが、残念なことにアルフォンスの身体も1つなのだ。

そのため、どちらか片一方だけと、そうなってしまう。

エドワードも、そして、にも傷ついて欲しくはない・・・大切な存在であるのは確かで。

「わかってる。・・・わかってるさ」

悔しさのあまり、握った拳が小刻みに震える。

そう、決してに八つ当たりしている訳では、ないのだが何かが胸から込み上げてくるような、そんな錯覚をエドワードは感じた。

「エド・・・」
「兄さん・・・」

と、アルフォンスが心配そうな表情をする。

自分の身体でも無力だと云うのに、ただ、見ていることしか出来ないの立場にたって・・・

改めて、自分の不甲斐無さを知ってしまう。

いつも、どんな時でも笑顔で励ましてくれているは、どんな気持ちなのだろうか。

今の自分と同じ気持ちなのだろうか。

それとも・・・。いや、同じ気持ちだとそう思いたい。

それは、を大切に感じるからこそ、余計にそう思ってしまうのだった。

「ねぇ、二人共。そろそろ、お昼の時間だし・・・何処かに食べに行かない?」

何時もの、の元気で明るい声が、エドワードとアルフォンスの耳に届く。

「うん、そうだね。そろそろだもんね」

の意見に、軽く頷くと、そう、アルフォンスは答えた。

「・・・そうだな。じゃっ、美味いもんでも食いに行くか!」

エドワードも、明るく返事をする。

声は、自分のモノだが、その時のエドワードには、何時もの声に聞こえたのだった。

そして、3人は雑木林を抜けようと、足を速める・・・と、とエドワードの後方を歩いていた、アルフォンスは、あることに気付いたらしく足を止めると、声を上げた。

「・・・あっ!!」
「?どうしたの?」

は、不思議そうな顔をして、立ち止まっているアルフォンスに目を向けた。

「どうしたんだよ?」

エドワードも、に続いて振り返る。

「ねぇ、兄さん、。ボク、思ったんだけどさ」
「?」
「どうした?」

小首を傾げて、アルフォンスを見つける

エドワードは静かに次の言葉を待つ。

「兄さんは、になっていて、は兄さんになっているワケだろ?」
「うん、そうだよ」

アルフォンスの言葉に、しっかり頷く

「―――・・・まぁな」

エドワードは、そう一言だけ答えた。

「―――ってことは、いつも兄さんが言われてる"小さい"って言葉・・・」
「だから、小さいって、言うなってば!!」

いくら自分の弟でも、流石に頭にきたらしく、エドワードは少しムッとして言い返す。

「兄さんが怒ったりしたら、ダメだろ?が怒らないと、変に思われるじゃないか」

"今、兄さんはで、は兄さんなんだから"と、アルフォンスはもう1度、先刻言った言葉を付け加える。

「「あっ・・・」」

アルフォンスの発言に、とエドワードの二人は、声を重ね、顔を見合わせる。

「だから、。"小さい"と言う言葉に対して、敏感になって、何時もの兄さんのように怒らないと」

"他の人達は、良いけど・・・軍の人達には変だと思われるからね"

静かな、それでいて柔らかな物言いで、アルフォンスはに説明する。

「えっ。でっ、でも・・・」

"小さい"発言に、怒れと言われても、どうやってエドワードのように怒ればいいものか・・・は戸惑ってしまう。

「じゃあ、お昼を食べ終わってから、なりきる演技も兼ねて、その特訓もしないとね」

『今すぐに』と言わないのが、アルフォンスの優しいところだ。

「・・・あっ、うん」
「―――・・・あぁ、そうだな」

少し、間をおいてエドワードはそう同意した。

その後、日が暮れて夜になり、辺りが暗くなるまで、ホテルの裏手にある雑木林にエドワードの姿であるの声と、反応しなくてもいいはずの、の姿のエドワードの声が交互に響いていたのは言うまでもない。

 

一言あとがき・・・まだ、ぎこちなさがあって、何だかややこしいですよね;すいません。
ギャグめにしようかと思っていあたのですが・・・微妙ですね。
ほのぼのになってしまっているような気がするんですが・・・(汗)
一応、間章なので、NO,3.5にさせて頂きました。次回は本編に戻ります。
こんなモノでも、御感想などありましたらBBSかメールフォームにいただけると、とても嬉しいです。
                                  2004.7.5.ゆうき