アナログメディア関連 アナログ音源再生計画
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アナログシングル盤B面の悲哀

この記事はPart1「レコード」・特集6「シングル盤のCD-R化」についての補足内容です。
メディア年表」からもこのページにリンクしています。



録音・記録メディアがアナログディスクからCDに代わった事は劇的な変化があったが、大きな特徴のひとつにA面B面という区分が無くなった事があります。

アナログシングルのB面は明らかに「差別」されていた。LPではA面B面という呼称が一般的だったがシングルB面は「裏面」という呼ばれ方もされた。A面は表面=華やかでヒットが出ればもてはやされるが、その曲のB面がどんな曲かは知らない者の方が圧倒的に多いというのが現実です。大体自分の持っている数少ないシングル盤のB面のタイトルですらほとんど覚えていない。

ろくに再生もしていない割には、どういう訳かスクラッチノイズがひどい。よく聴くA面はクリーナーでよく手入れするのにB面なんか指紋がついたりしても平気。いつもターンテーブル側と向き合ってるので埃やゴミが付着して傷んでいるのかも知れない。売る側も聴く側もB面の扱いは「まぁ、ど〜でもいい。片面だけプレスしてくれれば安くなるのに」という程度のモノでした。

国内で過去最大のシングルヒット「およげ!たいやきくん」のB面の作者なぎらけんいち*1は「印税でもらっておけば大金持ちだった」という話題で結構お金を稼いでるみたいですが(笑)もし印税が入れば入ったでB面の作者は「あいつは才能も無いのにA面のヒットで食っている」と揶揄される程日陰の存在です。

ところが最初B面として発売した曲が人気になり結果的に大ヒットというパターンも結構あった。そうなるとレコード会社は急遽AB面をひっくり返す(ジャケットの曲名を大きくしてラベルを貼り替える)という姑息な手段で売り出す。となると最初のA面は逆転してB面へ「格下げ」。「最初のA面」の立場はどうなるんじゃぁ〜。。。

そんな立場の代表例がGAROのシングル盤とグループそのものでした。
最初GAROは和製CS&N*2的な存在でした。3人の美しいハーモニーもさる事ながらCSNばりに「マーチンD45」という日本で当時3台?しかなかったギターの演奏がフォークファンの間で話題になったものです。「GAROみたいにD45でカッコヨク弾きたいよなぁ」と羨望の目で見られ、GARO風なコピーバンドもプロ・アマ問わずたくさん結成されました。

最初のA面は格下げで文字も小さくなった(-_-;)

メジャーではないが、すでに「たんぽぽ」などでフォークファンには十分実力を知られる存在でしたが1972年に出した「美しすぎて」という曲は傑作で彼らのハーモニーを遺憾なく発揮した美しいメロディーの作品でした。私は大変気に入ってレコード屋さんでお金を出して買いました。(その後シングル盤はパチンコ屋さんで取る以外に買わなかった(^^;)その時最初B面だった「学生街の喫茶店」は『なんかGAROにしては暗い曲』程度にしか思ってませんでした。

その後その「最初B面」の大ヒットで「フォークアイドルグループ」としてメジャーな存在になった事は古い人間なら(^^;誰もが知っての通り。。。
しかし非常に残念な事はメジャーになって以後ヒットは出したかも知れませんがTVでの露出度が高くなるにつれ、GAROらしさが失われ単なる「アイドルグループ」として商品化、消耗品化され傑作という程の作品はこれ以後出せなかった事です。

同時期のかぐや姫*3、長い下積みの後メジャーになったアリス*4と同等かそれ以上の実力と人気がありながら解散後メンバーの自殺で最近はやりの「再結成」も叶わなくなりました。「元B面」の大ヒットにより「懐かしのフォーク集」などのCDコレクションタイトルには必ず入る1曲を残してGAROは消滅しました。
 B面のヒットというのはレコード会社すら予見しない事なので、これこそ「大衆の支持」を得た曲なのかも知れませんが、大ヒットにより資本の論理に翻弄されたこのグループの悲哀を感じずにはいられません。

上記の文中敬省略
*1:フォークシンガー、タレント。代表作「悲惨な戦い」(NHK放送禁止歌)
*2:1960〜70年代の米スーパーグループ。後にニールヤングが加入してCSN&Yに。アルバム「デジャヴ」は古典的名盤。
*3*4:いずれもGAROと同じ男性3人のグループ。説明の必要は無いと思う。

1999年の事。40代になってCDデビューした知人のK氏をリーダーとする3人のフォーク&ポップスグループTOOTH PICKのチャリティー・ジョイント・コンサートにお誘いをもらって出掛けました。(一応私は地元スポンサーになっていますので(^^;)。ジョイントのゲストは元かぐや姫の山田パンダさんでした。
 彼ら3人が最初に歌った曲が「美しすぎて」でした。そのコンサートでパンダさんの歌ったかぐや姫の曲は観客の誰しも知っていたと思うがGAROのこの名曲はいったいどれだけの者が覚えていただろうか?
 同世代には「学生街の喫茶店」は確かに人気のある曲でしたが、そんな経緯から私はあまり好きになれなかった。TOOTH PICKのメンバーが「元A面」を最初に歌った事に彼らのセンスを感じた次第です。(ローカルな話題でした(^^;)



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