音源メディアの変遷 


ゆうせん〜魅惑の440chの世界

アナログ音源再生計画


音楽ファンであれば「ゆうせん」は御存知の方が多いはず。いやむしろパチンコファンなら一日中チンジャラの音とそれに負けない大音量のヒット曲に辟易しながらも耳にしている(^^;

「有線放送」は広義にはケーブルでセンターから各世帯にテレビ映像や音楽を配信する局の事で各地域のケーブルテレビ局も含みますが狭義に、あるいはひらがなで「ゆうせん」という場合は「大阪ゆうせん*」(現:有線ブロードネットワークス、以下ゆうせん)をさします。音楽を配信する有線は各地にありますが規模からいって「ゆうせん」が今も昔も最大手です。

*持っているパンフレットでは「大阪有線放送社」「ゆうせん」と2つの会社が併記されています。


管理人は1999年まで数年間仕事場にゆうせんを引いていましたので、この頁では音源メディアとしてゆうせんによる音楽配信の話題について取り上げてみました。
※メディア年表では自分の聞いていた時代として1990年代に分類してあるのでご了承下さい。

ゆうせん放送の導入
学生〜20代くらいまで、管理人は「ゆうせん」は誤解した認識しか持っていませんでした。当時の接し方は最初に書いたようにパチンコ店に大音量で流されるヒット曲、あるいはスナックで聞きたい曲があると電話して流してくれるリクエスト受付センターといった認識でした。当時カラオケは未だ黎明期で、かなり高級な店にしか無かったので、普通のスナックや飲み屋では有線放送が主流でした。

物販店でもゆうせんは流れていますが5チャンネル程度の専用の切替器を目にしていたので400チャネル以上あるとは全く知らなかったのです。音質もせいぜいFM放送並みでモノラルだとばかり思っていました(昔はモノラルだったのかも知れませんが)

そんな程度の知識しか無かった自分が仕事場に入れてみようと思ったのは妹が結婚してCDをごっそり持っていったからでした(^^; それまで和洋のポップスやJAZZを中心にCDはほとんど妹が買っており、私はそれを勝手に借用して聞いていたので、彼女が嫁に行ってからは音源が激減してしまいました(T_T)
 女房はそれほどCDコレクションは無く、ジャンルも好みが若干違うので、聞きたいものは少なかった。しばらくの間ラジオでAM・FMを流していましたが安物ラジカセで音も悪く物足りなかった。

そんなおり、どこかでもらったゆうせんのリーフレットに440チャンネルの音楽番組とあり、興味をそそられたのでした。番組表をみると和洋のポップスからJAZZ、クラシックまで細かくジャンル分けされた構成。しかも懐かしい70年代フォークや60年代のグループサウンズ、さらにビートルズ・プレスリーの専用チャンネルまである。「これだけ音源があればCDもカセットも、FMも必要ないなぁ」と思った。

問題は金額でした。初期費用の他に月6000円の料金は高いと思った。新譜CDが2枚買える金額である。ゆうせんは、あくまで放送だからそのまま流れていってしまう。同じ金額でもCDなら後々まで残って繰り返し再生できる、何年も経つとその差はバカにできないなぁ・・・などとセコイ計算をしたものでした(^^;

最終的に判断したのは、当時次男が生まれたばかりで長男も小さかったので、子供向けの音楽や昔話のチャンネルを録音して聴かせたいという事でした。

ケーブルを引き込む工事は2時間もかからなかったと思いました。3人で来て外壁に穴を開けず、サッシの間をフラットケーブルを上手く這わせて全く目立たないよう配線は完了した。実は後で聞いたのですが、当時のゆうせんは電力会社・NTTの電柱を勝手に使っていて結構トラブルがあったそうです。同じ有線でも地元のケーブルテレビ局は使用料を払っていたがゆうせんは無断(?)で使っていたそうです。利用者がトラブルに巻き込まれる事はありませんでしたが。
注:現在は社名も変わって使用料は電力・電話会社に払っているそうです。


利用方法はいたって簡単。取り付けられたチューナの出力(録音端子)をアンプの入力端子に繋いで、テレビ同様のリモコンが付属してくるので、あとはチャンネルを選ぶだけです。チャンネルはA〜Kのアルファベットと1〜40までの数字で選択するようになっており配付される番組表で選びます。
 普通のFMチューナの接続と同じ要領ですからテープデッキで録音できます。
左画像がゆうせんから支給されるチューナ。
マルチ440チャンネルの魅力
ゆうせんではリクエストチャンネルがメインの番組になっており各地区の支店でリクエストを中心に独自の音楽番組を配信し、そのリクエスト回数によりセンターが集計したものを「週刊ベスト」として別チャンネルで放送しています。(現在では別にオリコンチャートもあるようです)

音質についてはアナログ回線ながら申し分ありませんでした。当時ゆうせんから録ったカセットで周波数を測定してみても充分高域まで伸びており、FMとは比較にならない良音質でした。

さて番組の内容ですが、440チャンネルあると逆にどれを聞こうか最初は迷いました。

ゆうせんに加入すると左のような番組表が配付されます。

考えられるあらゆる音楽・音源を聞くことができるといって過言ではありません。もの珍しさで最初はほとんど全部の番組をとりあえず聞いてみました。

 大雑把にいうと、音楽だけでもポップス・JAZZ・クラシックその他のジャンルだけでなく業務用のBGM用があり、電波放送も地元ローカルのAM・FMからテレビの副音声まであります。夜、ナイター中継などを聞く場合はフェージングも無く実に鮮明に聞くことができました。

特別なチャンネルとしては語学講座・宅建講座といった学習向け、前述の子供むけ番組、詩吟・長唄から浪曲・漫才まで日本の伝統芸能番組も多彩でした。文学の朗読やお経もあります。

中でも誰が聞くの?とか少し変わった番組を取り上げて見ると・・・
[アリバイ]内容は当時「パチンコ・麻雀」「路上の電話ボックス」「喫茶店・スナック」と分かれており、それらしき雑踏、つまり麻雀なら洗パイのジャラジャラいう音が聞こえるのですが誰が何のために、どうやってアリバイを作るために利用するのかさっぱりわかりませんでした(^^;
[心音]子供向のジャンルにあります。一日中「どくん、どくん」と心音が流れるだけです(^^;
[大自然]虫やせみ・カエルの鳴き声が聞かれます。何のことはない、昔のマイク片手の生録で、先ず身近な存在として録ったような音です。当時は自宅近辺はやかましい程セミが鳴いてました。わざわざ放送で聞きたく無い(-_-;)

[羊の数]なんといっても最高なのがこの番組。眠れないあなたのために、美声のやや低音の男声がゆっくり「羊が1匹、羊が2匹・・・」と放送します。この番組のスゴイのはこの数が延々と続く事です。「羊が500匹、羊が501匹・・・」そして「羊が3333匹、羊が3334匹・・・」まで続いたかは、もう忘れました(^^; 難点?はこのチャンネルにした時点で、羊の数が何匹になっているかわからない事です。偶然1匹目から聞けるの日は安眠できるだろうが、大方は大量の羊を想像して不眠になることでしょう(爆)
※1頭ではなく1匹と言っていた気がするが記憶違いであればm(_ _)mです。

音楽以外のサウンドで一番良く聴いたのは波の音です。真夏に海へも行けないで仕事場でこもっているいる時、せめて気分だけでも浜辺のサウンドをという感じで流していましたが波の音というのは、規則正しいようで少しずつズレがあり本当に心が安らぎます。
 その独特のリズム感覚は時として音楽以上のものがあり、ゆうせんを止めてしまった現在でも、波の音はCDを買って夏になると楽しんでいます。どういうわけか寒い時期に聞きたくはならないのですが(^^;

マルチ440チャンネルの現実
これだけ多くのチャンネルが音楽や音源を発信しているのに、1年も聴くとマンネリになってきた。先ずメインのリクエストだが、自分が年を重ねて40代になり段々とヒットポップスについていけなくなった事。次々とヒット曲が流れてきて、それが雑音のように感じられ逆に仕事に集中できなくなることもしばしばだった。
 当時は女房だけでなくパートの女性社員も事務所で仕事をしていたので、選曲の好みは女性陣に委ねられていた部分も多かった。(これが職場・仕事場でのつらいところ。自分の好みだけを優先できない)

私自身は仕事場で流す曲なのでイージーリスニング的に聴けるインストルメンタル、JAZZ・クラシックなどの番組を良くかけていたのですが、毎回聴いているうちにこれらのチャンネルは、月1回も更新しない場合があることに気付いた。結局同じ曲の繰り返して飽きてしまう。
 よく聞くと常時新しい音楽を提供するのはリクエスト関連の番組だけで、あとのほとんどのチャンネルは同じ曲を毎日か週単位、月単位で繰り返し流しているのにすぎないとわかった。チャンネルを変えても以前聞いたことのある曲が流れてくる。

いくらジャンル分けされていても聴きたくも無い曲が延々と流れるとBGMとしてもあまり面白く無かった。やはり、手持ちのCD・カセットのように「自分の好きな音楽だけ」を再生するというわけにはいかないのでした。

結局1999年、母屋の新築の際、電線の地中化工事があって有線のケーブルは切断され再配線の必要があるというのを機に止めてしまいました。それとほぼ同時期からアナログ音源のデジタル化、CD-R化を始めるようになったのは何とも皮肉な事です。

ゆうせんの録音テープはカセットが数本しか残っていません。「いつでも聞ける」と思い、あまり録音はしていなかったからです。その間に買ったCDはごく僅かで、家内が子供のために録った日本昔ばなしのカセットも、今となっては誰も聞かなくなった(-_-;)

このような放送こそ、現在では「流して聞く」というより「録音する」という目的で、ハードディスクにため込んでデジタル化すれば楽しみも増えるのでは思います。
 フトコロに余裕のある方はFMエアチェックのハードディスク録音より高音質でコレクションが増えるのは確実でしょう。
 現在では旧ゆうせんより低価格で配信している有線局があるし衛星チャンネルも音楽番組を扱っているので選択肢は大幅に増えています。自分の好みと料金に合わせて、こうした有料放送を選んで聞くのも面白いと思いますが。。。

(C)Fukutaro 2003.7



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