テキスト ボックス: 私の句帳(NHK俳句より) (一)
一・年玉を貰ひし頃は母厳し
二・補聴器の世界に入りて初笑
三・夏めきて妻の始めるダイエット
四・口笛のしばしとぎれて夏木立
五・逃げる子のゆくてさえぎる焚き火かな
六・一握りほどの一村どんと炊く
七・諍ひは春雷さりてからのこと
八・新緑やそれぞれ白き杖をもち
九・夜長人回転椅子に身を任す
十・かげろふや街道脇の無縁墓
十一・真夜中のひな人形のひとり言
十二・襟足の剃りあと青き日傘かな
十三・一病のとれて身軽き踊りかな
十四・ささやきとなる風音の枯並木
十五・父の忌の近道雪に埋もりけり
十六・しんがりのポンプ車去りて野焼果つ
十七・薫風や礼に始まり礼に散る
十八・退院の髪もてあます秋の川
十九・下駄履きの恩師加はる落葉焚き
二十・耳馴れし頃に終わりぬ猫の恋
二十一・諍ひし妻の差し出す新茶かな
二十二・下り来し道ながながと夏霞
二十三・腰に棒差して少年枯野ゆく
二十四・急流の渦より出づる紅葉かな
二十五・つばくらめ描きたる弧をくぐりけり
二十六・老僧が裾をはしょりて踊りの輪
二十七・稲妻や波なき海の通ひ船
二十八・剪りとりて一枝の露浴びにけり
二十九・出迎への母娘しぐるる南口
三十・初雪に音なき音のあることも
三十一・冬凪の一番フェリー独り旅
三十三・諍ひのその一言やパナマ帽
三十四・対岸に釣り人らしや夏霞
三十五・誂への鍔を長めに夏帽子
三十六・托鉢を向ふに回し社会鍋
三十七・校庭の風力計や青嵐
三十八・西瓜割る児を迷わせる拍手かな
三十九・初鏡きのふの吾に別れけり
四十・  富士山を一枚残す古暦
  四十一・冬霞沖より戻る大漁旗
  四十二・のけぞりて仄かな雪に触れてみる
  四十三・どの田にも見渡すかぎり春の水
  四十四・灯取虫いつも不在の駐在所
  四十五・いっこくの長老会議寒の入
  四十六・春光をめがねに受けてバスガイド
  四十七・これよりは立ち入り禁止百千鳥
  四十八・仏壇に向ひて秋を惜しみけり
四十九・お見合いの結果に触れず薬喰
  五十・ よちよちの両手に余す柏餅
五十一・初富士や朴念仁の願ひ事
五十二・わけありの留年組も卒業す
五十三・大声の魚河岸に夏来りけり
五十四・蜘蛛の囲にまづかかりけりバスガイド
五十五・吊り橋をいっきに渡る谷紅葉
五十六・かざす手に狼親子雪の中
五十七・富士山に姉さん被り茶摘唄
五十八・アジ釣りの富士一人占め駿河湾
五十九・リフォームの済みし園舎やこどもの日
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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