<深いリラクセーションのために>

波呼吸法(なみ・こきゅうほう)

第2回 2002.4.2


<波呼吸法 PIT(ピット)>

今度は、折返点を可能な限り短くしてみます。理想的には折返点を0秒にするというか、時間的長さのない「点」にするつもりで行ないます。

実際には「今、この瞬間に折り返したぞ」という明らかな感覚を発見するようにします。「すは点」と「はす点」で「ピッと」折り返すから、「波呼吸法 PIT(ピット)」と呼びます。

4秒吸って、4秒吐いて・・・の繰り返し。6秒吸って、6秒吐いて・・・の繰り返し。8秒吸って、8秒吐いて・・・の繰り返しを、なめらかに行なってください。

吸い続ける間および吐き続ける間は、空気の流量および息の速度が一定になるよう心がけてください。この「空気の流量および息の速度が一定」という条件を厳密にすればするほど、PIT は難しくなります。

「吸い終わり」から「吐き始め」への転換、「吐き終わり」から「吸い始め」への転換を、全身一斉には切り替えられないことに気付かれるはずです。

これは「折返点を身体のどこでとらえるか」の問題と考えることもできます。喉を折り返しの中心とするのか、肺なのか、それとも腹なのか。

PIT は、波呼吸法のクライマックスです。まさに、寄せては返す波のように、ゆったりと、なめらかに、そして正確に、折返点を設けるようにしてください。

<喉を閉じないこと>

「FWAT = 折返点延長」では、喉を閉じないことに注意しました。「PIT = 折返点短縮」の場合も、喉は完全に開けておいてください。 

「空気の流量および息の速度を一定に」保ったまま、折返点を短く明確にしようとすると、一瞬喉を閉じてしまいがちです。喉を閉じないと「ここが折返点だ」というきまりがつかないからです。でも、これは禁物。

また折返点をわかりやすくするために、呼吸の間じゅうわずかに喉をしぼっている場合があるかもしれません。まったく喉をしぼらない状態で、折返点短縮を行うのが理想ですが、とりあえずは、自身の「喉のしぼり」状態に気付くことが必要です。

<チョーク度を観察する>

ニーノで呼吸しながら、喉の状態を観察します。喉が完全に開いてなめらかに空気が出入りしている状態をノーチョーク(No Choke)と呼びます。
喉を完全に閉じて空気の出入りができない状態、これがオールチョーク(All Choke)です。その中間に3段階の「チョーク度」を想定し、軽い方から順にライトチョーク、ミドルチョーク、ヘビーチョークと呼びます。つまり全部で5段階のチョーク度を想定するわけです。

  1. ノーチョーク (チョーク度 0%)
  2. ライトチョーク(チョーク度 25%)
  3. ミドルチョーク(チョーク度 50%)
  4. ヘビーチョーク(チョーク度 75%)
  5. オールチョーク(チョーク度 100%)

FWAT も PIT も、ノーチョークで行なうことで、そのリラクセーション効果がぐっと高まります。まずは、ご自身のチョーク度を観察してみてください。

<2種類のリラックス>

喉を開放して FWAT を繰り返していると、心身がどんどんほぐれて、ゆったりした気分になられることでしょう。たとえば就寝前に、布団の中で数回FWATをやってから眠りにつくと、おだやかな気持ちで入眠できます。

一方、喉を開放して PIT を繰り返した場合は、心身が研ぎすまされ、冴え渡ってくるのを感じられるはず。時間帯でいえば、朝向きのトレーニングかもしれません。FWAT そして PIT ー タイプの違った2つのリラックスを、しみじみと味わってみてください。

<波呼吸法の魅力>

「すぐに効果が感じられる」「道具がいらない」「どこでもできる」「簡単に取り組める」しかし「奥が深い」。これが、波呼吸法の特徴です。

特に PIT は、呼吸法の深みにはまる誘惑の扉です。PIT に取り組むことで、呼吸という運動が、非常に大きなスケールの現象であることに気付く方も多いでしょう。自己の体内に、未開発の領域がたくさんあることを発見されるはずです。

また、FWAT の折返点において、「なにか」が体内で動くのを感じた方はおられますか? 空気の出入りがないはずなのに、喉、胸、腹にかけて、あるいは首、肩、腕、手にかけて、ジワッと、ムズムズと、「なにか」が動く。

状況によって感じ方や部位は異なるかもしれませんが、体内に「なにか」の運動を感じる ー この感覚が生じてくると、FWAT のトレーニングが、がぜん面白くなります。そこは気功の世界の入口だともいえます。

波呼吸法は、生涯の友としていただける、簡便なリラクセーション・メソッドです。快適な心身のためにご活用いただければ幸いです。


<深いリラクセーションのために:波呼吸法>はこれで終わりです。