パワプロについて
├パワプロとは何か?
├パワプロシリーズ検証
└登場人物紹介


掲示板
以下の掲示板は、左フレームのBBSのBBSメニューからもいけます。
パワプロ専用掲示板
連絡用掲示板


パワプロ小説
以下の小説は、左フレームのNOVELのメニューからもいけます。
果て無き夢へ
果て無き夢へ登場人物


第三十五話   ランナウェイズVSエンジェルス 第四重奏〜勝負の瞬間は刻々と迫る〜







若奈は好投を続け、5番古木、6番衣笠を連続三振にしとめる。
いずれも、最後のボールはシンカー。
小さく曲がるシンカーが、ストライクゾーンの隅の隅に決まる。
バッターはそれを見逃し、ボールだと想うが判定は逆。
理奈の知恵と、若奈の正確なコントロールがあってこそなせる技である。





若奈はマウンドを降りるとき、後方のバックスクリーンを振り返る。
2回裏が終わって、それまでに刻まれた4つの数字はすべて0である。
そして次に各チームのオーダーを見る。
3回表は自軍からの攻撃。
自分にも打席が回ってくるイニングだ。
そして、ランナウェイズには・・・

















7 投 時雨

















の文字が光っている。
若奈:「一番最初から・・・時雨さんと勝負するのか・・・」
若奈は、不安を覚えながらベンチへと戻った。


















時雨は、汗をしっかりと拭うと、再びランナウェイズの黒い生地に白い自軍のロゴマークが入った帽子をかぶると、マウンドへと向かった。
時雨:「この回は、若奈と勝負か・・・」
順調に行けば、2アウトランナーなしで若奈との対決となる。
真剣勝負をしている時雨にとって、この上ない喜びでもあった。


















快投を続ける時雨。
7番秋原、8番清川美夢を巧みに凡退させ、秋原からは三振を奪った。
これで今日の奪三振は5。
全力勝負でやってきた成果でもある。




時雨:「こんなに早い立ち上がりで、三振5は珍しいな・・・」




ふっとおかしげに軽く笑うと、右打席に入ったライバルをしっかりと捕らえた。

















お互いにお互いをよく知っている。
高校時代。






時雨と若奈は同じ静波高校野球部だった。
最初、時雨は若奈はマネージャー志望と想っていたらしい。
だが、選手として入ってきた若奈に、いつしか好意を抱くようになり、完全にそれは恋に変わった。
だからこそ、勝ちたい。だけど・・・




そういう想いが、今までの時雨を縛ってきた。
本気になれなかった理由も、彼女の負けた姿を見たくないから。
あの日、高校最後の甲子園での試合の後が、まざまざとよみがえる。

















時雨:「若奈は・・・泣いていたんだよな・・・」

















土を持ち帰るとき、ふと若奈に目線を移すと、彼女は誰よりも大粒の涙を流し、顔をくしゃくしゃにして悔しがっていた。
彼女の本気を、不甲斐ないピッチングでだめにしてしまった自分を呪い、憎んだ。
時雨:「だからオレは、強くなりたかった・・・」
そして今は、ランナウェイズの右のエースとして、2枚看板として活躍している。
チームのために貢献し、優勝するために。
だが、その優勝の壁として、若奈のいるエンジェルスが時雨に重く立ちふさがる。
時雨:「勝って・・・決別するべきなんだ・・・」
忌々しい、呪縛から・・・


















振りかぶり、オーバースローのモーションから、一発、内角ボールゾーンへとボールを投げ込む。
若奈は、その来たボールをしっかり見ようと想った。
デットボールなら痛くない。あてにきたのなら、次の自分が投げる番でカリを返せばいい。
若奈:「(さぁ、渉!あなたは何を考えてきてるの?!)」
バットは振らなかった。
そのボールの変化を、しっかりと見極めていた。
高速スライダー・・・時雨のウィニングショット。
それが滑り込むように真ん中高めに決まり、ワンストライク・・・

















若奈はいったん打席をはずし、考える。
若奈:「あたしは、パワーがあまりないけれど・・・」
高校時代のことを思い出す。
時雨は豪快な打撃をしていた。
だが、若奈は・・・

















若奈:「あたしには、絶対のミートの自信がある!!」

















時雨:「そこなんだよな・・・」












時雨も同じようなことを想いかえしていた。
高校時代、彼女は展性的にミートをしてきた。
紅白試合でも、練習試合でも、本番でも。
パワーこそないが、的確にバットに当ててくる才能。
時雨が静波のエースだったため、若奈は2番手投手だった。
セカンドを守っていた若奈だが、打線では3番を放つ中軸打者だった。
時雨:「若奈には、高いミート力がある・・・それを忘れちゃいけねぇな・・・」
危機感を少しだけ覚える。
ロージンに触ると、白い粉は雪のように空へと溶けて行った・・・









次へ    果て無き夢へTOPへ