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果て無き夢へ
果て無き夢へ登場人物


第三十三話   ランナウェイズVSエンジェルス 第三編曲〜兄と妹の心理戦〜







軋みを上げる古木のキャッチャーミット。
清川理奈を、6球目の渾身のど真ん中ストレートで見逃し三振にしとめて見せた。
理奈:「は、速い!(緩急を使われたから・・・余計にそう感じちゃう・・・)」
2球連続でストレートを見せられた後、カーブ、シンカー、カーブと変化球で組み立てられたためであった。
遅い球種のために、時雨の140後半のストレートのノビも生きてくる。
時雨は理奈から奪った三振で、今日の奪三振を3に伸ばす。
次打者の青木の威圧感に臆することなく、溢れんばかりの闘志で、冷静にコーナーを突き空振り三振を奪いマウンドを降りた。

















時雨:「(まだ始まったばかりだ・・・絶対、勝つ!)」

















ベンチに腰掛けると、監督である戸島からアドバイスをもらう。
それに小さく頷くと、タオルで汗を拭った。
視線を、マウンドに移す。
そこには、華奢な体つきをした、自分が愛し、今は戦う場にいる女性がいた・・・

















若奈は初回、バークを三振、大橋をライトフライ、堺をサードゴロに打ち取っていた。
だが、ランナウェイズの2回裏の攻撃は、主砲の清川 仙から始まる。
清川には一発の可能性がある。
それは、彼の妹である理奈自身が一番よくわかっていた。




理奈:「(お兄ちゃんの弱点なら、一番近くで見てきたあたしがわかってる・・・けど・・・)」



今日の若奈は、弱点をついたこせこせとした投球は好まないと判断する。
何せ、今日は若奈最大のライバルと投げ合っているのだ。
その真剣勝負を、邪魔してはならない気がした。
理奈:「(初球、ストレート。どこでもいいから、全力で!!)」
若奈:「(わかった!想いっきり行くよ!!)」
サインに頷き、若奈はゆっくりと振りかぶる。
サイドスローの動作に入ると、背中からボールが出てくるような錯覚が打席の清川を襲う。
清川:「(なるほど。サイドスローの技巧派か・・・だが・・・)」
ゆっくりとクラウチングスタイルのひねりを大きくしていく清川。
若奈がボールをリリースした後、それは一気に後ろに引かれた。
まさにバネ、弾性の力。
踏み込んだ左足に全体重を乗せ、フルスイングにかかる。
清川:「(球はストレート・・・もらった!!)」
清川のバットの軌道上の計算なら、ここで芯に当たるはずだった。
そしてそれは、軽く外野を越えるであろうと自分は想っていた。

















しかし、結果は違う。

















ボールは、理奈のミットにきちんと納まっていた。

















清川:「(手元で・・・伸びた?!)」








スイングしたとき、少しだがボールが伸びた気がした。
そしてそれは案の定、理奈のミットに納まっている。





清川:「なるほど、面白い選手だな」
キャッチャーの理奈に聞こえるような声で、清川はクスリと笑って言った。
その声に、理奈も応える。
理奈:「そうよ。なめるのも、体外にしてほしいわね。今日の二人は、真剣勝負をしているの」
清川:「二人・・・誰だい?もう一人は・・・」
理奈:「見ていればわかるんじゃないの?投げるわよ・・・」
素早くその会話の中でサインを出していた理奈。
若奈は、きれいなフォームから変化球を精確にコーナーに投げ込んだ。
審判はストライクコールをあげる。高らかと。
清川:「なかなかいいコントロールを持っているんだな」
理奈:「その余裕も、次の球で終わりね」
最後のサインはあえて出さず、若奈に任せることにした。
若奈は、ふぅと息を吐き、モーションに入る。
同じタイミングで清川も、独自のクラウチングスタイルからのバネを利用するために、バットを引く。
若奈は、指先の神経に最大の力を込めて、ボールをリリースした。

















若奈:「負けたくない!渉には!」

















外角・・・だが、そこはボールゾーンだった。
清川:「これで終わりだったはずだよな・・・あいにく、ボールのようだぜ、妹よ」










理奈:「勝負というのは最後までわからない・・・おにいちゃんの口癖だよね・・・?」










まさにその言葉を言い終わったとき、ホームベース手前でボールはシンカー回転をし始め、シンカーはストライクゾーンに滑り込む。
清川は、「まずい!」といった表情で慌ててバットを出すが、完全に振り遅れ。
風だけが、ホームベースを突き抜けた。






審判:「ストライク!バッターアウト!!」






清川:「まさか自分が油断するとは・・・不覚。そして流石、オレの妹だな・・・」




理奈:「まぁ、お兄ちゃんのことだしね。最後の最後でいつも油断していたし」





ボールを若奈に投げると、理奈は「変わらないね」と笑って、バッターボックスを去る自分の兄を見送った。









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