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果て無き夢へ
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第三十二話   ランナウェイズVSエンジェルス 序曲〜本気の勝負を始めよう〜







いつもの時雨ではなかった。

















ましてや、以前のような手抜き投球の時雨でもなかった。

















そう、あの日と同じ、ノーヒットノーランを成し遂げた日と同じスタイル・・・

















キャッチャー古木のミットに突き刺さったストレートは、最速149キロをマークした。

















だが、ただの149キロではない。
そのボールの回転数、ノビ、空気抵抗の量、どれを取ってもバランスよく、強く、重いストレートだった。
ボールを受けた古木の左手掌が、少し軋みを上げる。



古木:「(いつも以上の・・・ナイスボールじゃないか・・・時雨!!)」



審判:「ストライク!!」
球場に駆けつけたランナウェイズファンがどっと沸く。
初球からまざまざと時雨の全力を見せ付けられたトップバッターの葉賀は、少し間をおいて考える。
葉賀:「(どうやら、手加減はないみたいね。そう来なくっちゃ・・・)」
だが、手も足も出ずに三球三振。
2番の朝霧も、うまいことストレートの球威に押されてピッチャーへの小フライ。
時雨はこの2人に対し、僅か4球で2アウトをとって見せた。
ハイペースで、フル回転している木更津ランナウェイズの怪童・時雨 渉。
迎える打者は、パワーのある杉浦。
彼女は、パワーだけではなく、そこそこ足も速い。
転がしても、深い場所へ飛んでいけば内野安打にされる確率も出てくる。

















4月の空は、徐々に日が長くなっているために、まだ18時を少し回った現在では明るい。
時雨はその空へ仰ぐ。
何かの力をもらうかのように。何かを力に変えるかのように。
杉浦は、左バッターボックスに入ると、足でバッターボックスを均している。
その様子を見た古木は、時雨に対して初球、今年のキャンプで覚えたカーブで様子を見ることを勧める。
だが時雨は、そのサインに対して首を横に振る。そうこうしているうち、古木の出した変化球のサインすべてに首を振った。

















時雨:「(オレは・・・)」

















時雨はサインが決まらないうちに振りかぶった。
古木:「(あのバカ!いつもいつも勝手気ままに投げられちゃ、何が来るかわからないこっちにとっては意味不なんだよ!!)」
そうこういいつつ、古木はミットを構えてみせる。
投げる場所など、時雨の自由だ。すでにボールを走らせたいコースは決まっている。

















時雨:「オレは・・・」

















体・・・そう、それも背中からボールが出てくるかのように投げ出すサイドスローから、ボールを投げ込んでいく。



若奈:「(あの人!本当に変則投法になったの・・・?)」
メールでその事実を教えられていた若奈は今まで半信半疑だった。
オーバースローで投げていた4球は、変則ではなくオーバーにフォームチェンジしたのだと想っていた。
だが、今回は違う。完璧に変則に変わったと確信した。



マウンドの時雨。
体重移動を済まし、腕をしなやかに振りぬいていく。
回転をかけられたボールは、バッターの杉浦の内角低め・・・ストライクゾーンぎりぎりあたりに向かって伸びていく。
杉浦:「(きわどいコースだけど・・・振るしかないわね・・・)」
スイングを始動する杉浦。
腰がうなり、自分に向かってきたボールを捉えるがために、バットがすっと出て行く。
だが、ボールはそのバットの機動の速さよりも、数コンマ・・・それくらいの単位よりも早く古木のキャッチャーミットに納まっていた。
古木:「ふぅ・・・(ストレートじゃなきゃ後逸ですよ、バカ野郎)」
審判は高々とストライクを宣告する。
そして、スピードガンはオーバースローから投げたときと同じ149キロをマークした。
若奈:「お・・・同じ速さ!?ウソ!!」
その後、杉浦は切れ込んでいく高速スライダーに手も足も出ずに4球で三振。
時雨は初回、2三振を奪うなど、上々の立ち上がりを見せ、マウンドからベンチへと戻っていった。
時雨:「(あそこまで言われたら・・・本気の「き」の字まで出さないと男がすがるってものでしょ・・・若奈)」
ベンチに腰掛けると、いつもは良き友達・・・そして心寄せる女性に対して厳しいにらみを送って見せる。
オレは本気だ。お前の本気も見せてみろ!・・・といわんばかりのすさまじいガンを・・・。
スパイクの紐を結びなおしていた若奈は、時雨の厳しい目線に気がついたのか、同じようにきっと真剣な表情をして見せ、マウンドへと向かった。

















若奈:「(渉・・・ようやく本気で、投げ合ってくれるのね・・・)」

















本気でぶつかり合えるうれしさと、彼を追い詰めてしまった後悔と、弱い自分には負けてはならぬ葛藤の三重奏が若奈を襲う。
しかし、理奈の「試合が終わればいつもどおりでしょ?」という優しい言葉に助けられ、平常心でマウンドに上がることができた。
1番打者、時雨のノーヒットノーラン決定のセンターライナーを捕獲した、島国、キューバからやってきた助っ人、バーク・ミーテリアが右打席に入る。
若奈は、ふぅっと息を吐いて、理奈が出したサインをしっかりと目で確認し、投球動作に入る。

















若奈:「あたしも・・・」

















しっかりと、まるで投球のお手本のように安定した軸足、振り上げられた足。
そしてそれが前に踏み込まれ、同時にサイドスローのフォームからボールが投げ出される。

















若奈:「あたしも、あなたの全力に全力で応える!!」


















得意球のスライダーが、まさに外角ぎりぎり、数ミリでもずれたらボールというきわどいストライクゾーンへと滑り込む。
審判も、慌ててストライクの判定。
若奈の武器は、精密に計算され、針穴を通すという表現がふさわしいほどの、正確なコントロール。

















若奈:「見てて、渉。あなたも本気なら、あたしも本気よ・・・!」

















内にひめたる、二人の勝負が、白熱した試合になろうとは、まだ両軍、ともに予想していなかったことである・・・

















他球場の結果



キラーズ 1−0 フェニックス 1回裏

先発 条辺(K) 虻川(F)  竹内 修吾ベンチ入り。




チェリーズ 0−0 ドルフィンズ 2回裏

先発 アルヒンテ(C) 浪野(D) 秋葉 和幸 2番センターで先発出場 1打数無安打









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