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果て無き夢へ
果て無き夢へ登場人物


第三十話   すれ違う想い







千葉県木更津市。
ここには木更津ランナウェイズのフライチャンズ球場であるファイティングスタジアム木更津がある。
収容人数5万2千人。
見ものは、試合前の相手チームの選手、監督、または球場に駆けつけたファンを巻き込んでのカラオケ大会。
子供たちによるスピードガンコンテスト。選手一同によるサイン会。
3時から5時までは、練習などは一切なしでファンサービスを重視したシステムとなっている。
また、選手が打席に入るときには、選手が選曲したアーティストの曲を数秒間かけるなど、ファンのボルテージを最高潮へと捲し上げる。
7回表の攻撃終了時の花火は200発。色鮮やかに夜空に散る。
デーゲームのときは、この花火がバックスクリーンから流れる特別映像に変わる。
土産物も充実しており、球場内には、選手たちの歩みを記した歴史館というのもある。









本日の試合









ガールエンジェルス VS 木更津ランナウェイズ


















バックスクリーンには、大きくそう描かれた文字が表示され、TVコマーシャルのようなものは一切流れていない。
雨上がり、この球場は実ににぎやかだ。



時刻は4時50分。
普通の球場ならば、選手たちが練習をしているところだが、ここは一味違って、カラオケ大会が開かれている。
今も、ランナウェイズのファンたちがステージに上がって熱唱をしている最中だ。



この発案は、時雨がしたものであって、2年ほど前に取り入れられた。
彼は根本的に、ファンと選手の交流のあり方について考えてきた。
目立ちたがりやな彼だからこそひらめく、一見無謀なアイディアも、署名運動、選手たちの希望、また相手チームの選手たちも許可してくれたことでフロントが許可をしてくれた。
夢を実現に代えてきた男。そして、そこそこの人気を時雨が誇る秘訣はそこにある。

















その時雨は、エンジェルスとランナウェイズの選手が使うロッカールームの中間で、ある人を待っていた。
反対側の通路から、こつこつと人の足音が聞こえてくる。
選手たちは全員グラウンドでカラオケ大会やサインをしている。
つまり、ここには時雨と今向かってきている人意外誰もいない状況だ。



そしてその人物・・・木ノ本 若奈は、時雨を確認すると、
若奈:「なんですか?呼び出して・・・」
と、少しぶっきらぼうに聞いた。
時雨:「別に〜。ただ、今日はどうも投げあわなくちゃいけないかもしれないって想ってさ」

















時雨は若奈が登板するときには対外手を抜いて投球してきた。
これを見かねたおじいちゃんこと戸島監督は時雨を極力エンジェルス戦からははずしてきた。

















若奈:「あの・・・」
若奈がなにやらいいたそうにして時雨に対して目線を向ける。
時雨は、「ん?」とだけ言って若奈の口から出てくる言葉を待つ。






















若奈:「手加減する人は・・・嫌いです・・・」






















つむぎだされた言葉は、若奈の本音のようなものだった。











若奈:「時雨さんは・・・渉は、いい友達で、ライバルで・・・だからこそ、渉はあたしと投げあうとき、本気でやってほしいの!」
時雨:「本気だって・・・」
若奈:「ウソ!いつもの投球じゃないじゃない!いつものスタイルじゃないじゃない!!」
時雨が逃げの言葉に走ろうとしたのを察したのか、若奈はきつく彼の胸を掴んで抗議する。
そんな見え透いたうそなら、もうわかっていること。これ以上隠されても、自分は素直に投げられない。
楽しく投げ合うことができない。
そう想ったから言った、若奈の時雨と純粋な勝負をしたいという気持ちだった。









若奈:「今日も、チェリーズのときのようなノーヒットノーランができるくらいのピッチングできてください・・・」
若奈はそういうと、掴んでいた時雨のユニフォームを離した。
若奈:「もし、手を抜いたら・・・二度と逢わないでください・・・お願いします」
くるりと時雨に背を向けて、若奈はもと来た道を戻り始めた。
時雨はただ、立ち尽くすばかりだった。


















時雨:「(本当は・・・オレは投げたくないよ・・・お前相手にゃ・・・)」
時雨は心の中でつぶやくと、ポケットの中に入れていた小さな青い箱を取り出し、中を開ける。
そこに入っていたのは、先日東京で購入した婚約指輪。
本格的に、若奈に交際を申し込もうと想って購入したものだったが・・・
























若奈:「もし、手を抜いたら・・・二度と逢わないでください・・・」
























時雨:「どうすりゃいいんだよ、オレはよ・・・」

















勝負には負けたくない。




だが、若奈とだけは戦いたくない。




いっそ、プロを辞めてしまいたい。




時雨は悩む。
愛する人の気持ちを大事にするか、それともそれを踏みにじるか・・・
気持ちを大事にしても、まだ心の中から本気に離れない。
負けたとき、若奈は本当に悔しそうに泣いてしまうから・・・
踏みにじっても、若奈は笑ってはくれない。さよならだ・・・
逃げ出したい・・・そうも想った。
だが、気がつけば試合開始10分前。
すでに先発投手の発表も終わっていて、ファンは時雨がマウンドに現れるのを待っている。
ファンの期待だけは裏切るわけには行かない・・・

















時雨:「(悪い・・・若奈・・・オレは、今回は全力でやらせてもらう・・・)」

















解けいていたスパイクの紐を結びなおし、時雨は戦いの場へと向かった。
愛する人への想いを、ロッカールームに残して・・・









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