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果て無き夢へ
果て無き夢へ登場人物


第二十五話   墓参り







川崎が見逃し三振に倒れてから数十分後・・・
球場にはゲームセットのコールが虚しく響いた。
最終スコアは4−7。フェニックスの勝利だった。
波田は苦しみながらも、キラーズ打線を抑えて今季初完投。初勝利を収めた。


対するキラーズは、ルーキー川口が7失点と炎上。
しかし、田中が後続をきっちり抑えたことはよい収穫となった・・・




















ロッカールームには、敗戦の色が漂っていた。
やはり、今回の負けは非常に悔しいものだった。
一番に悔やまれるのは、長居の2本塁打。
まざまざとパワーを見せ付けられてしまい、キラーズの選手の士気は最悪に近いものになっていた。
4回途中にマウンドを降りた川口は、ずっと下を向いてうつむいたままだった。
珂日も仲嶋も・・・大西も、川崎も小坂も工藤も・・・なんて声をかけていいのかわからない。
そして、修吾も・・・




そこへ、石原監督がやってきた。
顔は想ったよりも引きつってはいない。選手たちは、一同に起立し、監督のほうを向いた。
監督:「今日の敗戦は、非常に悔やまれる。勝って3連勝と行きたかったところだ・・・」
川口が、顔を伏せる。
そのムードを断ち切ったのは、自分の不甲斐ないピッチングだ・・・。
全責任は自分にある。そういうネガティブな思いだった。
監督:「だが、早いうちに負けてよかった。これからまた勝ちなおせばいい。シーズンはあと136試合ある。その残り試合、できるだけ勝って、優勝を狙おうではないか!!」
監督は強い口調で、選手たちに向かって語りかけるように行った。
暗い表情をしていた選手たちも、徐々に明るい顔に戻っていく。
監督は川口のもとへ歩み寄って、ぽんと肩をたたいた。


監督:「川口・・・今日の投球は、悔しかっただろ。だが、まだお前は成長段階だ。ゆっくり、時間をかけて成長して行け。お前を落とす気は全くない」


川口は、その言葉に胸打たれ、顔を上げた。
そして、こらえていた涙を少しだけ流した。
監督は、また肩を優しく叩いて、選手たち全員に向かって高らかに行った。




















監督:「みんな、次は勝つぞ!!」




















選手たちも、悔しさを紛らわすかのように、掛け声を合わせた。
そう、シーズンはまだ始まったばかり。
優勝の望みが完全に消えたわけではないのだ・・・

















修吾はシャワーを浴び終えると、携帯を使って他球場の結果を見ていた。
小田がいるランナウェイズは、安西という新人が先発したらしい。
結果は、エンジェルスに5−4と惜敗している。エンジェルスの投手は同じく新人の麻生という投手だった。
そして、今日の朝電話をかけてきた秋葉がいるドルフィンズ。
こちらはチェリーズに4−2と負けていた。
クロー・クリス、4打席連続ホームランの見出しが躍っている。
おそらく、明日の朝のニュースでもこの助っ人のパワーが大きく取り上げられるだろうことは必須だった。
日付は4月5日。
そして明日は・・・

















4月6日。
自分が愛した女性、織笠 理緒の月命日であった・・・

















ロッカーに飾っておいた、高校時代の理緒と移った記念写真を自分のバックの中にしまうと、修吾はロッカールームを出て行った。

















翌朝・・・
修吾はホテルのベッドの中から目覚めた。
秋葉からメールが入っている。


「ちゃんと来い」


短文のメールだったが、彼らしかぬ圧力がかかっているとも読んで取れた。
しかし、続きがちゃんとあった。


「和道も来る」


なるほど、小田も来るのか・・・。
修吾はそう想い、身支度をはじめた。
昨晩、ホテルについてすぐに外出許可を監督からもらった。
試合が始まる1時間前に球場に着けば、文句はない。
ホテルを出るときに、しばらくの外出をフロントに告げると、
「昨日はナイスホームランでしたが、惜しかったですね」
と、ねぎらいの言葉をかけられた。
修吾は、「どうも」とだけ言って、ホテルの自動ドアを開けた・・・

















理緒の墓は、東京と千葉の境の小高い丘の上にあった。
東京湾が眺められ、理緒が好きだったレインボーブリッジも、ここの空からなら見えるかもしれない。
すると、千葉のほうからは秋葉と小田がやってきた。
二人とも、花束を抱えてやってくる。
修吾は、「よっ」と声をかけた。
小田は、「久方ぶりだな」といい、秋葉はすっと右手を上げた。

















3人で、それぞれが用意した花を生ける。
空は曇り空。もう少しで雨が降り出しそうな天候だった。
手分けして、墓をきれいにしていく。
小田は線香の準備を、秋葉は花を丁寧に生けて、修吾は墓を磨いている。
理緒の墓をたわしでこするたびに、あの日のことがよみがえる。
それを振り払うかのように、一心不乱にきれいに磨き上げた。
小田が3等分した線香に火をつけて、右、左の器の中に入れる。
そして手を合わせ、それぞれ、理緒に対して参った。









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