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果て無き夢へ
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第二十四話  波田の執念







マウンドの波田。球数は、そろそろ100球を超えようとしているところだった。
だが、それでも完全に疲れきった表情は出さない。
この男のスタミナの強さ、チームを背負って立つエースのハートの強さ。
これを打ち砕きに行く、チームリーダーの川崎。
両者の想いはただひとつ・・・

















「自分のチームが勝利すること」

















評論家によっては、
「たかが140試合のうちの1勝」
というかもしれない。
だが、彼らにとって1勝は、優勝へ近づく大きな勇気になるのだ。
だからどうしても、この試合に勝って波に乗りたいキラーズ。
勝率を5割に戻したいフェニックス。
両者の想いは複雑に交差するのだ。

















川崎:「(負けられない・・・たとえ終盤、不利な状況でも・・・可能性が少しでもあるのなら、ひっくり返せる・・・!)」
ぎゅっとグリップを握ると、かすれた音が響いた。
マスク越しに、斉藤は川崎の動きを伺い、波田にサインを送る。
斉藤:「(もう終盤・・・そろそろ波田のスタミナも切れ始める頃とです・・・)」
5回表で竹内に予想外に粘られたことが致命的だったかもしれない。
ぽんぽんといいペースで投球をしてきた波田だが、竹内という選手に粘られたことによって、肉体的に、精神的に疲労が溜まってしまった。
斉藤:「(いやらしいことをしてくれた・・・竹内 修吾・・・)」
波田がオーバースローから振りかぶる。
若干、上げた左足が初回のときより重いのを感じた。
波田:「(くっ・・・想うように、上がらない・・・)」
蓄積されてきた疲労が、終盤になれば先発投手を襲い始める。
だが、プライド・・・それは朽ちることはない。
腕を大きくしっかりと振りぬくと、ボールは斉藤のミットに突き刺さった。
川崎は、波田が投じたストレートに驚愕したようにバットを引いた。
そう、彼のスタミナは限界だったはずなのに・・・

















川崎:「よ、予想外だ・・・」

















審判のストライクコールが起きると、ライトスタンドからどよめきが起こる。
そして電光掲示板に記された球速表示。
なんとそれは、152キロ。彼の自己最高速度を記録していたのである。
はかり間違いではない。
それは、間近で見送った川崎と、それを受け取った斉藤がわかっている。
斉藤は心の中で、いける!そう想っていた。
斉藤:「まだ死んじゃいないとよ!波田!!」
興奮して、ボールを波田に返す。
波田は、グラブでキャッチしたボールを右手に持ちかえると、はぁはぁと息を切らしながらも、サインの確認に入った。
僅かだが、目がかすんでくる。
それは、額から流れ出た汗が、たらした前髪を伝って目に少しだけ入ったから・・・
口にも微量の汗が入ってくる。
それはなめるとしょっぱくて、口の中からは鉄の味がするようだった。
いつものことだ。
この回くらいになると、本当に投げるのが辛くなってくる。
それを決められたローテーションの中で何回も繰り返す。
どんなにスタミナをつけても、投球術を磨いても、精神的不安はいつでも試合中投手を襲う。
その不安が重なれば重なるほど、鉄の味は濃くなっていく。
だけど、それに負けるわけには行かない。
目の前の敵よりも負けてはいけないのは、自分の中の弱い自分。
波田はそれを理解っている。
だからこそ、投げる。
そう、斉藤のサインに頷き、彼を信じて彼のミットへと投げ込む。
単純なことだけど、それを繰り返せばおのずと勝利を手にすることができると信じているから・・・

















ストレートが川崎の内角低めに決まった。
スイングをしては見たが、やはりタイミングが合わない。
また速度は150キロを超えた。終盤にきて、なおも球威が衰えない。
川崎:「(とっくにばてていると想ったが・・・)」
再び握りなおすグリップ。
自分はチームリーダー。チームの柱で、一番監督の期待に応える立場、選手を引っ張って手本を示す立場。
そんな自分が、不甲斐ないスイングであっけなくマウンド上の彼に負けてしまっては出る幕がない。
川崎:「(さぁ・・・3球目・・・キミは何を投げるつもりだ・・・)」
マウンド上の波田を凝視するたびに、自分の思考回路がどんどんわからなくなってくる。
単純明確に3球勝負の男らしいストレートか。
はてまた、コーナーをきれいに突いた変化球か・・・
いずれにせよ、波田はもうボールをリリースしていた・・・

















ボールはしっかりと、斉藤のミットに突き刺さっていた。

















川崎は、そのボールを振らなかった・・・いや、振れなかった・・・

















川崎:「な・・・なんていうことだ・・・」

















一番予想していなかったコース。ど真ん中。
つり球ならともかく、こんな潔いコースに、自分のすべてをかけて投げ込んでくる投手は正直言って初めてだった。











川崎:「僕の・・・負けか・・・」










審判:「ストライク!バッターアウト!!」
ポツリと、悔しそうに呟いてみた。
だけど結果は変わらない。
川崎は、波田の執念に負けたのだ・・・。波田のプライドに、全身全霊に・・・









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