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果て無き夢へ
果て無き夢へ登場人物


第十九話  2倍の力







2番手としてマウンドに上がった田中。
彼はカーブを有効に使い、2番の打ち気満々の板倉を見逃し三振にしとめた。
だが、4回裏。フェニックスは一挙5点を奪う猛攻撃を見せ、川口をマウンドから引き摺り下ろして見せた。
しかし、キラーズとて負けてはならない。
5回表。
キラーズ一熱いハートを持った男が、ヘルメットをかぶって右打席へと向かった。

















アナウンス:「7番 ファースト 竹内」













レフトスタンドから、修吾の応援エールが響く。
たくさんのファンが、自分を応援してくれている。
だが、状況は最悪。5点ビハインド。
この状況をひっくり返すには、何が何でもあの波田という投手を攻略しなければならない。
だが、このバッテリー。
波田の本来の実力に、斉藤の緻密に計算されたリードが加わって2倍の力を生み出している。
その2倍の力に、キラーズ打線はかなわなかった。
けれども、大西の必死なプレーなどで、キラーズは2点をもぎ取った。
とにかく今は、1点でも多く点を返すこと。それだけだ。
修吾は胸に手を当てて、少し深呼吸をした。
志半ばでマウンドを降りた、同期の川口のためにも、自分は打たなければならない。
胸に当てていた右手をぎゅっと握り締めると、修吾はバッターボックスへと向かった。


















距離、およそ18.44メートル。
これはバッターボックスからマウンドまでの長さである。
僅か18メートルという距離の中で、今までいくつもの死闘が繰り広げられてきた。
投手と打者。対の位置関係にあるチームの主力がぶつかり合う熱いフィールド。
そう、また熱い勝負が、生まれようとしている・・・
















斉藤:「(竹内・・・修吾・・・彼に関しては、ほとんどデータがないからな・・・)」
斉藤は少し困っていた。
修吾に関しては、今季入団のためほとんどのデータがない。
先発出場したドルフィンズ戦の1回戦。代打で出場した3回戦のデータと、今日の試合の第一打席の結果だけが、インプットされている。
だが、第3回戦は、ドルフィンズの投手、浪野のけん制がランナーを刺し、修吾はそのまま交代を告げられたので、実際には対戦していない。
つまり、修吾の成績は、5打数2安打。まだまだ謎が多く、これといった弱点もほとんど見つかっていない状況である。
データで勝負する斉藤にとって、一番厄介なバッターである。


斉藤:「(一球はずすか・・・)」
高卒だが、開幕1軍をもぎ取りスタメン出場しているほどの選手である。
何かやってくる、あるいは確かな技術をもっていると考えていい。
斉藤はそう考え、少しボールゾーンにミットを構えた。
波田は腕を鞭のようにしならせてボールをリリースする。
修吾はそのボールの軌跡をじっと見ていた。
修吾:「(半個外れてる・・・)」
自信を持って見送った。
審判も、多少コールに迷ったようだが、判定はボールと出す。



修吾:「(次は何がくるんだ・・・)」
修吾は、波田にボールを返した斉藤をチラッと見る。
斉藤は、修吾の視線に気がついたのか、にっこりと不敵な笑みを浮かべて見せた。
その不気味さに、少し修吾は鳥肌が立つ。
まるで自分の心の中を読まれようとしているかのようで、恐ろしい。
斉藤:「(よし、変化球を使ってカウントを稼ごう)」
斉藤は波田に外角へ逃げていくカーブを要求した。
波田もうなずき、その場所へとカーブを投げ込む。
しかし、修吾はそのカーブにタイミングを合わせるかのようにバットを出して見せた。
すっとバットの軌道にボールが乗る。
が、波田のカーブにはまだ球威が残っていた。
修吾は、波田の球威に少々押され、バットが中途半端に振れてしまった。
だが、打球は一塁線上を大きく反れて切れていく。ファールボール。
斉藤:「(ま、目論見どおりとですか・・・)」
斉藤は、審判からボールを渡され、グローブの中に納まったボールを取り出す作業をしている波田を見た。
カウントは1−1となった。
次の球を何を投げるかが重要になってくる。
斉藤はそう判断していた。
















一方の修吾も、斉藤と同じ考えであった。
一度打席をはずし、バッテリーの様子を伺ってみる。
斉藤はぽりぽりと頭をかいているようにも見えたし、波田はしきりに帽子のつばを触っている。
おそらく、次の3球目で何かを仕掛けてくる。
そう修吾は直感で想った。
だからこそ、少し間を空けた。
この間合いが、この打席の分かれ目と考えたからだ。
たいした意味がなくても、十分相手には嫌な感じだろう。
攻めて行こうとしている絶妙なタイミングで何か障害がおきたと想ってもらいたい。
あの時と同じ感情になっているはず、そう考える。
だからこそ、この間合いが必要になってくる。
修吾は、再びタイミングを見計らってバッターボックスへ戻った。
カウントは1−1。お互いに、ぴりぴりしたムードの中であった。









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