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果て無き夢へ
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第十八話  力があれば・・・強ければ・・・











斉藤:「逆転されたらし返す!さぁ、気を引き締めて行くとよ!!」
フェニックスベンチ前では、斉藤が気合の拳を掲げてバッターボックスへと向かう。
次打者の長井は、ゆっくりとベンチから腰を上げて自分のバットをケースから取り出した。
斉藤は一足早くバッターボックスへと入った。













1打席目とはまた違ったオーラが、マウンド上の青い川口を締め付ける。
川口:「投げづらい・・・」
その言葉がぴったりだった。
彼らが放つ威圧感に臆し、本来の投球ができない。
コーナーを突いたはずが、ついつい甘く入ってしまう。
立ち上がりは不安定だったが、こうも虚ろになってしまうとは・・・。
川口自身、もうこの場から逃げ出したいと想っている。
だが、それはマウンドに上がったものの宿命。
いくら逃げ出したくても、やる気を失っても、監督から「交代」のコールがない限りは、延々と投げ続けなければならない。
どんなに苦しくても、哀しくても・・・だ。
がむしゃらになって投げ込んでも・・・
















快音が暗い夜空へと響き、照明に照らされたボールはスタンドへと吸い込まれていく。
優雅に、かつ華麗に。斉藤は同点ホームランを放った。




斉藤:「よっしゃー!!」



雄たけびの咆哮を上げて、うれしさから右手の拳をぎゅっと握り締めてガッツポーズ。
それをそのまま、天高く突き上げると、ライトスタンドから鳴り物の祝福。
それに包まれるかのように、斉藤はダイヤモンドを回った。
長井:「ナイスバッティング、ヒロシ」
ホーム近くで迎えてくれた長井が、すっと右手の拳を突き出す。
斉藤はそれに、拳で合わせて応えた。ライトスタンドの歓声がまた強くなる。
たった1球で同点。
大西が死に物狂いで打ったポテンヒットと、川崎が鮮やかに決めたタイムリーで勝ち取った逆転のリードを、川口の不甲斐ない自信をなくしたピッチングが吐き出してしまった。
川口:「畜生!!」
自分の悔しさから、川口は触っていたロージンを荒くマウンドに叩きつけた。
もっと自分に力があれば、もっと自分が強ければ・・・




だが、儚い願いなどこの強打者の前には届かなかった。




















長井のバットが、失投を完璧に捉えた。
打たれた川口は、がっくりとうなだれる。工藤も目を瞑って、打球の行方を追うのをやめていた。
内野は暗い表情で、ベースを駆け抜けていく長井を見送る。
なす術なし。あっさりと逆転されてしまった。
長井は、ホームベースをしっかりと踏む。これでホームイン。
キラーズはフェニックスに逆転を許し、3−4と試合を不利に運ばせてしまった。










だが、火のついた打線は勢いを知らない。
5番の大牟田はサードゴロに倒れるが、6番の梶浦がバッティングのお手本のようなセンター返しを見せる。
7番馬場のときに、ヒットエンドランを仕掛け1、3塁。
8番石狩が絶妙なポイントへとスクイズを決める。
これで3−5になる。



だが、動揺を隠せない川口は波田にフォアボールを与えると、トップバッターの安達に走者一掃のタイムリーツーベースを許してしまう。
3−7。4点リードされた形で、ベンチから石原監督が動いた。
ブルペンにいる投手コーチと連絡を取り、タイムをかける。
監督:「ご苦労・・・」
川口:「申し訳ありません・・・」
川口は、帽子を取って頭を下げた。
石原は、「次、もう一度頑張れよ」と励ましの声をかけ、背中を押してあげた。









力があれば・・・強ければ・・・












死に物狂いで奪ってくれたリードを守り通せたのかもしれないのに・・・












無念の情が、ベンチ裏へと下がった川口にのしかかった。
ぽろぽろと涙を流す川口。急いでタオルでそれを拭くが、止まることを知らない雫は延々と流れた。















力があれば・・・強ければ・・・










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