人は苦しいときは空を見る。
悲しいときにも空を見る。
そして、うれしいときも・・・
修吾は、どんな気持ちで今、この蒼穹の空を眺めているのだろう・・・
水瀬が投じた球種・・・それは・・・
ぐ、ぐぐん・・・
ボールは分身していく。そう、影分身の術を使った忍者のように・・・
それが、縦に大きく揺れている。
修吾を襲ってくる。
そう、これは・・・
後藤田:「(バ、バカ野郎!!)」
友沢:「(大震災を投げるなといったはずなのに・・・!!)」
渋そうな顔をする友沢。
これ以上、水瀬がこの試合で大震災を投げれば彼の指は使い物にならない・・・
開幕に間に合わない、そう悟ったから規制させたのだ。
しかし水瀬は、プライドで立ち向かっていった。
己の指に走る激痛など忘れ・・・
水瀬:「へっ・・へへっ・・・」
珂日:「あいつ!最後の最後でとんでもないボールを投げてきやがった!!」
仲嶋:「俺たちは、まんまとあの野郎に裏をかかれたわけだ」
林:「(どうする・・・)」
川崎:「(キミの力を見せるのは、ここしか残っていないんだよ)」
修吾:「くそっ・・・!(読みが完全に外れちまった!!)」
修吾は揺れ襲いくる大震災に立ち向かうため、グリップに力を込める。
しかし、怖くて振り続ける左足に体重が乗せられない。
修吾:「(俺の力で・・・ミートできるのだろうか・・・)」
修吾は同時に、自分の実力のなさに嘆き、嘆願する。
修吾:「くそぉ・・・(力を貸してくれ・・・理緒・・・)」
光が包まれた。
修吾にしか見えない光が、そこに舞い降りた・・・
??:「大丈夫だよ、修吾・・・」
修吾:「理・・・緒・・・?」
理緒:「大丈夫だよ、私を信じて・・・」
理緒:「修吾を信じて・・・」
仲嶋:「み、見ろ!!」
目を凝らしてみていた仲嶋が、大震災を指差す。
珂日:「へっ、何を、ですか?」
川崎:「こ、これは・・・」
水瀬:「なっ!」
後藤田:「(く・・・)」
修吾:「揺れがおさまった・・・?」
水瀬の指を蝕んだ悪魔、大震災は最後の最後で力尽き、ついには揺れを止めてしまった。
今となっては大震災はただのスローボール。
これをたたくのは、アマチュア上がりの修吾でもたやすかっただろう・・・
修吾:「せいっ!!」
快音を残し、白球は蒼穹の空へ消えていった・・・
修吾:「(理緒、理緒・・・ありがとう・・・)」
修吾は、自分に力を貸してくれた天使にただ感謝しながら1塁ベースをゆっくりと回った・・・
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