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果て無き夢へ
果て無き夢へ登場人物


第四十二話  珂日、過去との決別







代打を告げられた珂日が左バッターボックスに入る。
地面を足で均し、きっと目線を水瀬に向ける。
今までの珂日よりも、ものすごい表情。彼もまた、学生時代にはつらい経験をしていた。




珂日:「(小、中学校とオレはハブられてたからな・・・)」




ハブ。それは仲間はずれの俗称である。
無視はもちろん、悪口、悪戯、ひどい場合には暴行・・・。いじめと同類の、心が汚い者たちが行う集団でのいじめ。
珂日は悩んでいた。不登校になったこともある。
だが、彼を救ったのは悪い仲間だった。
タバコを覚え、酒を飲みまわし、バイクを使って騒音を立て日の出暴走も行った。
だが、ある日金を盗みに入った家で目にしたグローブ。それが彼の心に僅かな変化をきたした。
その日の夜、彼は盗んだ金を使って球場に入った。
無論、彼には野球のルールがわからない。最初は、試合が終わった後に金を巻き上げるつもりだった。
珂日:「(スポーツになんか、興味ねぇ)」
だが、その考えは変わる。
彼が目を奪われたスポーツ、野球。
あの家に置いてあった道具を使って人が打つ、守る、投げる・・・。
ありきたりな動作の中に光るスーパープレーに目を奪われた彼は、吸っていたタバコをぽとりと落としたほどだった。
珂日:「野球って・・・こんなにすげぇのかよ・・・」
その日から、彼は中学の野球部にはいろうとした。
だが、教師たちは彼の悪行を知っていたので断固拒絶。珂日は思わず手を上げようとしていた。
しかし、野球部の顧問だけは違った。
彼の腕を掴み、「野球がやりたいのなら、うちのエースと勝負しろ!」
と言い出した。珂日はその条件を飲んだ。




マウンドには中学野球部のエース。対して、バッターボックスには握りすらわからぬ、バットも振ったことのない素人の不良少年。
勝負はみえみえだった。誰もが、投手の勝ちと想っていた。
・・・珂日の潜在能力すらわからず・・・



第一球目。
豪快なストレートがど真ん中に決まる。
速い・・・ただ、そう想った。


第二球目。
ストレートがミットに収まった後にスイング。
早くも追い込まれてしまった。


相手投手は、「変化球を投げる必要もないな」という顔をしている。まさになめきっている。
このまま負けることは、珂日にとって屈辱だった。
ハブられていたやつを見返そうと決め、悪い仲間と共に復讐を果たし、今度は自分がそいつらを牛耳ることができた。
しかし、またここで負けたら自分の名目は丸つぶれだ。
勝つ・・・そのときの珂日の頭にはそれしかなかった。


第三球目。
幸運にも、手を抜いて投げてくれたストレートが、珂日のバットに当たる。
珂日:「あ、当たった!」
しかし、どこからか声が聞こえる。「1塁へ向かって走れ!」と。
そうだ、あの日の選手たちもあの塁へ向かって走っていた。
バットを投げ捨て、珂日は1塁へ向けて全力疾走を開始する。
だがそれをあざ笑うかのように、やる気のない動作で拾った投手は、さっと送球する。



珂日の足の速さなど知らずに・・・




バン!!



送球が終わったときには、珂日は1塁を駆け抜けていた。
内野安打。カタチは多少いびつだが、珂日の勝利だった。
そこへ野球部の顧問がやってくる。そして一言、「今日からお前は、もう一度生まれ変われ!俺たちと一緒に生まれ変われ!」
そういってくれた。




珂日:「(オレにとって、あの先公は恩人だった・・・)」
しかし、プロ野球の厳しさから、昔のような自分に甘え、くすぶっていた。
そんな中、竹内 修吾に出逢った。
珂日:「(修吾に救われた。先公で終いのはずだったんだけどよ・・・)」



水瀬の大震災が、珂日を襲う。
珂日:「うぉっ・・・!(な、何つー揺れだ!!)」
あっけなくストライク。

2球目の大震災も振りに行くが、これまた空振り。

珂日:「ち、畜生・・・」
悔しさからヘルメットにバットを当てる珂日。そこへ後藤田がきつい一言を放つ。
後藤田:「お前みたいながちがちな野郎には、打てるわけないっつーの」
小さく呟き、にやりと不敵な笑みを浮かべる後藤田。
俗に言うささやき戦術というやつで、打者の集中力を欠くものだった。だが、この言葉が珂日のハートに火をつけた。
珂日:「何言ってやがる・・・ゼッテー当ててやるぜ!!」
後藤田:「ほぅ・・・(面白い・・・)」




水瀬が大震災を投げる。
揺れる、揺れる・・・。水瀬の過去の十字架を乗せ、想いの全てをこめたボールは、揺れて珂日へと襲いくる。





珂日:「くっそがーーー!!」




出したバットには、確かな感触が残っていた。









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