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果て無き夢へ
果て無き夢へ登場人物


第四十一話  絶望の一瞬







水瀬少年は体調不良を感じ、家へと戻っていた。
水瀬:「こんなに体がだるいのは、初めてだ・・・」
今までにない倦怠感。今日はゆっくりしていよう・・・そう想い、運命のドアを開けた瞬間だった。




ぐらっ・・・




突然の揺れ。そしてそれは、形となって阪神地区を恐怖の色に染め上げた・・・。









阪神淡路大震災。
とても大規模な内陸地震として、日本人の心からその傷痕と反省の色が消えることはない。
淡路島付近で発生した地震による被害は、死者6000人以上、負傷者は重・軽傷者合わせても40000人以上にのぼるといわれている。








揺れがある程度収まったとき、水瀬少年の背中の上には、布団を敷きなおしていた母親が身代わりとなり、覆いかぶさっていた。
水瀬:「か、母ちゃん・・・?」
恐る恐る、母の顔を触る水瀬少年。しかし・・・
水瀬:「冷たい・・・」
わが母は、歯を食いしばりながらもろく落ちてきた天井の重い下敷きになり、水瀬少年を抱きかかえるようにして命のともし火を消していた。
そして父は、倒れてきた家具の下敷きに。
中学3年生で、両親に反抗しつつも水瀬が憧れていたギターを弾き、何度かライブに連れて行ってくれた兄は、ガラスの破片が喉に刺さり呼吸ができず。
そして小学校5年生、ひとつ違いの妹も、足を怪我していて病院に運ばれることとなった。
ただ一人、無傷だった水瀬少年は、外に出て見るも無惨に崩れ去った我が家を見て、己の運命を呪った。
水瀬:「うっ、ぁっ・・・」
声を出せない。涙がそれをさえぎってしまう。
渇かせようがとめどなく流れる涙。枯れない雫。
そしてそんな水瀬少年に追い討ちをかける出来事が起こる。





水瀬少年は、しばらくは近くに住んでいた祖父母と共に、学校の体育館で避難生活を送っていた。
そんな水瀬少年の感情は、ずたずただった。
そこへ届いた緊急事態を知らせる伝達。




「妹さんが危篤」




少年は走った。
自らの足が粉々に砕け散ろうが、心臓が破裂しようがかまわなかった。
太宰治の書いた「走れメロス」ではないが、今にも死にそうな妹、せめて最期を見届けたい。
そのためにも、1秒、一瞬が惜しかった。
自分よりも早く駆け抜けていく光になりたいと、その時は想った。
駆けつける病院。
被災者でごたごたしているロビーを潜り抜け、エレベーターが混雑しているとわかったら、その足で階段を駆け上がっていく。
そして妹の病室のドアを開けたとき!!












妹の顔に掛けられた白い布。
そして切なそうな顔をする医師たち。横にある心拍数を知らせる機械は、無惨にも一定の音を伸ばし続けていた。
水瀬:「う、う、う・・・」
水瀬に気がついたのか、主治医と想われる人物が彼の肩を優しく叩き、幼い少年に残酷すぎる事実を伝えた。






医師:「妹さんは、足の怪我だけかと想われていたが・・・頭部に大きな傷があってね・・・それが脳に大きな衝撃を与えていた。そのダメージより、我々は複雑骨折していた妹さんの左足にだけ気をとられていて、それを見落としていた・・・。我々のミスだ・・・。本当に、申し訳ない・・・」






医師は言い終わると、絞り上げるような声で、我慢していた涙をぽろっと零した。

水瀬 海星は、12歳にして両親と尊敬していた兄、よき理解者だった妹を同時に失った。
最期のお別れの言葉すら言えず・・・
病院から出た彼は、腹の底からその哀しみを乗せて大声で叫んでいた。
水瀬:「うぉぉぉおおおおぉぉぉぉおおっっ・・・!!」






その後の彼の人生は、絶望で彩られたようなものだった。
彼は2枚目フェイスだったため、もてるにもてた。だが、失った妹と周囲の女の子の顔がダブってしまうことから、人を愛することが怖くなっていった。
父親や母親と仲睦まじく手をつないでいる子供を見ると、羨ましさから非行に走ることがたびたびあった。
しかし、そんな彼を野球だけは見放さなかった。




水瀬:「大震災は、高校の時に作った球なんです」




後藤田:「(あいつの味わったつらさ、それを超える哀しみを持ったやつにしか、こいつは打てないとオレは想ってる)」
後藤田は持論を繰り広げていた。そして、大震災を当てたルーキーのことを気にしていた。
後藤田:「(あの竹内ってやつの瞳・・・死んでいやがる・・・)」
あの穏やかそうな瞳の奥に隠された悲しい過去、そして死を恐れていないような不吉な瞳。
後藤田はそれが怖かった。






そして珂日が打席に入り、6回裏、ついにキラーズの反撃ののろしが上がろうとしていた!!









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