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果て無き夢へ
果て無き夢へ登場人物


第三十八話  大震災







2番手には、本来なら先発の役割をしている松坂があがった。
自慢の高速スライダーが冴え、5番打者をピッチャーフライに打ち取った。
監督:「アクシデントはあったが、よく抑えた・・・」
しかし、ベンチに下がってきたナインの表情はよろしくない。中でも、修吾は真っ青になり、ベンチに座るや否や、頭を抱えだし、何かにおびえるように震え始めた。
修吾:「あっ、ぁぁ・・・理緒・・・理緒・・・」
珂日:「(んっ?理緒・・・?」
仲嶋:「聞いたことない名前だが・・・」
大西:「(まさか、彼の過去に何か・・・)」
すると、その背中をぽんぽんと優しく叩く川崎がいた。
川崎:「大丈夫だよ、修吾くん。高井はがんばってるさ。だから僕たちも、彼に答えなくちゃ。この試合、絶対に逆転しようじゃないか・・・」
修吾:「・・・・・・・・・・・・ハイ・・・」
修吾の顔の青さが引いていく。ナインたちは、やっと息をつくことができた。




一方、カイザースベンチでも異変が起きていた。
友沢はベンチに戻るなり、吹き出た汗を思いっきりタオルで拭い、ドリンクを一気に飲み干した。
そしてその後は無言でグローブをつけ、守備位置へ散った。
水瀬は、顔を青ざめたまま、一人でぶつぶつと何かを呟きながらマウンドへ向かった。
水瀬:「・・・・・・・・」
その言葉は、小さすぎて誰も聞き取れない。






この4回裏は、仲嶋、大西、川崎と、キラーズはクリーンナップで始まる。
先頭打者の仲嶋は、マスコットバットで軽く素振りをすると、バッターボックスへと入った。
仲嶋:「しっかし、アクシデントが続くな・・・」
後藤田:「お前らのとこのピッチャー、大丈夫なのか?」
仲嶋:「さぁ?そのうち病院から連絡が来るでしょ。それより、あんたのとこの主力2人も大丈夫なのかよ」
後藤田:「俺に聞くな。精神的にはきつそうだ・・・」
こんなやり取りを交わしながら、後藤田はさりげなく水瀬にサインを出した。
しかし、水瀬は上の空。小言を呟きながら、後藤田のサインを見ていない。
後藤田:「むっ・・・(おかしい・・・)」
後藤田は少しタイムを球審にお願いした。そして、マウンドの水瀬の下に駆け寄る。
心配そうに内野手たちも集合する。
後藤田:「水瀬、しっかりしろ!サインが見えないのか?!」
友沢:「おい、水瀬・・・」
水瀬:「父ちゃん・・・母ちゃん・・・ぶつぶつ・・・」
後藤田:「何を言ってるんだ、オイ、水瀬!!??」
後藤田は水瀬のあごをくいっと上げる。すると、水瀬の白目は充血し始めていた。
後藤田:「お前!泣いているのか・・・?」
水瀬:「後藤田・・・アレ投げるよ・・・」
水瀬はそう呟くと、後藤田の手を払った。
後藤田:「あ、アレって・・・お前ついに出すのか?!」
友沢:「だ、大震災・・・」
友沢は呟いた。水瀬のアレを知るものは、水瀬本人を除けばその練習に付き合った後藤田と友沢だけである。
しばらく様子を見た後に、後藤田と内野手たちは各ポジションに戻った。







仲嶋:「(何があったんだろうねぇ・・・)」
仲嶋はしばし目を瞑って集中していたが、マウンドから襲い来るオーラの異変に気づいた。
仲嶋:「おいおい・・・(全く雰囲気が違うよ・・・二重人格か、こいつ?)」
水瀬はしかしいつもながらのモーションでボールをリリースする。そのリリースされたボールを見て、仲嶋は思わずボールをよけた。
仲嶋:「なっ!!」
ボールは、大失投!顔面直撃かと想われたが、揺れてそのまま外角へ鋭く落ちていった。
審判:「ストラーイク!」
仲嶋:「くっ!」
仲嶋は自分の目をごしごしとこする。自分のほうにボールが向かってきたため、思わず反射がおき、そのまま避けてしまった。それにしても、情けない。
仲嶋:「やべぇやべぇ・・・(球筋もしっかり見ないで・・・。何やってんだ、オレは?)」
そして2球目。雰囲気の違う水瀬からまたもや同じボールが放たれる。
仲嶋:「今度は(しっかり見てやるぜ!)」
速度的にはチェンジアップ・・いや、それよりも少し遅い。しかし、ボールはそこから激しく揺れだした!
仲嶋:「なっ!何だと!!」




ググン、ググン、グググン!




不規則なリズムで変化するボール。
忍者が影分身の術というものを使って分身するかのごとく、ボールがいくつも揺れてぶれて、まるでボールが分身したみたいな錯角に陥る。
そして全く回転していないボール。これは・・・
仲嶋:「ナックル!ナックルか!!」
修吾:「ナックルなんて!そんなに大きな変化はめったにみたことない!」
川崎:「すごいボールを隠し持っていたんだね・・・あの水瀬投手は・・・」
そしてボールはゆっくりストライクゾーンを通過する。キャッチャー後藤田は、臆することも無くしっかりとキャッチした。
審判:「ストライク、ツー!」
仲嶋:「・・・(このナックルの変化量、そしてこの揺れ幅は半端じゃない・・・)」
仲嶋が考えているところに、後藤田が口を挟んだ。
後藤田:「半端じゃないだろう、水瀬のこのナックルは・・・」
仲嶋:「!?」
後藤田:「なんてったって、このナックル:大震災は、あいつの全身全霊がこもっているっていってもおかしくないからな」
仲嶋:「な、ナックル・・・大震災・・・!?」
後藤田:「そうだ、あいつがこれを投げるってことは、よっぽどあいつの過去のトラウマが呼び起こされちまったときだけだ」
仲嶋:「と、トラウマ・・・?」
3球目も大震災。仲嶋はあえなく三振に倒れた。
監督:「仲嶋、どうした!幽霊でも見たような顔をして」
仲嶋:「幽霊じゃないですよ・・・オレは、大地震に遭遇したも同じですよ」
監督:「何を寝ぼけたことを・・・」
仲嶋:「いや、打席に立てばわかりますよ。あのナックル:大震災っていうらしいけど、まさに大震災だ。こっちも本気以上を出さなくちゃ、限界を超えなくちゃ打てませんよ」
監督:「お前がそこまで言うか・・・(しかし・・・)」
石原は気がついていた。水瀬の隠しだまがまだあることに。それは、彼の爪の損傷。
監督:「(ナックルの練習をしない限り、あんな形にはならない)」
そんなやり取りをしながらも、キラーズは大震災の攻略法を見つけられぬまま、たった9球で三者連続三振に切ってとられた。
大西:「くそっ!あの揺れ幅はまるで室内で地震にあったかのようだ!!」
川崎:「とてもじゃないが、見ているだけで錯覚が起きてしまう・・・」
一気にキラーズのベンチのムードは沈んでしまった。
そして水瀬は、マウンドを降りるときもなにやらぶつぶつ呟いていた・・・









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