第5回 「出会いの島」
 可憐は、今・・・住み慣れたこの街、この国を離れようとしています。
それは、ずっとずっと離れ離れになっていたお兄ちゃんに会うために・・・・・・。
そして、お兄ちゃんと一緒に暮らすために・・・・・・。
可憐は今までピアノのお勉強のために、この国の音楽学校に通っていました。
でも、今年の冬が終わろうとする頃にお父さんから、
やっと、兄妹いっしょに暮らせるようになったから、この春から日本に戻ってきなさいって、連絡があったの!
そして、音楽の推薦で試験無しで学校に編入できることも・・・お兄ちゃんといっしょに学校に通えることも!
可憐は、この日が来るのを・・・ずっとずっと楽しみにしていました。
いつかはお兄ちゃんに会えるこの日を・・・・・・。

 そうして、可憐は今までお世話になっていた親戚の叔父さん夫婦にお礼を、そしてお別れの挨拶を済ませて、
10年間住み慣れたこの国から飛行機で旅たちました。
仲良かったお友達と別れるのもつらかったけれど、・・・でも、やっとお兄ちゃんに会うことができるんだと思う
気持ちも入り混じって、悲しいのと嬉しいの涙が可憐の目元からあふれてきました・・・・・・・・・。

 ようやく日本に着いて、飛行機の外に一歩踏み出したとき・・・可憐は、やっとお兄ちゃんのいるこの国に戻って
これた・・・もうその気持ちで胸の中がいっぱいになりました。
早く・・・お兄ちゃんに会いたい・・・・・・・・・・・・。
でも、その前に・・・可憐には一つ頼まれていることがあって・・・・・・。
実は可憐にはお兄ちゃん以外にも兄妹がいることが分かったんです。
その子は可憐よりもずっと年下の女の子で、名前は雛子ちゃん。
可憐から見れば妹ってことになるんだけど、実はずっと前から妹が欲しいな〜♪って思っていたから、とっても
うれしいんです。
その頼まれ事というのは、お兄ちゃんといっしょに住むお家まで、雛子ちゃんといっしょに行くことだったんです。
雛子ちゃんは、まだ小さくて一人で行くのはとても無理だから、いっしょに行ってあげてくれないかってお父さん
からのお願いだったから、可憐も迷わず引き受けることにしました。
だから、今日の夜は雛子ちゃんのお家に一晩泊めてもらって、明日の朝から改めて雛子ちゃんといっしょに出発
することになっています。

 空港から電車を乗り継いで約2時間・・・ようやく雛子ちゃんの住んでいるお家に着くことができました。
玄関のインターホンを鳴らしてしばらくすると、とても元気のいい声とともに扉が開かれました。
「ハイハイ、ハーイ!!どちらさまですか〜?」
中からはとても可愛らしくてまだ小さい女の子が、ぴょんっと元気よく現れました。
「あ、あのね・・・お姉ちゃんは、可憐っていうんだけど、もしかしてあなたが雛子ちゃん?」
「うん!ヒナはね、雛子っていうの〜!わ〜い!可憐ちゃんだ〜!!ママー!可憐ちゃんが来たよ〜!!」
すると、雛子ちゃんのお母さん(本当のお母さんじゃないけど、雛子ちゃんを今まで育ててきてくれたお母さん)
が出てきてくれて、
「可憐ちゃん、わざわざ来てくれてありがとう。ここまで来るのに疲れたでしょう。さあ、遠慮せずに上がって
ちょうだい」
と優しく出迎えてもらえて、可憐は雛子ちゃんのお家に上がらせてもらうことにしました。
雛子ちゃんは可憐の手を引っ張って、
「可憐ちゃん、こっちだよ〜!」
と、可憐は客間の方に案内されました。
「クフフッ・・・あのね、可憐ちゃん。今日はここでヒナといっしょにおネンネするんだよ♪」
って雛子ちゃんは可憐に教えてくれたんだけど・・・・・・。
「え?!でも、雛子ちゃんのお部屋はどうしたの?」
「ん〜とね、ヒナのお部屋にはもう何もないの・・・。だから・・・今日は可憐ちゃんといっしょにここのお部屋で
おネンネするの〜!」
そうでした・・・・・・。雛子ちゃんも明日からお兄ちゃんといっしょのお家で暮らすんでした。
だから、雛子ちゃんの家財一式はすでに運送屋さんが運んでいったあとだったんです。
「じゃあ、可憐・・・今夜は雛子ちゃんとずっといっしょだね♪」
「うんうん、ヒナも・・・可憐ちゃんとずっといっしょだよ〜♪」
うふふ・・・雛子ちゃん、とってもうれしそうでよかった・・・・・・。
もし、雛子ちゃんが可憐のことを受け入れてくれなかったら、どうしよう?って思っていたから、可憐ちょっと
安心しちゃって・・・・・・。
そして持っていたバッグを下ろして、しばらくすると・・・・・・。
「可憐ちゃん、ヒナちゃん、お夕食の用意ができたから、こっちにいらっしゃい」
と、雛子ちゃんのお母さんに呼ばれたので、可憐は雛子ちゃんに連れられてお食事をするお部屋に行くこと
にしました。
「可憐ちゃん、ゴハンを食べるお部屋はこっちだよ!」
「うん。可憐ね、雛子ちゃんのお母さんのお料理とっても楽しみなの♪」
「クフフッ・・・あのね、あのね!ヒナのママの作るゴハンはとーってもおいしいんだよ!可憐ちゃん、きっとビックリ
するよ!」
うふふ・・・雛子ちゃん、とっても楽しそう
そしてテーブルの上には、たくさんの美味しそうなお料理が並べられていて、真ん中には大きなデコレーション
ケーキが置かれていました。
「今日は可憐ちゃんが来てくれたことと、明日からはヒナちゃんがお兄ちゃんたちといっしょに暮らせることの
お祝いですからね♪」
雛子ちゃんのお母さんはそう言って、これだけのお料理とケーキを準備してくれたのでした。
しばらくすると、雛子ちゃんのお父さんも帰ってきて、いっしょに楽しいお食事会となりました。
最後にケーキを食べ終えたあとに、可憐はお部屋の隅にあるピアノを借りて、せめてものお礼にとピアノを
弾かせてもらうことにしました。
♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪♪♪♪
曲を弾き終わると、
「可憐ちゃん、スゴ〜イ、スゴ〜〜イ!!」
って雛子ちゃんが、とってもほめてくれました。
そして、雛子ちゃんのお父さんとお母さんにも・・・・・えへへっ。

 そのあとはお開きになって、雛子ちゃんといっしょにお風呂に入りました。
こうして二人で入っていると、今まで雛子ちゃんと姉妹離れ離れで暮らしていたのが、まるで嘘のようで・・・・・・。
「ねえ、ねえ、可憐ちゃん。明日から入るおうちのお風呂はどんなのかな〜?おおっきいのかな〜?」
「う〜ん?どうかな〜?おうちはけっこう大きいって聞いているから、お風呂も大きいかもしれないね!」
・・・・・・そう、こうしていると・・・もう可憐と雛子ちゃんは、ずっと二人いっしょに暮らしてきた姉妹のように思えて
きました。

 そして、お風呂から上がったあとは、雛子ちゃんといっしょにお布団に入って寝ることにしました。
まだ可憐と雛子ちゃんも少し寝付けなかったので・・・・・・。
「ねえ、雛子ちゃん。明日からここのお家を離れて寂しくならない?」
「・・・・・・。う〜ん、パパやママとお別れするのはとってもサビシイけど・・・・・・・・・。
でも、でも・・・おにいたまに会えるし、いっしょにいられるし・・・・・・。
それに、それに・・・可憐ちゃんもいっしょなんだもん!」
・・・雛子ちゃんのその言葉を聞いた可憐は・・・・・・。
「雛子ちゃん」
そう雛子ちゃんの名前を呼んで、キュッと雛子ちゃんを抱きしめていました。
「わぁ!可憐ちゃ〜ん、・・・とーってもあたたかいよ〜!
・・・・・・ねえ、もう少し・・・・・・このままで・・・いてほしい・・・な・・・・・・・・・・・・」
しばらくすると、雛子ちゃんは安心しきったように、スー・・・スーと寝息を立てていました。
可憐も雛子ちゃんの寝顔を見ているとだんだんと安らかな気持ちになってきて・・・・・・、
ようやく眠りにつくことができました。

 翌朝、可憐と雛子ちゃんはお布団から起きて支度を済ませたあと、お家を出発することになりました。
雛子ちゃんのお父さんとお母さんが玄関先まで出てくれて、見送ってくれたのだけど・・・・・・。
やっぱり、みんなちょっと涙ぐんでいました。
「雛子、元気でな!可憐ちゃん、雛子のことよろしくお願いします」
「ヒナちゃん、元気でねー!可憐ちゃん、私からもヒナちゃんのことよろしくお願いしますね」
雛子ちゃんのご両親に雛子ちゃんのことをそう託された可憐は、
「はい!これからは雛子ちゃんといっしょに仲良く暮らしていきます・・・・・・・・・」
と答えるのが精一杯でした。
雛子ちゃんも・・・・・・。
「パパ、ママ・・・・・・バイバイ・・・・・・・・・」
そうして、可憐と雛子ちゃんは、別れを惜しみながらようやくお家を発って、お兄ちゃんとの新しいお家に向かう
ことになりました。


 (中編1に続く)
(まえがき)今回のお話は、アニメ版第1話の可憐ちゃんがプロミストアイランドに向けて旅立って、お兄ちゃんに
      出会うまでの、いわゆるプロローグ編となっています。
      従って、設定のいくつかは独自解釈となっていますので、その点はご注意ください。
      なお、マキシシングル「Prologue of Sister Princess −Dear My Brother−」(キングレコード)に
      収録されているドラマとは特に関連はありません。
      また、通常アニメ版設定のお話は主人公である航(お兄ちゃん)を視点にして進めていくつもりですが、
      今回は内容の都合により可憐ちゃんを視点としてお話を進めていきます。
      それでは、アニメ版設定初のSS「出会いの島」をどうぞお楽しみください!