「まあ・・・そういうわけなのよ〜!」
そう言って、鈴凛は長い説明を終えた。
この中で、ほぼ内容を理解できたのは3名・・・・・・、
おおよそ理解できたのが2名・・・・・・、
何となくは理解しているのが2名・・・・・・、
とりあえず結果だけ理解しているのが1名・・・・・・、
となっている。
要は・・・その水晶玉が何かを・・・とりわけある場所を伝えようとしていることに他ならない。
さらに言うなら、それは彼女達を誘導しようという動きさえ見せている。
また裏を返せば、光が発せられているなら、その元を辿ることも可能ではある。
「さて・・・これから逆算していくと・・・・・・」
鈴凛は黙々と光の出所を探ろうと懸命になっている。
他の面々は今はただひたすら鈴凛が解答を導き出すのを待つしかない状況にはあるが、
そんな雰囲気を悟ってか、鈴凛は皆に一旦部屋から出るようにと促した。
「ちょっ〜と・・・時間が掛かりそうだから、みんな表で待っててくれる?」
そう言われると、鈴凛の作業の邪魔になってもいけないと思い、他の面々はリビングへと
足を向けることにした。
移動した先では、さすがに誰もが結果が気になるのか、あまり会話は弾まない。
目の前には鞠絵が用意してくれたお茶やお菓子が並んでいるが、それらに手を出そうと
するものはほとんどいない・・・・・・。
よくて時折、四葉や雛子が口にするくらいである。
「まだ結果は・・・出てこない・・・みたいね・・・・・」
咲耶が誰とはなしに投げかけるが、そこはやはり自然な流れで可憐が答えることになる。
「きっと・・・鈴凛ちゃんなら・・・出せると思うな・・・・・・」
それはどこからか・・・ある種、まるで前々からそう決まっていたかのような感じさえ受ける。
可憐の右隣に座っていた雛子も可憐に習うかのように続いた。
「うんうん・・・鈴凛ちゃんなら、きっとだいじょうぶだよ!」
さらに四葉も同意して、
「その通り!可憐ちゃんや雛子ちゃんが言うように、鈴凛ちゃんはゼッタイ大丈夫なのデス!!」
それはもう・・・四葉は自信満々に答えた。
まあ・・・いくら鈴凛といえども、完璧100%であるわけではないのだが、ここは信じて待つしか
ないことになる。
それからというもの・・・これといった、らしい会話もなく時間が過ぎ去っていった・・・・・・。
皆が時間の流れを忘れかけようとしたその時に、リビングのドアが開け放たれた。
「みんな〜!わかったわよ〜!!」
そして、今度はもう説明は後回しにして、即実演して見せることとなった。

 もう、日が暮れ始め・・・この空中に星々が瞬く夜空が展開されるまでには、
あと数十分という時間にまで差し迫ってきている。
さすがに完全に暗くなると、何かと作業はやりづらくなるので、早めに事は済ませておいたほうがよい。
鈴凛は早速持っていたセットを組み始めた。
例の水晶玉をセットした箱は四葉に託され、元あった位置に置くように指示された。
そして、また別の箱が最初に雛子たちが立っていた位置に置かれた。
すると、どうだろう・・・その地上に置いた方の箱の正面には明るい点が映し出されていた。
「やっぱり・・・ねっ!」
鈴凛は得意気に声を高め、そして続けた。
「光はフォースにより産み出されしもの・・・・・・
そして光の元は意図的に出されている・・・・・・
しかも伝達の意思を持っている・・・・・・
となれば・・・・・・」
鈴凛は明るい点が映し出されている位置に、先程可憐が力を溜めた発光石を据え付けた。
すると・・・どうだろう・・・・・・・。
光と光が共鳴するかのように眩い光線が空中に線を描いた。
時間的にはもう日没間近となっている。
その輝きは刻一刻と強くなってきている。
それはまさに鮮やかというべきであろう・・・・・・。
そして・・・その光の行く先は・・・・・・。
この中で・・・それを知っているのは・・・・・。
「きっと・・・この国で一番高い山がある方向を指しているようですわ・・・・・・。
しかも・・・そこは・・・・・・」
確信に近い口調で春歌が答えた。
それには鈴凛や鞠絵たちも納得しているようではある。
もちろん異世界からきた可憐たちにとっては分かるはずはない。
だが、今からすぐその地に向かうかどうかについては意見が二手に分かれた。
当然のことながら、可憐、咲耶、雛子はすぐにでも向かいたい気持ちでいっぱいである。
四葉や花穂たちも同調している。
しかし、春歌や鈴凛たちは慎重姿勢をとっている。
なぜなら、もう今からは時間にして夜・・・だからである。
暗くなってからは、特に見知らぬ場所に赴くことは出来るかぎり避けた方が
無難であることは確かである。
だが、それでもあえて行動を起こすべきか・・・わずかの間だけ戸惑いの時間が流れた。
そこはやはり誰かが決断を下さなければならないわけではあるが、
その役割は咲耶が担うことになった。
「今すぐにでも、お兄様のところに向かいたいのはやまやまだけど・・・・・・、
ここは準備を万全にして、明日からにしましょう!
・・・うん、それがいいわ!!」
咲耶は特に雛子や花穂たちの顔を見て、特にそう言い放った。
幼い妹たちを危険な目に遭わせるわけにはいかない・・・・・・
それもまた咲耶の本心によるものである。
よって、行動は明日の朝からということで決定となった。
そして、今夜はどうするかという話になったが、鞠絵はこのまま全員、家に泊まることを勧めた。
だが、鈴凛と四葉は改めて準備しておきたいものがあるということで、今夜は戻ることになった。
春歌は鈴凛たちの手伝いをしたいということで、彼女たちと行動することになった。
そうして、そのまま残ることになったのは、咲耶に可憐、そして花穂の3名となった。
これはなにも全員が鈴凛たちの家に戻る必要はないと判断したからである。
よって、そうと決まれば、鈴凛たちは自分たちの家に向かって飛び、
咲耶たちは鞠絵に促されて、また家の中に入ることとなった。

 ほどなくして、夕食はすぐに始まった。
どうやら、鞠絵たちがみんなが来る前に、だいたいの準備は済ませておいたからである。
特段ご馳走というわけではないものの、ホッとくる温かさに包まれている。
食材はこの山の中で採れた山菜の他に卵や魚を使い、ほぼ和風の食事に近いものがあった。
もちろん、この世界ではそういった料理は珍しいと言える。
だが、別のかの地では、そのような食事をメインにしている国・民族がいることも確かではあるらしい。
実際、この国ではめったに見ることのできない調味料が目の前に置かれているから納得ではある。
「こっちの世界に来て、初めて見るわね!?」
「お醤油・・・久しぶり・・・・・・」
咲耶と可憐は感嘆している・・・・・・。
そんな2人の様子を雛子は嬉しそうにして見ている。
「やっぱり、雛子ちゃんの言うとおりだったね!」
衛は雛子を褒めるようにして頭を撫でた。
ことの事情は以下の通りになる。
昨日、雛子から可憐たちのことを聞かされた鞠絵と衛は、どういったおもてなしをすればよいのか
考えたところ、料理に関しては味付けに関わるところまで行き着いた。
そこで、雛子が醤油を提案したのだが、当然のことながら、醤油を探しに街へ出かけたものの、
そう簡単にあろうはずもない。
だが、あるところで鞠絵がある女性から、今日港に入った貨物船に少しばかり荷があることを
知らせてくれたおかげで、なんとか入手することが出来たのである。
まあ、普通なら入手することは到底無理であるのだが、なにやら許可証のようなものを譲ってもらえた
おかげで特別に分けてもらえたということである。
ちなみに、その女性は鞠絵に必要最低限のことを授けて、すぐにその場を立ち去ったものだから、
衛と雛子はあいにく目撃していない。
鞠絵としても、初対面の相手ではあったそうだが、以前にどこかであったような感覚はしたものの、
その場は自然な成り行きで、これといった不信感は感じられなかったとのことである。
そうして、そういった話も交えつつ、食事の方は懐古的な雰囲気に包まれて、終始和やかに
進んでいった・・・・・・。

 そののち、食事が済み、片付けが終わると、それぞれが明日からの準備に取り組み始めた。
しかし、ここで問題が生じた・・・・・・。
雛子たちを同行させるかどうかで意見が大きく二つに分かれてしまったのである。
当人の雛子と衛は当然行きたがっている。
が、咲耶は慎重姿勢を崩さない。
それというのも、やはり万が一のことがあるかもしれないからである。
目的とする場所が、普通のところではない・・・・・・、
一般人が安々とは立ち入ることの出来ない場所・・・だからでもある。
結局・・・この夜は答えを出せずじまいになり、明日鈴凛たちが来てから、
最終的に決めることとなった。
なお、鞠絵については、自身の体調を憂慮し、この地にて留まることになった。
なにはともあれ、明日からは一気に行動が大きくなることが予感されてやまない・・・
そんな期待と不安が入り混じった夜になりつつあるのであった・・・・・・。


 (第13話に続く)