そこでは待っていた鞠絵とミカエルも加わり、その謎のアイテムに関する作戦会議になった。
その光る水晶玉はというと・・・今は光っている様子はない。
最初に光っていると言った雛子たちにも、現時点では光って見えてはいないようである。
ここは試しに皆一人ずつその水晶玉を持ってみることにした。
だが、これといった変化は起こらない・・・・・・。
次はフォースを加えてみることにした。
ここは代表して春歌が実行することになった。
もちろん水晶玉にパワーがチャージされてはいったものの、その後は何の変哲もなく、
ただ力を吸い込まれてしまっただけにすぎなかった。
これではと思い、新たな実験を思いついた鈴凛は、それを例の通信機に繋いでみることにした。
要はエネルギー源としての効力があるのかどうかという簡便な調査方法ではあるが
繋いでみても何も動作しなかったことから、ただの水晶玉ではないようではある。
あと、残る手段としては、「光る」という事実から、それに光を当ててみることにした。
まずは太陽の光にかざしてみるが、普通に眩しいだけである。
それでも、好奇心旺盛な四葉にとっては何かあるとみて、その水晶玉を手のひらで転がしてみたり、
指でこね回してみたりと、何か出ないものかと探ってみてはいる。
だが、皆が諦めかけたその時、
「きゃっ!!眩しい!!」
可憐が驚きの声を上げ、勢いのあまりそのまま尻餅を突いてしまった。
どうやら何らかの変化があったようである。
「わっ!?可憐ちゃん・・・だいじょーぶ?」
雛子が心配そうにして可憐の顔を覗き込んでいる。
他のみんなも何かと心配気味である。
「ちょっと!四葉ちゃん、可憐ちゃんをビックリさせちゃダメじゃな〜い!?」
鈴凛が少々お叱りモードになっている。
「え・・・え・・・え〜!?・・・四葉は何にもしてないデスー!!」
その直後はまるでお約束のごとく、笑いが一帯を飛び交った。
それというのも、可憐が特にケガををした様子がなかったからでもある。
「それにしても・・・今のは何だったのかしら・・・・・・?」
咲耶が呟くように疑問を解き放つが、その答えはすぐには出てこない・・・・・・。
今、水晶玉はというと、四葉から雛子の手の中に移っている。
雛子は新しいおもちゃを手に入れたかのようにして遊んではいるが、
そもそも最初にそれを見つけたのは雛子当人である。
一見すると、ただ水晶玉を転がして遊んでいるだけのようにも見えるが、
ただそれだけではないようである。
「・・・・・・う〜ん・・・きっと、何かあるんだよ・・・きっと・・・・・・」
雛子は今とても探究心に溢れているようである。
だが、その先があまり進展しないように感じられたのか、鈴凛が中に割って入ってきた。
「ごめんね〜・・・雛子ちゃん。ちょっとそれ・・・貸してもらえる?」
ふいに手に取って再度それを確かめた鈴凛は何かを思いついたのか、
ある物を作ることに行動を起こすことになった。
「鞠絵ちゃん・・・ちょっと家の中を借りるわよ?」
そう言って、鈴凛は家の中に入り、何かを作り始めることになった。
とりあえずは手近にあるものをかき集めることになったが、とりたててあるものといえば、
木材ばかりである。
出来れば金属材質のものがあればより良いようではあったが、一回かぎりの使用なら
特に問題はないようなので、材料集めに四葉たちも協力することになった。
もちろん、その後の加工は鈴凛がメインとなり作業を押し進めた。
その結果、出来たものは・・・一種のカメラか測定器のようなものであった。
中は真っ黒に加工された手の平サイズの木箱が三つ繋がっている。
一つ目の箱は光を出すための発光源を置けるように、
二つ目の箱は水晶玉を装着して向きを自在に変えられるようになっており、
そして、三つ目の箱には水晶玉を透過した光を感知できるように薄い白紙が張られている。
もちろん、箱と箱の間には光の束を収束させたりするレンズのようなものが組み込まれいて、
これで水晶玉の謎を解明できる見通しが立ったことになる。
そして、試料となる水晶玉をセットして、何かしらの結果を待つこと数十秒・・・・・・。
これといったものは出てこないようである。
「あれ〜?おかしいな〜・・・?」
鈴凛は首をかしげている。
「えっ?何っ?・・・どうしたの!?」
咲耶が期待や予想とは異なる展開になってしまったことから、今は鈴凛に問いただすほかは
なくなってしまっている。
「う〜ん・・・鈴凛ちゃんが・・・こんなことは珍しいデスね〜・・・・・・」
四葉は心配そうに鈴凛の様子を見ている。
そんな行き詰まった中、春歌が一つ思いついたように言葉を発した。
「一口に“光”といっても、いろんな光がありますから・・・・・・」
少し間を置いて・・・・・・。
「あっ!!」
その春歌の言葉から鈴凛は何かを悟ったようである。
そう・・・光と言えば、自然光に人工光・・・とあるが、この世界にはフォースにより発する光がある。
それは普通の力の持ち主ではなかなかうまくはいかないものがあり、使えるものは限定される。
ただ単に力を出せればよいというわけではないからである。
いわゆる素質のようなものを持ち合わせていないと発光させることは不可能に近いとされている。
だが、この中でそのような資質を持ち合わせている者はといえば・・・・・
「ここはやっぱり春歌ちゃんが適任じゃない?」
と、鈴凛が推挙するものの、
「いいえ・・・もっとワタクシより適する方がいらっしゃいますわ☆」
そう春歌がやんわりと打ち消してきた。
春歌は少し間を置いて、こう告げた。
「ワタクシは、あの時の光を・・・まだはっきりと覚えております・・・・・・」
そう言いながら、春歌は可憐の両肩に自身の両手を添えた。
だが、予想外のことだったのか、当の本人は驚きを隠せないでいる。
「えっ!?えっ!?えー!?・・・でも、でも・・・可憐は・・・そんな・・・・・・」
半ば動揺してしまっている可憐に春歌はこう続けた。
「うふふふ・・・可憐ちゃんはご自身では気付いていないものをお持ちになっているのですよ☆」
そうして、春歌は可憐により体を寄せて、こう囁くのであった。
「可憐ちゃんが今までで一番幸せに感じたことを思い出してみてください。
そうすれば、自然と出てくるようになりますよ!」
可憐は両目を閉じて、これまでに幸せに思えてきたことを回想し始めた。
もちろん・・・可憐にとって、それは元の世界にいた時のことまでに遡ることになる。
可憐が一番幸せに思うときは・・・・・・。
しばらくして、可憐を中心にして光が輝き出した。
それは・・・まばゆいばかりに・・・・・・。
そして、その時を待っていたとばかりに、鈴凛は可憐の前にある丸い石をかざした。
すると、光が吸い込まれるようにして、その石の中に光が集められたかと思うと、
今度はその石が逆に輝きを帯びるようになってきた。
「ひゃあ〜眩しいデス〜!!」
「でも・・・とても温かい光ですわ・・・・・・」
「可憐ちゃんらしいわね☆」
「ヒナ・・・可憐ちゃんに抱かれてるみたい・・・・・」
「えへへへ・・・花穂、なんだか気持ちいい〜!」
「う〜ん!ボクも〜!!」
「美しいです・・・・・」
「可憐ちゃんって・・・見かけによらずスゴイね!!」
さすがに皆、口々に可憐のことを称えることとなった。
そして、鈴凛が石・・・今は発光石となったものを箱にセットし、水晶玉を改めて少し動かしていくと
今度はある方向・斜め方向に輝点が出ているのが確認された。
どうやら、その水晶玉には特定の入射した光については、決まった角度に反射させる特性を
有していることが判った。
「なるほどね〜!」
いち早く鈴凛はこの水晶玉の仕組みを理解したようである。
だが、他の面々はまだ理解が追いついていないようである。
そこで、鈴凛は一呼吸置いて、
「じゃあ・・・今から、この水晶玉の仕組みを教えてあげるから、よく聞いてね!」
と、皆に促し、一から考察と推察を交えて、少しばかり長い講釈を始めることとなった・・・・・・。


 (第12話に続く)