各々家から庭に出て、改めてその木の前に全員が佇むことになった。
だが、これといったものは何も見当たらない・・・・・・。
となれば・・・もしかすると、木の根元に何かが埋まっているのかもしれない・・・・・・
そういった考えが誰とはなしに浮かび上がってくるものがあった。
だからかもしれないが・・・そういった雰囲気を察っしたかのように、
ミカエルはその根元を掘り返し始めた。
つられて四葉や衛もいっしょになって掘り出し始めた。
だが、手作業ではなかなか思うようには進まないようである。
そこで、春歌が一つ提案した。
「あの・・・ここは一つ、いい方法があるのですが・・・・・・」
そう言って、春歌は皆をその場から少し遠巻きにして、詠唱を始めた。
すると、木の根元の周囲の土が次々に掘り返されるように進んでいった。
しばらくして、それが一周すると、その動作は春歌の一瞬の掛け声により停止をした。
その場にいた可憐と咲耶はその行いを見て、感心することしきりであったが、
とりあえずは春歌にその説明を求めることにした。
「ねえ、春歌ちゃん・・・今のはどうやってしたの?」
可憐から尋ねられた春歌は、事も無げに説明を始めた。
「ウフフッ・・・これはですね・・・・・・風の力を応用して土を掘り返したのです。
普段は・・・そうですね・・・花壇や畑を耕すことに使っていたりするんですよ」
併せるように花穂も付け加えた。
「うん!花穂もよく使ってるよ☆」
「あっ・・・そうね、花穂ちゃんはお花をよく育ててるものね」
可憐はどちらの世界でも花穂が共通してお花が好きであることを再認識していた。
また、そうこうしていると、興味津々の四葉たちは掘り返されたところを探ってはいるが、
これといった発見は出てきていないようである。
「う〜ん・・・何もないデスね〜・・・・・・」
「それにしても、木の根には傷一つ付けずに掘り返しているのは、さすがだわ〜☆」
鈴凛の褒め言葉に対して、花穂はこう付け加えた。
「えへへへ・・・そうやって土だけを掘るのは少し難しいんだよ!
花穂はすぐ失敗しそうになるから、ちょっとずつしかできないんだけどね」
どうやら、花穂の説明からすると、春歌のしたことは簡単そうには見えるものの、
実際にはそれなりの技術を要するようではある。
そんな光景も程なくして、ここは次のアクションに移ることとなった。
「下ではないとすると・・・上なのかな〜・・・?」
消去法を用いるがごとく、鈴凛が考えを押し進めていた。
自然と、その場にいる全員が木の上の方を見上げた。
つられてミカエルまでもが上を見上げた。
「あぁー!!」
いきなり、四葉が大きな声を発した。
「えっ!!何っ!?」
みんな何事かと叫んだ。
それに受け答えるかのようにして、四葉は次の言葉を発した。
「とっても・・・大きな木デス〜☆」
それにはさすがに全員がその場で突っ伏しそうになってしまった。
「もう!そうじゃないでしょ〜・・・四葉ちゃん!」
鈴凛はすかさずツッコミを入れた。
ここまでくると、もはやお約束であると言わざるをえない。
他の面々もそれがあって当然という雰囲気である。
が、そんな中・・・雛子が四葉に続くような声を上げた。
「あ〜!!・・・木のいっちば〜ん・・・たか〜いところで・・・何か光ってるよ〜!?」
雛子は何かを見つけたようである。
「あっ!ホントだわ!!」
「えっ!?あっ!!」
咲耶と可憐も続けて見つけたようである。
しかし・・・その他の者には、見えていないようである。
「え〜と・・・ボク、目はいい方なんだけど・・・おかしいな〜?」
「う〜ん、花穂にも分からないや〜・・・・・・」
「わたくしも・・・・・・です」
「え〜そんな〜・・・この四葉に見えないなんて〜・・・・・・」
「・・・・・・見えるような見えないような・・・ワタクシにも分かりませんわ・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
鈴凛は終始無言である。
とりあえず、この場は次にどういった行動に移るかであるが・・・・・・、
さすがに木をよじ登っていこうとする者はほとんどいない。
よって、ここは空間飛行を利用した垂直飛行が賢明であるという結果になった。
ということで、自然と春歌組と鈴凛組に分かれることになった。
なお、四葉は自分で登っていくといってきかないので、単独での行動となった。
春歌組は可憐と咲耶に雛子を連れて上へと向かった。
鈴凛組は衛と花穂が入り、少し遅れて上へと向かった。
ちなみに、鞠絵とミカエルは下で見守るようにして残ることになった。
・・・・・・そうして、予想では春歌組が一番上に到達するか・・・と思われていたが、
結果は・・・・・全く異なるものとなった。
なんと、先に達していたのは・・・四葉であった。
「四葉ちゃん、速〜い!!」
衛と花穂は口を揃えるようにして驚き放った。
可憐はビックリしていて言葉が出てこない・・・・・・。
「なかなかやるじゃない?・・・四葉ちゃん☆」
四葉のあまりに凄い機動力に咲耶は認めざるをえなかった。
「でも、どうやって、そんなに速く登ってこれたの?」
ようやく口を開けるようになってきた可憐は、なんとはなしに四葉に訊いてみた。
「・・・・・・う〜ん・・・それはまだまだヒミツなのデス〜!」
結局、そこのところはすぐには明かしてはくれないようである。
だが、今はそんなことを問い詰めている場合ではない。
下から見えた木の上で光るものの探索が目的である。
一同はその場所にあろうと思われるものに視線を集中させた。
しかし、そこにはこれといったものは何も見当たらない・・・・・・。
次に視線は先に到着していた四葉のもとに集中することになった。
「・・・・・・よ・・・四葉は、何も知らないデス・・・よ・・・・・・。
そ・・・それに、手には何も持ってはいないのデス・・・から・・・・・・」
確かに両手には何も持ってはいないようである。
だが、明らかに何かを隠しているかのような仕草に、誰もがアヤシイ・・・とは感じた。
「ねぇ〜・・・四葉ちゃん〜・・・な・に・を・・・隠しているのかな〜・・・?」
鈴凛はじりじりと四葉に詰め寄り、次第に問い詰めていくような形になった。
あまりにもバレバレな雰囲気のため、これ以上はさすがに隠しきれないと思ったのか、
四葉はおずおずとポケットの中からあるものを取り出した。
それは・・・・・・指で摘めるぐらいの小さな水晶玉だった。
その水晶玉を直に見たところ、下で雛子たちが発見した時のようには光ってはいない・・・・・。
「おかしいわね〜・・・何も光ってないじゃない・・・・・・」
「あれれ?・・・ホントだ・・・・・・」
「変ね〜・・・・・・」
光っていると思われた・・・その水晶玉が光っていない現実に、先に下で確認した
咲耶、雛子、可憐の3人は不思議と戸惑いを覚えている。
「・・・あ・・・あの〜・・・だから、四葉は・・・その〜・・・こっそりと・・・デスね〜・・・・・・」
どうやら、四葉はこの水晶玉を見てみんながガッカリしてしまわないかと思ってしまったようである。
「もう〜!・・・四葉ちゃんたら、変なところで気を遣ったりするから、みんなが誤解しちゃうじゃない!」
四葉の一連の行動を察してか、鈴凛は四葉に注意を促した。
「うぅ〜・・・ごめんなさいデス〜・・・・・・」
いつも勢いはいいものの、ものの考え方が他人と異なるところは、良くも悪くも四葉の個性では
あるが、今回は少しばかり判断を間違えたようである。
だが、決してそれは、四葉自身としては悪意によるものではなく善意による行動だったことが
分かったので、それ以上四葉に対して咎めようとする者は誰もいなかった。
それからしばらくして・・・このままこの場に居続けても、事の進展は望めそうにもないことが
明確になってきたことから、ここは一旦全員下に降りることにするのであった・・・・・・。


 (第11話に続く)