こっそりと這い出てきたそれは・・・・・・どこでも見かけるような動物ではあった。
だが、何とはなしに可憐は違和感を覚えたようではある。
「この子・・・ネコちゃん・・・よね・・・・・・?」
確かに外観からはネコそのものであるようだが、普通のネコにはないものが付いているようである。
「・・・うん・・・・・・。確かに・・・ネコ・・・のようだけど・・・・・・」
咲耶も何かしらの違いを感じているようではある。
そんな和やかな空気が流れている中を、春歌はその場をまとめるようにして立ち上がった。
「うふふふ・・・・・・イケナイ子ね。もう少し向こうに行ってらしてね・・・・・・」
春歌はそのネコらしき動物をそっと抱えて茂みの向こうまで行くと、そこでその動物を放したのだった。
他の3人はネコがいると食事を始めにくいからだと思ったのだが、この時の春歌の様子がどこかしら
おかしいような気がしないわけでもなかったが、あえてそれ以上の追求は避けることにした。

 食事が済むと一行は春歌の知り合いが住んでいるという家に向かうことになった。
場所はここからそう遠くはなく、歩いても5分とは掛からないところにあるということから、その家までは
歩いていくことになった。
可憐たちはそこがどんなところなのかはよく知らされてはいなかったが、春歌のことだからまず信頼しても
大丈夫だという気持ちはあったので、特に案じることはなく歩を進めていくことにした。
街中の大通りから一本脇に入った少し落ち着いた感じの家々の中に、その目的とする家があった。
一同がその家の前に辿り着くと、まずは春歌が到着の一言を告げた。
「こちらが今日からしばらくごやっかいになる・・・・・・」
と、春歌が言いかけたところで、物陰から何かが飛び出してきて、
「みなさ〜ん!!ようこそデス〜!!」
そう言いながら、姿を現したのは、可憐たちも普通ならよく知っている元気な女の子だった。
「四葉ちゃんっ!?」
咲耶と可憐が口を揃えてその子の名前を出したものの、これまでの経過を考慮するなら、
その発した内容に一部訂正を入れざるをえなかった。
「・・・・・・じゃないわよね・・・・・・」
咲耶が四葉に確認を求めたが、返ってきた返事は予想通りのものだった。
「・・・・・・う〜ん・・・・・・。四葉は四葉なのデスが・・・・・・・。あなたは・・・・・・?」
やはり、目の前にいる四葉と名乗る女の子は咲耶たちがよく知っている四葉とは別人のようだった。
その光景を傍目で見ていた春歌は、なぜか少し笑いをこらえているようだった。
「あぁ!!でも、立ち話もなんですから、中に入ってください!!」
その四葉からの申し入れに、その場に居た全員が従うことになった。
「では、四葉ちゃん・・・お邪魔しますね」
「いえいえ、春歌ちゃん、遠路はるばるデス!!・・・ゆっくりくつろいでいってください!!」
春歌たちは四葉に会釈しつつ、中に入ることにした。
家は普通よりは少し大きな一軒家で、周りには少しゆったり目の庭が広がっていた。
そして庭の奥には離れのような小屋が建っているのが見えたが、それが何の目的で存在しているのか
一見して見当はつかなかったが、何かしら親しみのようなものを感じずにはいられなかった。
「・・・あの・・・四葉ちゃんはこのお家に一人で住んでるの?」
可憐が心の中で何か引っ掛かりを覚えたことから、四葉にそう尋ねると、
「いえ!・・・四葉一人じゃないデスよ!」
春歌はすでに知っているようだったが、可憐と咲耶の二人はもちろんのこと、初めてここに来た花穂も
知る由はなかった。
「実は・・・四葉には優秀な助手さんがいるので、まずはお先にこちらへどうぞデス〜!」
そう言って家の中にはすぐに入らずに、庭の奥に建っている小屋に向けて進んでいくことになった。
「今は四葉のために、また新しいアイテムを作ってくれている最中だって言っていたから、
先にこっちに来て紹介を済ませておいた方がいいかな〜って・・・エヘヘヘ・・・・・・」
程なくして、その小屋の前に辿り着くと、その途端にそのドアが勢いよく開かれ、
「あ〜・・・四葉ちゃん!おかえり〜!・・・・・・ということは、お客さんもいっしょ?」
その声と同時に一同の前に姿を現したのは、見た目はこれまた可憐たちが良く知っている女の子だった。
「鈴凛ちゃん!!」
可憐と咲耶が同時にその女の子に向かって名前を呼んだ。
「確かに私は鈴凛だけど・・・・・・」
だが、その受け答えに四葉は驚愕してしまい、
「どうして、お二人は鈴凛ちゃんだと分かったのデスか?」
確かに四葉は二人にまだ名前を教えてはいなかったので、驚いても当然ではあった。
でも、直後に勝手に納得したかのように春歌の方に顔を向けると、
「さては・・・春歌ちゃんが先に教えていたのデスね〜!?」
しかし、春歌はその四葉の意に反して、
「いいえ、ワタクシはまだお教えしてはいませんわ・・・・・・」
と、四葉に告げると、しばらく四葉はそのまま考え込んでしまうことになった。
が、その状況をいち早く打破したのは、鈴凛であった。
「ちょっとちょっと、四葉ちゃん!!お客さんをほったらかしでいいの!?」
鈴凛からのツッコミを受けて、四葉はようやく次の行動に移ることになった。
「そ・・・そうでした!・・・皆さんをご案内するのでした!!・・・テヘヘヘ・・・・・・」
そうして、四葉はさらに鈴凛を加えて、今度は家の方へと足を向けることにしたのだった。

 家の中はそう広すぎることもなく・・・といったところであり、2階建ての比較的新しいレンガ作りの
綺麗で落ち着きのある佇まいを見せていた。
今、この家の中・・・リビングには総勢6名が揃っていることになるが、特に窮屈といった様子はない。
春歌は四葉と鈴凛に改めて今回の成り行きを説明し、協力を求めることになった。
もちろん咲耶と可憐も続いてお願いをするつもりでいたが、二人に先んじて四葉が声を発し、
「まかせてください!!四葉たちにかかれば、どんな難事件でもたちどころに解決デス!!」
「えぇ・・・大丈夫、大丈夫!」
四葉の気迫に押されて、少し遠慮気味ではあるが鈴凛も後に続いた。
「さすがは四葉ちゃんと鈴凛ちゃんですわ!・・・ぜひ、お願い致しますね!」
「お願いしますね・・・・・・」
「お願いするわね・・・・・・」
可憐と咲耶も春歌に続けて、そう依頼した。
この世界では彼女たちの力を借りないことには、この先どうにもならないことから、
快く引き受けてくれたことにとても安堵するのであった。
そして、この中では当事者から外れている花穂は、事の成り行きを見守るしかなく、
横でひたすら5人の会話を聞くことに専念していた。
だが、当の用件を一通り話し終えた後は、昼食時に寄ったカフェで買っておいたケーキを
テーブルに広げお茶をしつつ、しばしの間は歓談の場になるのであった。

 そうしてさらには、この世界に来ることになるまでの経過を四葉と鈴凛に話して聞かせることになったが、
さすがの二人も目を見開くばかりだった。
これは正直言って、事が大きすぎるのかもしれないとは思えたが、
「・・・こ・・・これは・・・事件デス!!・・・しかもかなりの難事件デス!!
・・・・・・ですが、四葉たちに掛かれば、何てことはないのデスよー!!」
どうやら、四葉は事が難しいほど、意気が上がるタイプのようであり、その事に関してはみんなが
よく知っている四葉と何ら変わりはなかった。
それに釣られてか鈴凛も意気込みを示し、
「そうそう・・・四葉ちゃんの推理力と私の発明力を持ってすれば、何とでもなるわよ!!」
二人の決意の力を感じ取った可憐たちは、
「ありがとう、四葉ちゃん、鈴凛ちゃん・・・・・・」
「二人とも・・・頼んだわよ!!」
「四葉ちゃん、鈴凛ちゃん・・・ありがとうございます。ワタクシからもよろしくお願いいたしますわ」
と、各々が感謝の意を表明した。
「よかったね〜♪咲耶ちゃん、可憐ちゃん♪」
花穂は花穂で、四葉たちが手助けしてもらえることになったことを理解し、喜びの声を上げるのだった。
そうして一致団結の輪が結成されたところで、春歌が次のステップに話を進めることになった。
「それでは・・・今回のことで、何かそれらしい有力な情報は得られているのでしょうか・・・?」
春歌からの質問に、一同の目が四葉に集中した。
「・・・・・・う〜ん・・・・・・。それらしい情報は特には〜・・・・・・」
次に鈴凛の方に目が移ったが、右に同じという仕草で、現状はこれといった情報は無いという
状況であるようだった。
だが、四葉はそのことではめげずに、次の行動に移ることを示したのだった。
「なら、外からこの街にやってくる人たちに聞き込みをしていけば、何か新しい情報を
得られるかもしれません!!」
もう一同はこのままこの場でじっとしてはいられず、その四葉の言葉に付き従うことになったのだった・・・・・・。


 (第5話に続く)