
「お話ができたの」
レッスン中 練習曲を弾き終えたとたん 普段は無口な小さな生徒さんが思い出したように言いました
私が「どんなお話?」とたずねると
「小屋があったの」と不思議な言葉が かえってきます
「そしてね 雨がふってくるの ここで」と たった今弾いた練習曲の16分音符が下行する速いパッセージを指しました
「それからね ここはカミナリがピカーーって ひかるの」
と今度はフォルテのフレーズをゆびさし そして彼女はキラキラと目を輝かせながら お話を続けます
曲を弾きこんでいくうちに その曲が風景や映像となって心に宿り
稲光に浮き上がる丸太小屋のストーリーをつくりあげたのです
なんて素敵な感性でしょう !
私は熱い感動を覚えながら その子と一緒にその曲に
《かみなりのエチュード》と名前をつけました
子ども達の純粋さや 奥深い感受性は 時折このように 私に感激を与えてくれます