エリーゼ(機構関連)
2023年07月20日
A/C コンプレッサーの構造
A/C コンプレッサーは、ローター型のベーンタイプである事は解っているが、中身が見たい欲望に駆られる。
経年変化で冷房効率が下がり余り冷えなくなった理由も、低圧側が規定値より高く、高圧側は規定値より低いと言う、正に
コンプレッサー内での漏れ( 高圧から低圧側への漏れ )が原因。 これでは、エクスパンジョンバルブで開放される時の圧力差
が低くなり、低温とならない。
コンプレッサーを取り外して2年が経過しており、前回の記事では固着した状態だった。保管状態が悪かったのか、湿気で錆び
付いた様だ。 壊れても良いので、分解にチャレンジして原因を探る。
まずは、分解後 手を入れて復活した画像を載せておく。 この状態を頭に入れておかないと、冷えなくなった原因は解らない。
機構は至極単純で、断面が楕円型の圧縮室内でローターが回転し、圧縮壁に沿って、ベーンが飛び出したり引っ込んだりして
冷媒を吸入/圧縮する。 ただ、ベーンにはスプリングが付いていない。 なので、ベーンは回転による遠心力で飛び出し
圧力内壁に押し付けられながら摺動する機構。 ただ、ローター下には高圧室に繋がる穴が空いている。 この穴がベーンの
付け根の空間に当たっているようにも見える。 そうなると、遠心力+圧力で、ベーンは動いているのかも知れない。
さて、分解直後の状態に戻ろう。
見ての通り、ベーンは全て引っ込んだ状態で、ローター表面は錆びて、圧縮室内壁のオイル表面には錆が浮いていた。
湿気対策をして保管したつもりだが、動かさないと2年の間で、ここまで錆びるのか。
ローターが固着して回らなかったが、何とか回せるようになったのが前記。 回らなかったのは、ベーンが飛び出た状態で固着
していたのだろう。 ローターを無理やり回すことによって、ベーンが徐々に全て引っ込んだ状態になったと推測。
この状態で、ベーンがスムーズに動くか ? 全く動かないのは当然。 ローターとの隙間にピンセット先を割り込ませた後
コジル事で、ベーンを抜き取る。 ベーン側面を見ると薄っすらと黒色で、ベーン刃先は指で触っても凹凸が感じられる程の傷が
入っていた。
一枚一枚ローターからベーンを取り出しては、研磨( #1000 + オイル )していくが、やはり黒いスジが残る。
これが全てが凹部。 それでも、指先でわずかに感じられるられる程には修正した。
圧縮室内壁のオイルに浮いた錆を拭き取る。
ところが、圧縮室内壁の状態は酷い。 ベーン刃先で擦った 横筋が残ってしまっている。
これでは、” ベーン刃先 ー オイル ー 圧縮室内壁面 ” で、オイルシールが効くか ? となると、確証は無い。
しかし、このまま放置は出来ないので、研磨する。
ローター、ベーン、圧縮室 全てを、オイルで たっぷり塗布した後、 ローターを圧縮室に入れた状態で回してみる。
手で回してもベーンは出て来ないし、擦り合わせも出来ない。 そこで、ローター軸にドリルを接続して回してみる。
滑らかに回りながら、ベーンが出たり引っ込んだりする様子は確認できた。 しかし、これで正規の圧縮圧力が生成され
漏れは出ないか ? は、実装し動かさない限り確認は出来ない。
さて、このベーン方式 .... シンプル&小型ではあるが、骨董品の部類だろうね。
ベーンの動きは慣性力頼りで、内壁との密着力低く漏れが出易い。 ベーンの動きが鈍ければ内壁が削られ、圧縮率低下。
ベーンも全てが正しく動いて初めて正規の圧縮率が出るが、1個でも動きが鈍ければ圧縮率は低下する。
全てのベーンの動きが悪ければ、全てのベーンはローター内に引っ込んだ状態を保持し、非圧縮状態となる。
仮に、エアコンを使用していて、スローリークが生じた場合、必ずその分空気を吸い込む事になる。 吸湿である。
夏季だけ動かして、3シーズン不動となれば、オイル潤滑は起こらず、錆が進行する。 やがて、固着。
それに気付かず、夏季にエアコンONすると .........
エンジンの力で無理やりローターは回り、動きの悪いベーン刃先で内壁が傷だらけとなり圧縮率上がらず、エアコンが効かないとか
最悪、ローター内にベーンが全て収まった状態となり、常時 非圧縮状態 ..... 全く冷風が出ない。
と言うシナリオになる。
ベーン式は、定期的に動かしてオイル潤滑をしないと固着を起こしやすい機構であり、動かしてもベーン&圧縮室内壁の摩耗が
生じる。
徐々に圧縮率が低下し、冷却効率が下がる。 寿命は10年は持たないだろうと思う。
殆ど夏季しか使用しないエリーゼでは、10年と言っても使用時間は少ない。 果たして、このコンプレッサーに投資効果は
有るのだろうか ?
真に冷房効率を求めるなら、他の圧縮方式を求めた方が賢明。 そもそも、ベーン方式は軽自動車向けであり、エリーゼ向き
ではない。 ただ新たにコンプレッサー探して装着するとなると、コンプレッサーの固定台は、ワンオフとなるが。
< 追加画像 >
まあ、ともあれ分解&手入れで、正常復帰したのではないかと思われる。
高圧 ー 低圧 間のリーク状況( 真空引き )を確かめる。 専門家に聞くと、コンプレッサー単体では、内部にリークが有る
のは当然らしい。 重要なのは、” ベーンの動きが滑らかに、出たり引っ込んだりしているか ” との事。
1. 低圧側を開放して、高圧側を真空引き
低圧側開放端から、吸入するが、高圧側が負圧になっているので、問題なし。
< 低圧側 開放 > < メーター読み >
2. 高圧側を開放して、低圧側を真空引き
高圧側開放端から、吸入するが、低圧側が負圧になっているので、問題なし。
< 高圧側 開放 > < メーター読み >
< オイル量 >
冷凍コンポーネントを交換する場合、取り外されたアイテムには一定量のオイルが含まれているため、再組み立て時に対応する
量の新しいオイルをシステムに追加する必要がある。
コンデンサー : 30cc
エバポレーター : 30cc
主要なパイプまたはホース : 10cc
レシーバードライヤー; 30cc
認定オイル
冷凍機油は次のリストからのみ使用すること。
セイコー SK-20
ユニパート SK-20
出光 SK-20
既存のコンプレッサーの再取り付け
・ 通常の冷媒回収を行った後、既存の圧縮機を再設置する場合は、回収したオイルと同量のオイルを追加する必要
がある。
・ 事故による損傷などによりシステムが急速に放電した場合、冷凍機油の大部分が失われている。
ドレンプラグを取り外し、クラッチプレートを回転させて、コンプレッサーからオイルを排出する。
再取り付けする前に、170 cc の新しい冷凍機油をコンプレッサーに追加する。
以上が、メンテマニュアルの記述。
しかし、認定オイルなど、現状は無い。 そして、コンプレッサーにはドレンプラグも無い。
また、コンプレッサー用の規定量が記載されていない。 システム全体で、170ccと書いてあるので、
コンプレッサー用 = 170−30*3−10 となり、70ccがコンプレッサーの規定量になるのか。
否違う、
コンプレッサー自体に170ccが必要
なのだ。
例えば、スローリーク( 半年 〜 )でガスが抜けた場合、オイルの残量はどうなるのか ?
エリのコンプレッサーの位置は高い位置に設置されているので、エンジンを止めて停止時は、オイルの大部分が、低い位置に
集まる。 なので、多く見積もっても2%程度しかオイルは抜けていないと考えれば良い。
オイル量は、多くても詰まりの症状を引き起こすが、足りない場合の焼き付き、錆びのリスクの方が大きい。
正確さを求めるなら、オイルチェッカー等で確認する事。
< コンプレッサー + 付属パイプ での漏れ確認 >
以前、ガス注入口の虫バルブの劣化により、スローリークが発生したことがある。
全てのシステムと結合する前に、コンプレッサーに付属パイプを付けた状態で、漏れが無いかを確認する。 配管端は、ゴム栓を
嵌め込んで封止。 真空引き後、ゲージを繋いだ状態では漏れは無い。 後は、ゲージを一旦取り外して、4時間程放置。
その後、ゲージを繋いで漏れを確認するが、こちらも問題なし。 また、念の為、ローターにドリルを接続して回転させてみるが
漏れは無し。 これで、コンプレッサー、配管&シーリング、虫バルブ等で、漏れは無い事を確認した。