野球のメジャーリーグで完全試合という大記録を誤審で逃した投手がいる。それはデトロイト・タイガースのアルマンド・ガララーガ投手である。彼はべネズェラ出身の28歳。メジャーリーガーになって、今年で4年目。この3年間の成績は19勝17敗で、そんなに目立った選手ではなかった。
今年の6月2日のクリーブランド・インディアンズ戦で、ガララーガ投手が先発し、一人も塁に出すことなく、26人をすべてアウトにした。そして27人目の打者であるドナルド選手の打球は1塁ゴロとなり、1塁手のカプレラからベースカバーに入ったガララーガに送球され、誰もが完全試合が成立したと思った。
しかし1塁塁審のジム・ジョイスの両手は大きく開かれ、判定はセーフ。その瞬間、ガララーガ投手は大記録である完全試合を逃した。
セーフと判定したジョイス塁審は、試合後にビデオを観て、自分の判定が誤審だったことが分かった。大抵の審判は、自分が下した判定が誤審だと分かっても、それを認め、謝罪しようとはしない。
しかし、ジョイス審判は自分の誤審を認め、直ちにガララーガ投手のもとに行き、目に涙をためながら謝罪したという。悔しさの中にいたガララーガ投手はジョイス審判の謝罪を受け入れ、ハグをしながら、「Nobody is Perfect.」と言った。
翌日の試合で、ジョイス審判は「主審」と場内アナウンスがされた。その瞬間にスタンドから一斉にブーイングが鳴り響いた。その様な中、ガララーガ投手はジョイス主審のもとに行き、自軍のメンバー表を手渡し、和解の握手を交わした。
ジョイス主審は思わず号泣し、スタンドのブーイングは拍手と声援に変わった。
その翌日、ガララーガ投手の行動に非常に感動したGMの社長から、彼に赤いスポーツカーがプレゼントされた。
恨み、つらみ、赦さない心は、人を惨めにし、不幸へと導く。しかし、赦し、和解の手を差し伸べることは、相手を変え、周りの人々をも変え、和やかな雰囲気をもたらし、やがて平和を生み出す。
イエス・キリストは十字架につけられたとき、ご自分を処刑した人々の為に「父よ、彼等をお赦し下さい。彼らは、何をしているのか自分で分からないのです。」と祈られた。
それはすべての人々に、和解と平和をもたらす為のものであった。
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