付録A.米国の学校カウンセラ

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 学校では発達障害児童に対応する仕組みづくりのために、学校カウンセラとして臨床心理士を採用するなどの動きがある。そこで米国の学校カウンセラのことを調べた。学校カウンセラは、米国が日本より格段に目的意識や活動内容がしっかりしている。

 現状の学校カウンセラの日米比較の概要は次の表のとおりである。

日本

米国

歴史

歴史が浅い(1995年頃から)

歴史がある(1920年頃から)

採用枠

採用したいが司書教育よりも人件費が少ない。

約10万人。児童・生徒457人に一人。人件費がある。

雇用

病院の臨床心理士の方が常勤なので魅力的

学校採用も常勤が多く、雇用安定感がある

目的

問題児やいじめ被害児対策に特化

教育全体と同じ成績・進路の成功

専攻

医学部卒、教育学部卒が混在

教育学部卒

技術

対象者の心把握と聴き取り

カウンセラによる診断と介入(処方)

 

米国の学校カウンセラの歴史(wikipedia):なぜ問題児対策に矮小化されなかったか

 以下、枠内は引用であり、枠外は解説である。

 1900年代早々に経歴開発(career development)として有名な、職業案内運動として学校カウンセリング専門化が始まった。ジェセ・デービスは系統的な学校案内(職業案内)プログラムを提供し、高校校長になると英語(国語)教員に対して、作文、経歴関心、個性開発を用い、行動問題を排除することを奨励した。

学校案内(school guidance、進路案内)は、のちに学校案内カウンセラ(school guidance counselor、学校案内カウンセラ)へ分化する。

英語(国語)科目は人種・階級別の成績格差が大きく、国語(英語)教員自身も多人種である。

 1920年代から1930年代にかけて、進歩主義教育が台頭して、学校カウンセリングと学校案内とが成長した。この運動は個性開発、社会性開発、道徳開発を強調した。「学校は基礎だけを教えるべきだ」という抵抗に遭遇した。経済不況の影響を受けて下火になった。

個性開発(personal development)は、日本で誤解が多い。「他人と違うべきだから、画一教育の成績を無理に向上させる必要はない」というのは誤解である。正しくは「進学・就職の行く先は自然にバラバラに分かれるのだから、他人と違おうが似ていようが、自分のために最大限に成績を向上させる」という意味である。

 1940年代に、心理士やカウンセラが軍人の選別、採用、訓練を行った。試験をして彼らのニーズに合致させる方法を、学校は軍隊からオープンに受け入れた。カウンセリングの専門化の必要性にも影響した。

 1950年代に、政府は州及び地区の教育部局に案内・人材役務部門(Guidance and Personnel Services Section)を確立した。1957年にソ連のスプートニク人工衛星に先行されたことで、科学者と数学者の不足が問題になり、政府は国家防衛教育法を通過させた。予算を増やして職業案内を強化させた。

 1960年代に新たな法令と専門家育成が専門化を進化させた。1960年代はまた、カウンセラ教育プログラムを確立するために、カレッジや大学に巨額の連邦予算が投入された時期でもある。学校カウンセリングは、経歴開発に焦点を当てていたものから、個性及び社会性も加えるように移っていった。これは社会平等運動や市民権運動の興隆とも並行した。

 日本の高度経済成長のころが、米国では学校カウンセラの法規やノウハウが整備され始めた時期である。

 1970年代初期に、ノーム・ガイスバース博士は、学校カウンセラの専門性を、孤立した専門家から、すべてのK-12(幼稚園から高校最終学年まで)の生徒の、包括的開発的学校カウンセリング(comprehensive developmental school counseling)へ移し始めた。彼と同僚の研究は、そのようなカウンセリングと生徒の学業成功(academic success)が相関する証拠を究明した。

 教育の目的である成績向上について、教員の活動と学校カウンセラの活動の双方が役立つことが究明された。両者は別な目的を持つものではなく、どちらか一方あればよいというものでもない。

1980年代及び1990年代初期になされた教育再生活動から、学校カウンセリングは疎外された。標準準拠教育の運動が強まるにつれて、学校カウンセラの総体的な効果の証拠の薄さへの無関心に専門家たちは直面した。対抗するためにカウンセラ等の助言を得て、三つの中核領域(学業、経歴、個性/社会性)を持つASCA(米国学校カウンセラ協会)の国家学校カンセリング標準NSSC、九つの標準、及びK-12生徒のための具体的な成績項目(competency)及び指標を創った。1年後に学校カンセリングの最初の総体的なメタ分析(注:複数の研究の統合・評価)が出版されて、学業、経歴、個性/社会性の領域のアウトカム(注:到達目標)に焦点を当てることに目覚めさせた。

これによって学校カウンセリングとは、学業、経歴、個性/社会性の向上が目的であり、一言で言えば成績の向上であることに合意が形成されて現在に至る。

成績項目やアウトカム(到達目標)は、現代教育学の用語であり、これによって、成績を付けることを意味する。カウンセラが、聴きっぱなし、言いっぱなしでないということだ。

 1990年代終期に、算数教員、学校カウンセラ、及び管理者を経験したパット・マーチンがEducational Trustという団体に雇われて、人種差別を受けた少年・青年、貧困あるいは労働者階級の少年・青年、2か国語の少年・青年、障害者の少年・青年の学力(achievement)格差をなくすことに、学校カウンセリング専門家を集中させた。マーチンはK-12生徒、両親、保護者、教員、施設長、学区長による焦点グループを作って、学校カウンセラ教育の教授たちを取材した。彼女はオレゴン州立大学から学校カウンセラ教育者のリース・ハウス博士を採用して、一緒に2003年に国家学校カウンセリング変革センター(NCTSC)を創設した。

青年とは高校生以下のこと。少年はその中でも特に小学生以下のこと。

恵まれない生徒に焦点を絞りつつも、目的を成績向上からずらさない一貫性がある。

2か国語の人とは、本来外国語の家系だが、学校や就職のために英語を使う人である。

 NCTSCは、学校カウンセラ教育を大学院へ変えることと、地方学区の学校カウンセラの実務を、学力・機会格差について、予防すること、介入(intervene)すること、なくすこと、そしてそれを教えることによって、学校カウンセラを変えることの二つに焦点を絞った。焦点グループでは、「あまりにも多くの学校カウンセラが、すべての少年・青年の学業の成功を擁護(advocate)することをしないで、現状(status quo)の守衛になっている」というハートとヤコブの指摘を発見した。あまりにも多くの学校カウンセラが、不平等な実務をし、不平等な学校方針を支持し、変化させようとしないできた。

介入とは、医学や心理学の用語であり、相談者にまかせるだけではなく、専門家も相手のやることに口を出すことを意味する。傾聴だけでないことを明確にした。

問題をなくすだけではなく、全員の成績や就職を向上させる責任を持つのである。

米国人でもこのように尻を叩かないとだらける。しかし、だれかが率直に指摘して、本来の目的へ戻すところが米国らしい。

 この専門的行動は、多くの生徒の不得手(生徒の人種、貧困・労働者階級の生徒、障害を持つ生徒、2か国語の生徒)をなくした。それは、高校から成功裏に卒業し、必要ならカレッジを含む高校後の学歴選択肢を経由するのに必要な、厳しい勉強、学業、経歴、及びカレッジにアクセスするスキルを得らせることである。

教員が行う当たり前の教育活動と重複するが、つまずきそうな生徒に目を配り、加勢することが学校カウンセラの特徴である。「成功」も米国におけるこの分野の常套句の一つである。

米国の学校教育界の目的は一貫して成績向上である。以前に早稲田大学主催の米国ロサンゼルス広域学区のeラーニングのセミナーを視聴した。発表者のだれもが目的は成績の向上だと述べていた。日本のeラーニング推進者は「どこでも学べる。いつでも学べる」という特徴ばかり述べて、目的を述べなかった。

学校カウンセラの自己紹介の事例 

 私はこの機会を学校カウンセラの役割とカウンセラ達がどのようにして、子供が学校で成功するように助けるかを紹介する機会にさせていただきます。学校カウンセラは、生徒が社会性/個性を発達させることを補助するとともに、学業の成長も補助します。私たちは教育とカウンセリングの両方を訓練されているので、生徒の学業や個人生活に関して、両親、教員、及び生徒の間をしばしばつなぐことができます。(中略)
 私は、台湾、日本、そして今のバンコックのHISスクールで、10年以上、学校カウンセラとして働いてきました。6年間HIS校の生徒相手に働き、彼らの成長・発達を見ることは楽しく、エキサイティングです。教育の仕事の前は、難民や終末患者と共に働き、また心理療法士として個人開業をして公共のために働きました。保健の経験を活かして、幅広い問題に対処する用意があります。(マイケル・ベーレンス、HISスクール、バンコック、タイ)

迷いや言い訳なしに、仕事について、カウンセラ協会標準の正統的な説明をしている。

日本の学校カウンセラの自己紹介は、どんな仕事をするのか分かりにくいものが多い。発達障害児やいじめられっ子を支援するということは書きづらいだろうし、かといって米国のような広義の定義が普及していない。

■高校のカウンセリング・センターの紹介の事例

 このカウンセリング部門は、生徒が神の与えられた贈り物及び能力を実現することを助けます。そして、生徒が神の声を学業的に、社会的に、精神的に、彼らの生活に活かすことを勇気づけます。この部は、生徒及びその要求について扱うカウンセラたち、来ると快適になって、どんな学業や個性に関することでも話す雰囲気を創ることをめざすカウンセラたちによって構成されています。
 私たちは、卒業に必要な適切な科目の選択、カレッジへの入学を支援し、またカレッジ選択と個人的挑戦(注:身体障害者の受験など)も支援することができます。カウンセリング・センターは、カレッジ選択、応募手続き、及び奨学金情報、雇用機会について、学生を案内するのを助ける多くの資料を収容しています。
 私たちはこのウエブサイトが私たちの生徒や両親のニーズに合うことを望んでいます。より詳しい情報について左の箱に列挙された話題をクリックして下さい。もしほかの情報や資料が必要なら、下に挙げた電話番号又はメールアドレスに気軽にコンタクトするか、あなたの都合のよい時に予約をスケジュールして下さい。(ティモシー・クリスチャン高校、イリノイ州、米国)

キリスト教系学校の特色を出しつつも、標準的な説明を骨格にしている。

大学進学の相談を仕事の一部としていることが分かる。

生徒・両親が望んでいる情報を掲載している。自分たちの専門性も述べている。

 このティモシー・クリスチャン高等学校カウセンリング・センターのそれぞれのスタッフは、どんな仕事を担当し、どんな経歴だった人だろうか。

フラン・デービッド 姓の頭文字A〜Lの生徒のカウンセラ。経歴は次のとおりである。ティモシー・クリスチャン学校の5学年の教員、ティモシー・クリスチャン学校6学年の教員を12年間、コンコルディア大学から学校カウンセリングの修士号を取得、ティモシー・クリスチャン高校カウンセラ。

アン・リレイ 姓の頭文字M〜Zの生徒のカウンセラ。経歴は次のとおりである。ホープカレッジ、オハイオ州立大学、コンコルディア大学を卒業。学位はドイツ語学士、ドイツ文学・カリキュラム・教授学修士。1979年からティモシー・クリスチャン高校ドイツ語教員。高校の登録/学業カウンセラ、K-12入学カウンセラ。

ローラ・ジャクソン 学業支援担当。経歴は次のとおりである。2009年にカルヴィンカレッジ卒。特殊教育資格、小学校教育資格。シカゴハイツ市特殊学校の重度障害児の2学年・3学年の教員。そこでは作業療法士、理学療法士、言語聴覚士と協働した経験がある。

■カリフォルニア州マリン郡ノバト統合学区のノバト高校の事例紹介

 ここからしばらくノバト高校の事例を紹介する。筆者は1996年と1997年の二回、富士通主催のeラーニング動向ツアーでこの高校を見学した。日本よりも土地が安いので、校舎も地域の住宅も平屋建てである。建築費は平屋の方が安くて済む。学校の入口の目立つ所に図書館がある。図書館が学問のシンボルという文化を感じた。校長室の隣にカウンセラの個室が二つ並んでいた。図書館と共に一等地である。ノバト地区はサンフランシスコの北であり、ノバト地区の東がワイン産地のナパである。

■ノバト統合学区(Novato Unified School District)とは何か

 米国の学区は通学の単位であり、管理の単位でもある。学区の方式は、州によって自由度がある。基本的な方式の学区は、中等学校(中学、高校)の広い学区があり、その中が更にいくつかの初等学校(小学校)の学区に分割される。

 それに対して統合学区という方式は、初等学校も中等学校も一つの学区にして管理する。ノバト統合学区は、次の学校で構成される学区である。

小学校(11校、幼稚園から5学年まで)

中学校(3校、6学年から8学年まで3年制)

高校(2校、9学年から12学年まで4年制)、その他(2校)。

 米国は小学校から高校まで一緒に管理するので、ノバトのように5:3:4制(幼稚園は別として)などの学年制を自由に決めることができる。日本では6:3:3制が原則であり、小中校は市立で、高校は県立という管理者の境界があるので、せいぜい中高一貫制の6:6制ぐらいしか採用できない。6:6制は年数が長すぎる。米国では4:4:4制が主流になりつつある。

 ノバト統合学区の管理者が提供する役務(サービス)は次のとおりである。

878人の資格ある教員と各職種区分の職員を有する。

言語聴覚士、司書兼メディア専門家、心理士、及び看護師を共有する。

中学校・高校ごとにカウンセラが常駐する。

中学校・高校には優秀生学級を設ける。

小学校には個人保育の役務がある。有料のスクールバスがある。

 図書室の司書は学校ごとに常駐するとは限らないのに、カウンセラは学校ごとに常駐する点が、日本よりも進んでいる。
 次は、ノバト高校の学校カウンセラの採用募集記事の例である。

募集記事掲載日 2011年10月31日
雇用者  ノバト統合学区(日本の市教育委員会に相当)
応募期限 2011年11月7日、任期 2012年〜2013年
勤務種類 フルタイム、勤務場所 ノバト高校
報酬    42191ドル〜74501ドル (1ドル100円なら年421万円〜745万円)

ここまでの資料から、どの学校にも常駐の学校カウンセラがいることが分かる。

職業安定な状態のフルタイム勤務である。

 珍しい事件の記事を紹介しよう。

(マリン郡独立雑誌、2006年) 月曜日の午前、野生の鵞鳥がノバト高校の学校カウンセラのオフィスの窓を壊して飛び込んだ。10時15分に鵞鳥が壊したあと、警官を呼んだ事務長のリリアン・リンコンは「爆弾かと思いました」と述べた。窓を破ったあと、鵞鳥は学校のいくつかの事務室を駆け抜けて、最後に会計課長のゲイル・マッコイの事務室に来た。「彼女は大きくて速かった」とマッコイは述べた。鵞鳥は彼女の机の高さよりも背が高かったと付け加えた。「鵞鳥はひとしきり駆け回ったあと、隅にうずくまりました」

筆者が見学したとおり、学校カウンセラの個室(生徒面談室)があることが分かる。

悲しい記事:酔っぱらい運転でノバト十代が死亡

 先週金曜日のノバト地区での自動車事故で、マリン郡青少年ホールへ行こうとしていたノバト高校の生徒がひかれた。この少年は、同じノバト高校の4人の生徒が乗ったBMWにひかれた。カリフォルニア州アルコール飲料管理省は4人の生徒のアルコール摂取を調査中である。彼らは怪我をして病院で治療を受けている。
 ひかれて亡くなったのはアイザック・ブロット15歳である。4人の生徒の名前は公表されていない。ノバト高校では、生徒たちはブロットが亡くなったことを彼のさまざまなことを語りながら悲しんだ。月曜日は、午前の授業のほとんどが、この事故のことに投じられ、カウンセラは一日中、生徒個人ごとに面接した。
 「ノバト統合学区、ノバト青少年センター、及び非営利団体「ベイエリア地域人材」から来た約15人のカウンセラが、1週間この学校に常駐するだろう」と、ノバト学校群の教育局長のジャン・ラ・トルデビーは語った。青少年のさまざまな話題について仕事をしているマリン公的スピーカのマイケル・プリチャードは、「これらの生徒たちのことを発表するために、木曜日から金曜日までの日程を組んだ。来週も4人のカウンセラが生徒たちのために働く予定である」と述べた。
 ラ・トレデビー教育局長は、学区職員及びノバト地域への手紙で、十代のアルコール教育についての支援を増やすように呼びかけた。(手紙の内容は中略)
 局長は、酔っぱらい運転事故で息子を失った両親が「私は生徒たちが知識を実行へ移すことを切に望みます」と話したことを手紙に引用した。

この事故に対するカウンセリングのテーマは、同級生の死の悲しみ、及び酔っぱらい運転問題の二つである。

日本なら市の教育委員長に相当する地区教育局長が、15人、1週間、と具体的に説明しているところが米国らしい。日本の市の教育委員長は、パートタイムなので陣頭指揮をしたり、説明したりできないことがある。

■ノバト高校の「2008年のカウンセリング役務の動向」(年度報告書)

 この年度の主な発見は次のとおりである。

9人の生徒がカウンセリングを4回以上受け、処方(treatment)計画を得た。

ほとんどの生徒が複数の尺度でポジティブな変化を示した。

カウンセリングを受けた生徒に接する学校職員等は、それらの多くがポジティブに変化したと考えた。主に「少しポジティブに進歩した」と評価した。

ほとんどの生徒はカウンセリングが自分に役立ったと言った。

 カウンセリングを受けた理由は次のとおりである。

ほとんどの生徒がカウンセリングを受けるのに1〜3の理由を申請している。

ほとんどの事例でカウンセラは、申請されたのと同じ問題に処方を提供した。事例の4分の1について、カウンセラは査定をした後、別の問題を追加した。

少ない事例ではあるがカウンセラは、(複数の)問題が異なる理由に依存するので、ある問題を主要な処方の後回しにした。

カウンセリングを受けた理由(複数回答)

理由全体に対するパーセント

Academic(学業、進学、奨学金、就職)

37%

Affect(情緒)

21%

Behavior at school(学校での行動)

16%

Family(家庭)

16%

Alcohol, drug or tobacco use(酒、薬、煙草)

5%

Sexuality(性)

5%

学業の問題は日本では、担任教員が対処するべきだと思われがちである。米国では学業に「つまづいている」という問題は、カウンセラの担当になる。

■ノバト高校のカウンセラ・センターの職員
 イブ・クーパー        姓の頭文字A〜Fの生徒担当
 エイミー・バルディ      姓の頭文字G〜Lの生徒担当。及びAVID生徒(学業不振者)
 デビー・ヘイガン       姓の頭文字M〜Oの生徒担当。及びEL生徒(国語不振者)
 グラシエラ・フェルナンデス 姓の頭文字Q〜Zの生徒担当
 ジニー・オライアン      登録事務官
 ジャネット・フィリペリ     カウンセリング技能員

■ノバト高校の主な相談担当者(2011年)
  Principal(校長) レイ・マヨラル
  Asst. Principal(副校長) マーク・リーボディ、ジュリア・ケンプキー、ロブ・セリ
  Office Manager(事務長) キャシー・ベンソン(学務・会計を含む事務のトップ)
  Registrar(登録事務官) ジニー・オライアン(生徒名簿の管理)
  Counseling Technician(カウンセリング技能員) ジャネット・フィリペリ
    カウンセリングを記録するなどカウンセラの補助や取りまとめをする人
  Business Manager(会計課長) ゲイル・マッコイ(人事・資材も含む庶務課長)
  Athletic Director(体育監督) マイケル・コール(体育コーチを仕切るトップ)
  Attendance Office(出席事務所) マリー・ディカルロ、ケリー・ミッチェル
    子供が欠席することを親が連絡する窓口か?
■ノバト高校の「カウンセラ・センター役務の利用ガイド」

電話又はFAXで申請する。月曜〜金曜の8時から15時まで。

生徒はカウンセリング・オフィスに予約の登録(サインアップ)をする。

予約するほどではない質問は、生徒の休み時間、昼食時間、放課後に利用できる。(注:予約するカウンセリングは授業中でも休んだことにはならない扱いらしい)

10学年(日本の高校1年)から12学年(日本の高校3年)までの生徒は、姓のアルファベット順にカウンセラの分担が決まっている。9学年(日本の中学3年相当)の生徒はランダムにカウンセラが割り振られる。(注:高学年は進路選択で大変だからだろう)

■「両親及び生徒のための資料ガイド」(米国カウンセリング協会ACAの冊子)

学校カウンセラとは何か?
 専門的な学校カウンセラは、以前は(職業)案内カウンセラと呼ばれたこともありますが、学校カウンセリング又は同等のことについて修士以上の学位を持ち、勤務する場所の連邦又は州の認定又は免許を付与された専門的教育者です。専門的な学校カウンセラは、生徒の学業、個性、社会性、及び経歴開発のすべてに対応する職能分野・技巧を持っています。
 専門的な学校カウンセラは、生徒に提言をし、面倒を見るとともに、その学校の教育チームの重要な一員です。彼ら彼女らは、すべての生徒が学業、職業、そして個性について成功するように、教員、事務職員、及び家族に対して、コンサルテーションしたり協働したりします。
 今日、アメリカの公立学校では、10万人を超える高度に訓練された専門的な学校カウンセラが働いています。学校カウンセラは、すべての若い人々の成功を助け、彼ら彼女らの将来に影響するために、毎日、前線にいます。

米国は学芸(リベラルアーツ)大学+専門大学院という組合せがよくあり、修士号は特別な存在ではない。

学校カウンセラの職能分野(qualification)
 学校カウンセラは、学校カウンセリング又は同等のことについて修士以上の学位を持ち、すべての生徒の発達ニーズに対応できる独特の職能分野です。学校カウンセラは、ほとんどの公立学校制度において、次の話題の上級科目を修了したことが必要とされています。
 「人間の成長・開発」「カウンセリング理論」「個人別カウンセリング」「グループカウンセリング」「社会・文化の基礎」「試験・査定」「調査及びプログラム評価」「専門的オリエンテーション」「経歴開発」「指導監督下の実習」「指導監督下の配属研修(インターン)」

学校カウンセラは何をするか?

 専門的な学校カウンセラは、各生徒個人のニーズや関心をベースにして、学校の中で幅広い役務(サービス)を提供します。生徒のニーズや関心には次のものを含みますが、これだけに限りません。

生徒及び家族の精神面、情緒面、社会面、発達面、行動面の役務。

生徒のための組織的スキル、勉強スキル、及び受験スキルを含む、学業の案内及び支援役務。(注:組織的スキルとは学校制度に対応するスキルか?)

(障害児のための)個人別教育計画(IEP)の統合メンバの一員としての役務を含む特殊教育の役務。

生徒のためのゴール設定及び医師決定援助を含む、経歴の気づき、経歴の開拓、及び経歴の計画の役務。

学校危機の予防及び対処の役務。

地域の部局(注:教育局等)を通じて要請されるより徹底的な役務の協力・調整。

囲み記事:

  「カウンセラの責務は、年々猛烈に増加してきました。カウンセラは、子供、教員、他の学校職員、及び両親を助ける学校地域活動の全体の統合的一部になっています。カウンセラは、挑戦(注:心身障害)、荒れた教室、同級生の圧力、友人問題、憂鬱、などなど、将来の成功の障害物になり得るすべてに直面する生徒を助けます。」アンジェラ(ニューヨークの学校カウンセラ)(注:障害という言葉が嫌で、挑戦と表現する人がいる)

◆学校カウンセラは生徒の学力(achievement)にどのように貢献するか?

 「どの子も置き去りにしない法(No Child Left Behind Act; NCLB)」は、すべての生徒の学業の学力を、教育再生のトップ優先度にしました。この新たな学力強調の運動は、学校カウンセラを、学校の使命の周辺から中心へ動かすことと同時に起きています。カウンセラは、個々の生徒が学校の中でよりよいことをすること、及び学校卒業後の生活についてよりよい選択をすることを助けることができます。彼ら彼女らはまた、学校が古くなった体制から学校コミュニティ全体を真に再生するように移行することも助けます。
 数多くの調査研究が、学校カウンセラが包括的な学校カウンセリングプログラムを実施することによって、生徒の学力を最大化する肝要な役割を果たすことができることを証明しています。

フロリダの生徒の5学年から9学年までの、2003年のある調査研究は、包括的案内プログラムは読解と算数について、州の標準よりも明らかに高い成績を生徒が取ったことを発見しました。

ワシントン州の小学校生徒に関する2003年の別の調査研究は、強くて包括的なカウンセリングプログラムを持つ学校で数年間を過ごした生徒は、標準学力試験でよりよい成績であるということを発見しました。

学校カウンセリングは、集中し、勉強し、そして結果として学習できたという生徒の能力を増します。学校カウンセリングを持つ学校に入学した生徒は、より高い等級を取得します。

カウンセリング役務は、教室が荒れるのを減らします。生徒が高い学力基準を達成するのを助けるように設計された質の高い授業を、教員が提供することを可能することによって、教室における教員を支援します。

カウンセリング役務を提供する学校の生徒は、教室が他の生徒によって邪魔されそうになることを減らし、同級生が学校の中でよりよく行動することを示しています。

学校カウンセラは、人を危険にさらす若者の「早期の警告サイン」を認知するように訓練されています。学校カウンセラは、校長、教員、及び他の職員とともに、学校の安全を開発・実施し、学校の暴力を予防するように働きます。カウンセリングプログラムを持つ生徒は、より前向きであり、学校での親密な関係及び安全のより大きな感じを持っていると報告されています。

囲み記事:

 「高品質のカウンセリングは生徒が暴力、薬物、飲酒癖へ転向することを防ぐとともに、等級を改善し、教室の荒廃を減らします。」前米国教育省長官ロッド・ペイジ

 

■まとめ

 以上が米国の学校カウンセリングの概要である。機会があれば米国の方式を詳しく調べて紹介したい。

日本の現状の施策は「学校がカウンセラを必要としている」ことを根拠にして推進されている。しかし「人件費や求人ニーズ」は助成金頼りで皆無に等しいのが実情である。求人が少ないのに専門家を育成するのは、大学に授業料収入増加や教員ポスト増加の魅力があるからだ。法科大学院の就職難・入学者減少の跡をたどる恐れがある。

日本の病院や介護施設の利用者は、老人人口が減少に転じるまでの間は増えるので、カウンセラに対する病院の人事予算や求人は徐々に増えていく。病院採用は常勤で終身雇用が見込まれるので、高偏差値医学部卒の臨床心理士が採用される。

学校の求人は現状では雇用条件の悪いので、病院就職に失敗した低偏差値医学部卒の臨床心理士や教育学系のカウンセラ資格者が応募してきやすい。教育学系のカウンセラ資格者は、問題別の診断や処方の演習をほとんど習っていないのも問題だ。雇用不安定な学校カウンセラは、自分自身も悩みを抱えつつ、診断や処方に迷うことになる。

とはいえ、学校カウンセラは教育学系である米国の方式になっていくべきだと考える。そのように提唱している団体はある。医学部系の臨床心理士と一緒の施策にしたのは問題をややこしくしている。

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