10.日本の竜巻の例

戻る ホーム 上へ

 
 過去に日本で発生した主な竜巻の事例を紹介し、農地と竜巻発生とが関係するかどうかを考えよう。

図の矢印は、竜巻の被災地や通過地であることが記録されている場所。

丸枠は、筆者が推定した竜巻の生育ステージの場所。

(c)2013 copyrjght GoogleEarth

1180年5月25日 平安京
 現在の松蔭付近から東本願寺付近まで移動した。「家はことごとく壊れ、家財はことごとく空に舞い上がった」(方丈記)
 竜巻の推定生育地の松蔭付近は、当時は平安京の外側であった。

 

(c)2013 copyrjght GoogleEarth

1926年9月4日 埼玉県指扇村
 指扇村(現在のさいたま市西区)から宮原村(現在のさいたま市北区)まで移動し、死者8名、負傷者70名以上、倒壊家屋は144棟にのぼった。
 竜巻の推定生育地は、現在も荒川の河川敷公園や農地があるが、当時はもっと広大な農地だったと思われる。

 

(c)2013 copyrjght GoogleEarth

1958年2月22日 能代市向ケ丘市営住宅付近
 雹をまじえた竜巻が起こり、住宅3 棟,非住家1 棟が損壊し、子供2 名が負傷。

 竜巻の推定生育地は海と思われる。写真右上の農地が誘因になった可能性がある。

 

 

(c)2013 copyrjght GoogleEarth

1962年7月2日 茨城県潮来市牛堀
 死者2名、負傷者65名。木造校舎が倒壊し、家屋の全半壊は78棟にのぼった。
 竜巻の推定生育地は、霞ヶ浦の東南岸の開拓農地である。

 

(c)2013 copyrjght GoogleEarth

1969年8月23日 茨城県板東市猿島
 現在の板東市で、死者2名、負傷者107名、家屋の全半壊は422棟。
 竜巻の推定生育地は、飯沼川流域の幅700メートル以上の開拓農地である。

 

(c)2013 copyrjght GoogleEarth

1990年2月19日 鹿児島県枕崎市北塩屋南町
 塩屋南町から寿町まで移動して、死者1名、負傷者18名、家屋の全半壊117棟、自動車の転倒25台。
 竜巻の生育地は、農地と海の両方の可能性がある。

 

(c)2013 copyrjght GoogleEarth

1990年12月11日 千葉県茂原市上林
 県内6か所で竜巻が発生した。19時に茂原市を襲った竜巻は、F3、風速は秒速78m以上。死者1名、負傷者74名、1000台以上の自動車が転倒又は損傷した。
 竜巻の生育地は南側の農地と思われる。

 

(c)2013 copyrjght GoogleEarth

1999年10月29日 能代市荷八田
 21時頃、荷八田付近で竜巻(F0〜F1)が発生し、住家の屋根部(41u)が吹き飛ばされた。発生及び移動経路が水田上であったため被害件数は多くはなかったが、稲藁が散乱した。被災地の経路の記録は取得できなかった。

 この付近は広い農地であり、海も近いので、どちらかが竜巻の生育地と推定される。

 

(c)2013 copyrjght GoogleEarth

1999年9月24日 愛知県豊橋市野依町
 11時頃、豊橋野依町から愛知県一宮町へ移動した。負傷者は415名、家屋の全半壊は349棟、ビニールハウス等の損壊は308件。農畜産の被害額は7億8千万円。東三河全体では家屋の全半壊は3000棟。
 竜巻の生育地は梅田川流域の農地と推定される。

 

(c)2013 copyrjght GoogleEarth

2005年12月25日 羽越線最上川橋梁付近
 19時頃、時速100kmで走行していた特急列車6両全部が脱線した。酒田測候所の風速は秒速20m程度であった。当日は最上川河口南から現場まで、ビニールハウスなどの倒壊があり、竜巻による秒速40m程度の突風が脱線の原因と見られる。

 竜巻の生育地は海又は農地と推定される。

 

(c)2013 copyrjght GoogleEarth

2006年9月17日 宮崎県延岡市
死者3名、負傷者100名以上。日豊本線では特急列車が脱線した。
 竜巻は台風に付随して海で誕生したが、西側の農地が誘引した可能性がある。

 

(c)2013 copyrjght GoogleEarth

2006年11月7日 北海道佐呂間町
 佐呂間町若佐地区でF2以上の竜巻が発生し、死者9名、負傷者26名、家屋の全半壊20棟、トラックや重機が転倒した。
 幅1キロメートル程度の農地が推定生育地である。山間部であるが海に近く、周囲の山の標高は低い、

 

(c)2013 copyrjght GoogleEarth

2007年12月2日 山形県酒田市山居町
 1時頃、突風が発生し、倉庫のトタン屋根の飛散などの被害が発生しました。竜巻を示唆する特徴もあるが、深夜であったこともあり、目撃情報なども得られず、竜巻と特定するには至りませんでした。
 竜巻の生育地は海であるが、東側の農地が誘引した可能性がある。

 写真の左下部分に、前に紹介したビニールハウスの防風林が少し見える。

 

(c)2013 copyrjght GoogleEarth

2008年4月9日 鹿児島県枕崎市火ノ神北町
 牛舎の被害1棟、ビニールハウスの損壊は枕崎市17棟、指宿市11棟。
 竜巻の生育地は、農地と海の両方の可能性がある。

 

(c)2013 copyrjght GoogleEarth

2009年7月19日 岡山県美作市下山
 19時頃、岡山県美作市では突風が発生し、2人が負傷、家屋70棟以上が損壊する大きな被害が生じた。強さはF2と推定された。
 山を越えて移動した珍しい事例である。中国地方は標高の高い山が少なく、農地との高低差が少ない。

 

(c)2013 copyrjght GoogleEarth

2009年7月27日 群馬県館林市大谷町
 負傷者21名、家屋の全半壊58棟、車の被害は18台である。
 生育地は渡良瀬川に注ぐ多々良沼周辺の農地と推定される。

 

(c)2013 copyrjght GoogleEarth

2011年8月21日 福岡市
 同市南区で電柱4本や木が倒れたほか、同市博多区西月隈1丁目のタクシー営業所で男性従業員の頭や腕に風で飛ばされた板が当たり、軽傷を負った。

 福岡市南区は、終戦時まで農地だったところが住宅地になった。200m陸上トラックを設けられる広い校庭が多く、それが竜巻の生育地だろうと推定される。また、写真右上の福岡空港が誘引した可能性もある。

 

(c)2013 copyrjght GoogleEarth

2011年8月21日 福岡県久留米市田主丸町
 直前の福岡市の竜巻と同じ日に、福岡県久留米市田主丸町でも同じ時間帯に突風が発生し、久留米市によると、木造の倉庫が倒壊するなどの被害が出ている。

 竜巻の生育地は、筑後川周辺の広大な農地と推定される。

 

(c)2013 copyrjght 国土地理院

2012年7月5日 青森県弘前市鬼沢・楢木
 午後5時すぎに弘前市鬼沢から楢木で竜巻が発生。東西1.55キロ、南北200メートルにわたって被害が出た。住宅2棟が半壊、28棟が一部破損し、女性1人が顔に軽傷を負った。

 岩木山の麓の農地が、竜巻の生育地と推定される。

 

(c)2013 copyrjght GoogleEarth

2012年7月12日 高知県芸西村

 12日午前5時ごろ、高知県芸西村の南部で竜巻が発生し、ビニールハウス約15棟が吹き飛ばされたほか、倉庫の屋根瓦が数枚めくれるなどの被害が出た。被害額は約4800万円と推計される。

 竜巻の生育地は、海又は農地の可能性がある。ビニールハウスの損傷は軽微であり、なおかつ防風林の手薄な部分である。ビニールハウスが多く、間隔が30〜70メートル程度の防風林が整備されている。この事例はむしろ、防風林の成果により被害額が4800万円で済んだといえる。竜巻防災のモデル自治体といえるだろう。

 

(c)2013 copyrjght GoogleEarth

2012年8月14日 高知県安芸市赤野駅西側
 安芸市赤野は、直前の事例の芸西村の東の隣接地である。午前3時半過ぎに竜巻が発生、海沿いの住吉地区から内陸側の西寄地区まで幅約100メートル、南北に約600メートルにわたって電柱数本をなぎ倒したほか、民家、ビニールハウス、物置などが壊れた。被害額は約3700万円と推計される。
 竜巻の生育地は、農地と海と砂浜の三つの可能性がある。西隣の芸西村と比べると、防風林はそれほど整備されていない。

 

(c)2013 copyrjght GoogleEarth

2012年9月1日 千葉県船橋市豊富町・金堀町
 金堀町地域で1日深夜に竜巻とみられる突風被害が発生したと発表した。南北約100メートル、東西約800メートルの帯状の範囲内で、ビニールハウスや倉庫など13カ所21棟が全壊又は一部破損した。

 竜巻の推定生育地は神崎川流域の広い農地である。印旛沼へ注ぐ川の一つで、農地開拓や河川改修が進められてきた。

 

(c)2013 copyrjght GoogleEarth

2012年10月23日 静岡県袋井市
 袋井市南部で23日発生した突風被害について静岡地方気象台は24日、竜巻と推定したと発表した。
 竜巻の生育地は、広い農地と思われる。前に述べた2007年の袋井市の竜巻が発生した場所より南側の場所である。

 以上の事例の生育地は、筆者の推定したものであり、科学的な根拠はない。一方、気象専門家の調査は気象に限定されており、土地への注目がなさ過ぎる。シミュレーション実験を含む今後の研究に期待したい。農地林の竜巻防災効果については、山形県酒田市や高知県芸西村の施策など、注目すべき事例がいくつかある。

 

[ 戻る ] [ ホーム ] [ 上へ ]