「車椅子、街を行く」


畑毛温泉旅館の日中温泉を利用した。電動車いすで現地まで行ってヘルパーとそこで落ち会った。当然、電動車椅子で風呂場まで行けるものと思っていたら、玄関先で旅館の方から、「車椅子のタイヤ、拭いてくれ。こちらで面倒は見られない。車が上がるには拭くのが当たり前だろう。その人が付いてくれるんかい」と言われて、久しぶりに壁にぶつかった感があった。そりゃそうだ。清潔を旨とする旅館に、道路を走ってきた車が土足で上がろうとしているのだ。注意して当然である。しかし、接客としては、二昔前の域を脱していない。仕方なく歩いて風呂場まで行った。良い足の訓練になった。脱衣場から湯船まではあまり距離がなく、いつも温泉などで足に怪我をするタイルの床も比較的安全だった。他の客はいなく、二人でのんびりジェットのような水流の風呂を楽しんだ。帰りがけにこちらが、「ありがとうございます」というと、「あいよ」との答え。主客転倒だが、それは家族的な接待なのかもしれない。より理解しあうには接触と時間がかかると思った。これからも使ってみようかと思ってかえってきた。('07/07/12)

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