預貯金の出し入れが自署でなければならなくなった
('04/02/29)

二,三年前までは,郵便局や銀行で,預貯金の出し入れの書類は,そこの職員や店員が,にこやかに,親切に代書してくれた。しかし,最近これがむずかしくなっている。こんなに障害者にとって生活しやすくなったご時世にとんでもない落とし穴が見つかった。職員や店員が,代書することができなくなったというのだ。金融機関がかってに利用者の口座を動かされては困ることは分かるし,セキュリティーの点でも理解できる。
  けれども,外出の時,自署のむずかしい障害者には致命的なことになる。例えば,満期になった預貯金を出そうと通帳と印鑑を持って金融機関に行っても,お金が出せないのだ。そんな馬鹿な,と言うかもしれないが,これが大変なことなのだ。そこで,用紙をもらって,その小さい蘭に住所、氏名を,口で,でかい文字で書いて,職員や店員に,とても読めない、使えない書類だ,ということを思い知らせて、しぶとくねばって書かせるか,あるいは,親族を連れて行かなければならない。
  お金くらい自己管理したいわたしは,ねばる方をお勧めする。親族を連れて行くくらいなら、預けるものか。たんすに現金でしまっておくわい。最近は利子も付かんのだから。
 しかし,実際,施設に入っている障害者も,施設の職員も大変らしい。施設は,金融機関と契約しておいて、やっと施設職員が利用者の預貯金を下ろせるらしい。だから、面倒だから施設利用者は,お金を現金で持っていることが多いとかー。こわい話である。
  民法では,記名・捺印で効力は発生するはずなのに―。つまり,自分の名前をスタンプにしておいて,印鑑持っていけば済むはずなのにー,自署なのである。
  最近,発足した「成年後見人」制度も使えるらしいが、わたしは使いたくない。精神活動がしっかりしている間は自分のことは自分で決定して、それを行ないたいものである。

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