「お風呂―死を招く危険な場所」
ひとりお風呂場で、疲れていて身体のバランスが上手く取れなかったり、ほんのふとしたことから、洗い場から上半身を湯の張った湯船に、頭から落としてしまうことが起こりえる。こうなると湯の底は洗い場より低い位置にあるし、頭が重いから、洗い場に上半身を揚げようとしてもひとりでは揚がらない。鼻と口は湯の中に浸かっていて息ができない。肺の中の空気だけが命の綱と思うと焦りがこみ上げる。声を挙げて助けを呼ぼうとしても気泡があがるだけで声にならない。このままだと死んじゃう、という思いが頭をよぎる。脳も酸素がたらないのかボーっとしてくる。家族は茶の間でテレビを観て笑っている。こんなときはどうすればいいのか。それは、上がろうとしない、というのが正解のようである。お風呂に自分から入ってしまう。そして栓を抜く。身体を縮めて、体勢を整えて伸ばす。そうすれば、首が湯の上に上がり、同時に湯はどんどん減っていく。まず落ち着くこと。できないことはあきらめて、他の有効な手段を講じること。そう、もし、お風呂に入っている人が、急に静かになったら、要注意。見守りは本当に大切、大切。 |