「緻密な計算と臨機応変の対応」

 人類の作ったもので最も地球から離れつつあるものは、30年以上航行を続けている惑星探査機ボイジャー2号機である。この計画からわたしにも夢とロマンを与えてくれた。この探査機から木星、土星、天王星、海王星などの美しい映像が届いた。またこの航行はわたしに三つの良い方法を教えてくれた。第一に惑星の引力を使って軌道を変えるということ、並びに惑星の公転を使って加速することである。第二に映像を写すときにカメラを固定しておくのではなく、通過する目標物に向けながら航行したことである。第三に当時記憶装置は小さかったので、探査機への全ての行程の命令を入れて送り出すのではなく、その都度、書き換えたということである。巨大な惑星の引力をも使って太陽系の外まで行った偉業は、緻密な計算と臨機応変の対応によって成功したといえる。今、この探査機は太陽系を脱出しつつ外から眺めているのである。
('08/12/14)

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