「リラックスできる友


 ある午後施設の陽の当たるディルーム、テレビがついているその横でテーブルの上にCDプレーヤーの音を小さめにして熱心に聴いている一人の入所者。音楽にのってくると首を左右に振ってリズムに合わせている。よく聞くと、「ザ・ベンチャーズ」。わたしも好きなので、横に近寄って聴きに行く。わたしも首ぐらいしか触れないので一緒に振ってみる。ふだん厳しい顔をしている彼だが、音楽が終わると目を細め顔いっぱいに微笑んで、わたしの手を握り自分の頬まで持っていき、なでて喜びを表してくれた。わたしは聴いている間、休日のリゾート地で過ごしているようなものすごくリラックスした状態になっていた。何だろう。一体感だろうか。わたしも彼も緊張した状態が続いていて、その場で解放されていたのだろうか。自分と共通点のある友を持つことは本当に素晴らしいことに思う。


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