田植えのころ」


 田植えのこの時期はいいものです。日が長くて、活動的で、にぎやかです。水田のわきの道を通ると、田んぼを水で満たすために勢いよく水路に水が流れます。開け放たれた関をゴボゴボと音を立てて、その元気の良いこと、元気の良いこと、滝のごとく。これから早苗たちに力を送り込んでやるぞと、勇んでいるようです。空には上昇気流に乗ったトンビが輪を描いて旋回しています。気の早いカエルが梅雨前線を呼んで雨を降らそうと、合唱コンクールをしています。田植え歌などあれば風流ですが、もう今は機械で植えてしまいます。それでも、一家総出の大仕事。秋になって稲穂からお米が取れるまで八十八の仕事があるとか。だから、コメという字は八十八と書くんだそうです。雨模様という言葉がお似合いのパラソルが咲くのもあと少しですね。

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