「受け継ぐもの……」 


 師走になると、「忠臣蔵」をよく見ていたものです。例の、元禄15年12月14日、雪の中、吉良邸に押し入った赤穂の浪人たちの時代劇。主役が変わっても、同じストーリーで毎年最後まで見るのが家庭の年中行事になっていました。今ではまわりの人から、わたしがズボンの裾が長くて引きずって歩かせてもらっていると、この物語の「松の廊下」での衣装のことと間違えて、「『この桜吹雪が目に入らねえか!』でしょ?」と言われて、「おいおい、それは、『遠山の金さん』のセリフでしょ!」と言わなけれならないほど、時代劇が縁遠くなり、そのことを知る世代も代わりつつあるようです。たしかに民放 地デジでは、「水戸黄門」の再放送くらいしか残っていません。時代劇には、撮影地も時代に合うところが少なくなっているようです。製作費も多くかかるといいます。技術を継承していく点でも心配です。技術や文化を受け継いでいくのは、結局、人なのですね。



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