「この親心」


 この夏にまた、家の前の長い坂に加え、玄関の前までの急坂があるので、安全にするため直すことになりました。最近、電動車いすから振り落され、顔に怪我をしたからです。昭和44年に引越してきて、まだ、「ハクション大魔王」が始まったばかりの頃、社宅から一件家を建てたということで父は鼻高々、小さな家なのに田舎から見に来られたものでした。
そのころ歩行器を使っていましたが、今思うと、「なんで歩行器で歩いていた身体障害の息子にいるのにこんなところ買ったの?」。最近、母に訊いたら、「お前の障害、治ると思てたもん」と言います。
まあ、すごい楽観主義、子を想う期待感、治ってほしいという希望。…と、自分の子を普通の子として見ていた公平感、他の弟妹と差別しない気持ち、そんな強靭な不思議な親心があったのでしょう。そのお蔭で今の自分があるのかもしれないと思うのです。


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